遂に示された同一労働同一賃金ガイドラインのたたき台 長澤運輸事件最高裁判決を受けた記述も公開
働き方改革関連法に関しては、まもなく政省令が交付される予定となっていますが、実務的に大きな注目を集めているのは、年内にも示されるとされている同一労働同一賃金ガイドラインです。先日(2018年8月30日)に、厚生労働省において、第9回労働政策審議会 職業安定分科会 雇用・環境均等分科会 同一労働同一賃金部会が開催され、同一労働同一賃金ガイドラインのたたき台が示されました。
既に公開されている同一労働同一賃金ガイドラインに加筆修正を加える内容となっていますが、もっとも注目されるのが、ガイドライン案において、「今後の法改正の検討過程を含め、検討を行う」とし、具体的な言及のなかった定年後の継続雇用における対応の箇所ですが、ここについては、長澤運輸事件最高裁判決を受けて以下の内容が追記されています。
さらに、定年制の下における通常の労働者の賃金体系は、当該労働者が定年に達するまで長期間雇用することを前提に定められたものであることが少なくないと解される。これに対し、事業主が定年に達した者を有期雇用労働者として継続雇用する場合、当該者を長期間雇用することは通常予定されていない。また、定年に達した後に継続雇用される有期雇用労働者は、定年に達するまでの間、通常の労働者として賃金の支給を受けてきた者であり、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることが予定されている。そして、このような事情は、定年に達した後に継続雇用される有期雇用労働者の賃金体系の在り方を検討するに当たって、その基礎になるものであるということができる。
そうすると、有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることは、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理であるか否かを判断するに当たり、短時間・有期雇用労働法第八条における「その他の事情」として考慮される事情に当たりうる。また、定年に達した後に引き続き有期雇用労働者として雇用する場合の待遇について、例えば、労働組合等との交渉を経て、当該有期雇用労働者に配慮したものとしたことや、待遇の性質及び目的を踏まえつつ他の待遇の内容を考慮すると、通常の労働者との間の差が一定の範囲にとどまっていること、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給が開始されるまでの間、一定の上乗せが行われること、定年退職に関連して退職一時金や企業年金の支給を受けていることなどの様々な事情が総合考慮されて、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理であるか否かが判断されるものと考えられる。
したがって、当該有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用される者であることのみをもって、直ちに通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理ではないとされるものではない。
このように長澤運輸事件最高裁判決のポイントをほぼそのまま盛り込んでいます。実務的には、減額において配慮すべきポイントが示されたという意味はありますが、現実的にどのような状況でどの程度の減額が可能なのかははっきりしないままという印象が残る内容となっています。
たたき台は以下で見ることができますので、是非チェックしてみてください。
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000348377.pdf
関連blog記事
2018年8月31日「労政審 改正労働基準法等の政省令案諮問に対し、妥当と答申」
https://roumu.com
/archives/52157309.html
参考リンク
厚生労働省「第9回労働政策審議会 職業安定分科会 雇用・環境均等分科会 同一労働同一賃金部会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000176596_00002.html
(大津章敬)
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