36協定特別条項や安全衛生管理体制についての指摘が多い労基署の過重労働調査

労基署の過重労働調査 2014年6月30日のブログ記事「精神障害の労災補償状況 請求件数は過去最高も認定率は若干低下」では、昨年度の精神障害の労災請求件数が過去最高を更新したというニュースを取り上げました。このように過重労働などによる労働者の健康障害が大きな問題となっています。これに関し、東京労働局は先日、管下の18労働基準監督署で平成25年度に実施された過労死・過労自殺など過重労働による健康障害に関する労災申請が行われた事業場に対する監督指導の結果を集計し、公表しました。今回発表された監督指導結果のポイントは、以下のとおりとなってます。
監督指導実施事業所  107事業所
違反状況  94事業場(全体の88%)に何らかの法令違反
過重労働の状況  58事業場で過重労働の実態あり

 このように、監督指導実施事業所107事業所のうち、全体の88%に当たる94事業場において、労働基準法または労働安全衛生法に関する法令違反が見られました。その内容は以下のようになっています。
労働基準法関係の違反状況
 以下のように法32条(労働時間)違反や、法37条(時間外割増賃金等の未払)違反が上位となっており、不適切な労働時間管理が多く認められています。
労働時間(法32条1項2項) 79事業所(違反率74%)
割増賃金(法37条) 49事業所(違反率46%)
賃金台帳(法108条) 21事業所(違反率20%)

 もっとも違反が多い労働時間(法32条1項2項)の内訳を見てみると、特別条項付36協定に関する違反が35件、36協定の届出がなかったケースが28件となっており、特別延長時間の超過や延長の際の手続き違反(労働者代表との協議や通知)などの特別条項に関する細かい指摘が多くなっていることが分かります。

労働安全衛生法関係の違反状況
 衛生推進者の選任に関する違反が11事業場(違反率44%)と多くなっており、次いで衛生委員会の設置に関する違反が13事業場(違反率17%)、定期健康診断に関する違反が5事業場(違反率5%)と続いています。なかなか細かい指摘が多くなっていますが、こうした点について行政が重点を置いているということは理解しておきたいところです。

 過労死等の発生は、その従業員や家族にとって悲劇であるとともに、企業にとっても貴重な人材を失うことを意味し、他の従業員に与える衝撃も大きいものがあります。また、状況によっては刑事上、民事上の責任を負うだけでなく、取引先や求職者に対する企業イメージの低下など、企業活動そのものに大きな影響を及ぼす可能性もあります。いま一度、従業員の労働時間等について確認を行うと共に、労働環境の把握と改善を行い、過労死等が発生しない職場づくりに努めていくことが求められます。


関連blog記事
2014年6月30日「精神障害の労災補償状況 請求件数は過去最高も認定率は若干低下」
https://roumu.com
/archives/52040816.html

参考リンク
東京労働局「【平成25年度】過労死・過労自殺等過重労働による健康障害発生事業場に対する監督指導結果」
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/news_topics/houdou/2014/_120676.html

(小堀賢司

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