精神障害者の雇用義務化を提言した厚労省研究会報告
2012年6月21日のブログ記事「障害者雇用率 2.0%に引き上げ決定!来年4月1日から適用」でも取り上げたとおり、来春より法定雇用率が2.0%に引き上げられることとなり、今後ますます重要性が増す障害者雇用の分野ですが、先日、今後の障害者雇用の在り方に関する以下の3つの研究会の報告書が取りまとめられました。
□障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会報告書
□労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会報告書
□地域の就労支援の在り方に関する研究会報告書
今回はこれらの中からもっとも実務への影響が大きいとされる精神障害者の雇用義務化に関する内容について取り上げることとしましょう。
精神障害者の雇用義務化については、平成9年に知的障害者の雇用が義務化されて以降、継続的に議論がされてきました。具体的には平成14年1月の労働政策審議会意見書において、「精神障害者についても、今後雇用義務制度の対象とする方向で取り組むことが適当と考えられる」とされ、平成16年12月の同意見書では、「将来的にはこれを雇用義務制度の対象とすることが考えられる」とされましたが、当時は「現段階では、このような企業の社会的責任を果たすための前提として、精神障害者の雇用に対する企業の理解と雇用管理ノウハウの普及を図り、精神障害者の雇用環境をさらに改善していく必要がある」とされ、雇用の促進を図るために平成18年度から実雇用率の算定特例が設けられるに止まりました。しかし、平成22年6月に閣議決定された「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」において、「障害者雇用率制度について、雇用の促進と平等な取扱いという視点から、・・・精神障害者の雇用義務化を図ることを含め、積極的差別是正措置としてより実効性のある具体的方策を検討し、平成24年度内を目途にその結論を得る」とされ、今回の報告書がまとめられました。
この報告書において、精神障害者の雇用義務化については、「精神障害者に対する企業の理解の進展や雇用促進のための助成金や就労支援機関における支援体制の強化等の支援策の充実など、精神障害者の雇用環境は改善され、義務化に向けた条件整備は着実に進展してきたと考えられることから、精神障害者を雇用義務の対象とすることが適当である」と明記されています。具体的な内容については今後、労働政策審議会 障害者雇用分科会において議論され、法制化が進められていくこととなります。
近年、精神障害者の求職者数が激増していることから雇用義務化の動きは当然と言えるものではありますが、法定雇用率の更なる引き上げにも繋がる内容だけに、企業としては障害者受入れのための更なる環境整備が求められることとなるでしょう。
関連blog記事
2012年6月21日「障害者雇用率 2.0%に引き上げ決定!来年4月1日から適用」
https://roumu.com
/archives/51937356.html
参考リンク
厚生労働省「今後の障害者雇用の在り方に関する3つの研究会の報告書が取りまとめられました」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002gyh3.html
(大津章敬)
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