中国人事管理の先を読む!第45回「職務給の要件「外的公正の原則」」

職務給の要件「外的公正の原則」 前回、前々回と、職務給制度の3要件である「内的公正の原則」「個人間公正の原則」についてお話してまいりました。「内的公正の原則」は「社員が担当する職務の価値に応じて社員の賃金を決定すべきという原則」であり、「個人間公正の原則」とは「能力の度合いに対して人事考課を行い、個人間、つまり社員間で賃金に差をつけていくのが本来公正である」という職務給制度が有する必須の要件です。今回は、3つ目の原則である「外的公正の原則」についてお話をしたいと思います。

 賞与や昇給の時期になりますと、多くの企業から今年の相場について、ご質問を頂戴します。また、人事制度を構築する準備段階においても、やはり大半の企業から自社の賃金水準についてご質問をいただきます。皆さん例外なく、ご自分の会社の賃金水準を気にされているようです。では、自社の賃金水準について関心がある理由は一体何でしょう? それは、他社の給与が自社と比較して高くなると社員の流出が増え、また自社の賃金が他社の水準より低い場合にはなかなか良い人材が採用できないという状況が発生してしまうからです。

 このように、自社の賃金水準を同業界や同地域の企業と比較して、どの程度の位置に保っておくかということを考慮し、自社の賃金水準を決定することが賃金決定上公正である、という考え方を「外的公正の原則」と呼びます。

 以前もお話しましたが、日本の多くの企業が採用している人事制度は「職能資格制度」であり、これは社員を保有能力で区分して共通の等級で管理を行うというものです。この場合、保有能力が同じであれば担当する職務が異なったとしても賃金に大きな差はつきません。そのため、ある職務に対して同業社がどの程度の賃金を支払っているのかということについては、あまり気にされていません。また春闘という社会制度があるため、企業間で横並びの賃金水準に集約されてしまうことも、外部水準への意識が薄れる結果に大きく影響しています。

 職務給制度が一般的な国、言い換えれば日本以外の大半の国が該当するのですが、これらの国では人材の流動が活発な状況があります。このような状況下では、否応なしに他社との賃金比較をしながら自社の賃金水準を決めていくことになります。そのために賃金サーベイ専門会社が利用されますが、そういう意味で見ると、日本ではこのようなサーベイ会社は育っていません。つまり、日本型の賃金制度では「外的公正の原則」は必需性が低いという現状があるのです。


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2012年10月6日「中国人事管理の先を読む!第44回「職務給の要件「個人間公正の原則」」
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2012年9月8日「中国人事管理の先を読む!第43回「職務給の要件「内的公正の原則」」
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(大津章敬)

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