高プロで求められる健康管理時間の把握方法と今後の影響

高プロ 来春から高度プロフェッショナル制度がスタートしますが、現在、その詳細の運用について労働政策審議会労働条件分科会で議論が行われています。その全体像は2018年11月6日のブログ記事「労政審分科会で示された高度プロフェッショナル制度の導入フローと対象業務の素案」で取り上げましたが、本日はより詳細の内容ということで、指針で示される予定の健康管理時間の把握方法について解説したいと思います。

 2018年11月14日に開催された第149回労働政策審議会労働条件分科会の中で示された「労働基準法第41条の2第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針案(イメージ)」を見ると、健康管理時間の把握については以下のような記述がみられます。


 健康管理時間の把握方法は次のいずれにも該当するものとすることが必要である。
「事業場内にいた時間」を把握する方法
 「タイムカード及びパーソナルコンピュータ等の電子計算機による記録その他の客観的な方法」(素案)であること。ここでいう「客観的な方法」について、例えば、次に掲げるものを基礎とした出退勤時刻又は入退室時刻の記録が該当すること。
(1)タイムレコーダーによるタイムカードへの打刻記録
(2)パーソナルコンピュータ内の勤退管理システムへのログイン・ログオフ記録
(3)ICカードによる出退勤時刻又は事業場への入退場時刻の記録

「事業場外において労働した時間」を把握する方法
 と同様に客観的な方法であること。ただし、客観的な方法によることができないやむを得ない理由がある場合には、対象労働者による自己申告により把握することを明らかにすることが認められる。ここでいう「やむを得ない理由」について、対象労働者による自己申告によりその事業場外において労働した時間を把握せざるを得ない理由が具体的に示されている必要があり、例えば、次に掲げるものが考えられる。
(1)顧客先での業務に直行直帰し、勤退管理システムへのログイン・ログオフ等もできないこと
(2)事業場外において、資料の閲覧等パソコンを使用しない作業を行うなど、勤退管理システムへのログイン・ログオフ等もできないこと
(3)海外出張等勤退管理システムへのログイン・ログオフ等が常時できない状況にあること

 このように労働時間適正把握ガイドライン同様、タイムレコーダーなどによる客観的な方法での時間把握が求められていますが、注目はの事業場外における労働時間の把握についても事業場内同様の客観的把握が原則であり、自己申告については勤退管理システムへのログイン・ログオフ等ができないことという記載になっている点でしょう。つまり、自己申告についてはより限定的な場面でしか認められない方向で検討が行われています。

 高度プロフェッショナル制度は、要件の厳しさからそれほど導入事例は多くないと思われますが、労働時間の把握については自己申告制への包囲網が強まり、また事業場外みなし労働などにも大きな影響が出てくることが予想されます。


関連blog記事
2018年11月6日「労政審分科会で示された高度プロフェッショナル制度の導入フローと対象業務の素案」
https://roumu.com
/archives/52161110.html

参考リンク
厚生労働省「第149回労働政策審議会労働条件分科会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000024580_00009.html

(大津章敬)

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