労政審報告書骨子案に見るホワイトカラーエグゼンプションの骨子

具体的に見えてきたホワイトカラーエグゼンプションの骨子 昨日のブログ記事「注目の労働時間法制改革の報告書骨子案が公開されました」では、先週金曜日に開催された第122回労働政策審議会労働条件分科会において公表された「今後の労働時間法制等の在り方について(報告書骨子案)」の概要について取り上げました。本日からはその具体的な内容について、順次取り上げていきます。まず日は最大の話題となっているホワイトカラーエグゼンプションの骨子について取り上げます。

 前回の安倍政権では「残業代ゼロ法案」との批判を浴び、成立に至らなかったホワイトカラーエグゼンプションですが、今回の報告書骨子案では「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル労働制)」という名称が付けられています。より柔軟な働き方を実現するため、一定の要件を満たした高度専門人材について、管理監督者同様の適用除外を認めるという制度になりますが、その内容を簡単にまとめると以下のとおりとなります。
対象業務
・金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)、研究開発業務等、高度の専門的知識等を要し、業務に従事した時間と成果との関連性が強くない業務を省令にて定める。
対象労働者
・使用者との間の書面による合意に基づき職務の範囲が明確に定められ、その職務の範囲内で労働する労働者であること。
・対象労働者の年収は、1年間に支払われることが確実に見込まれる賃金の額が、1075万円以上であること。
健康管理時間、長時間労働防止措置(選択的措置)、面接指導の強化等
・健康確保の観点から、使用者は、健康管理時間(省令で定めるところにより「事業場内に所在していた時間」と「事業場外で業務に従事した場合における労働時間」との合計)を把握した上で、これに基づく長時間労働防止措置や健康・福祉確保措置を講じることが求められる。
・健康管理時間の把握方法については、46通達で定められる方法と同一。
・長時間労働防止措置として、以下のいずれかの措置を労使委員会のおける5分の4以上の多数の決議で定め、講じる必要がある。
 (1)勤務間インターバルの導入
 (2)健康管理時間の上限設定
 (3)4週間を通じ4日以上かつ1年間を通じ104日以上の休日の付与
・健康管理時間について、1週間当たり40 時間を超えた場合のその超えた時間が1月当たり100時間を超えた労働者について、一律に医師による面接指導の対象とする(罰則付き)。
・面接指導の結果を踏まえた健康を保持するために必要な事後措置の実施を法律上義務付ける。

 このように対象業務および対象労働者の範囲が極めて限定的であるため、当面はほとんどの企業でこの制度を活用することは難しいでしょう。しかし、健康確保措置として、これまでなかった健康管理時間という概念が導入されたり、勤務間インターバルなどの実践的な対策が打ち出された意味は大きいのではないでしょうか。特定高度専門業務・成果型労働制と同じ適用除外者である管理監督者への影響も今後出てくることが予想されます。


関連blog記事
2015年1月18日「注目の労働時間法制改革の報告書骨子案が公開されました」
https://roumu.com
/archives/52062331.html

参考リンク
厚生労働省「第122回労働政策審議会労働条件分科会資料」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000071225.html

(大津章敬)

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