挙式をしない社員の特別休暇はどのように与えればよいの?

 服部印刷では先日の社員の忌引の相談から、特別休暇の規定についての検討が開始された。しかし、実際に検討を行うといろいろなパターンが思い浮かんだようで、大熊に相談が入った。



宮田部長宮田部長:
 特別休暇について、もう一つ教えてください。実は、社員の一人がこの度結婚することが決まったのですが、親・兄弟姉妹だけの少人数で挙式をし、披露宴は行わないらしいのです。その後の新婚旅行も今のところ決まっていないようで特別に休む計画は立てていないと言っています。このような場合、特別休暇はどのように考えればよいのでしょうか?
服部社長:
 通常は挙式→披露宴→新婚旅行と続くので、挙式の日から特別休暇を与えればよいのは分かるのですが、最近挙式を挙げないカップルも増えてきています。また、挙式費用を新婚旅行に回して豪華にしようというケースがあるということを知人から聞きました。私が結婚した頃は宮崎へのハネムーンというのがブームだったのですが…最近は若者についていくのがたいへんです。
大熊社労士:
 そうですね、価値観の多様化と言ってしまえばそれまでですが、いろいろなパターンが出てきているようですね。ご質問の件ですが、例えば「本人が結婚する場合の特別休暇は、入籍の日から4ヶ月以内に取得する場合に認める」といった条件をつけるようにしてはどうでしょうか。
服部社長服部社長:
 なるほど、しかし日本ハムファイターズのダルビッシュ投手ではないですが、最近「できちゃった結婚」が増えているので、そのような場合は母体の体調管理を考えると利用できないかも知れませんね。かといって出産から数年後、子供がある程度大きくなり一緒に旅行できるようになった頃に請求!?ということをされても困ります。
大熊社労士:
 妊婦さんの場合、産前休暇は出産予定日の6週間前から取ることができ、産後は8週間。その後引き続き育児休業を取るとなると1年間以上は休みになります。その間を除いて考えるとなれば、やはり産前休暇に入るまでに特別休暇を取得してもらうのがよいでしょう。
服部社長:
 そうですよねぇ。最近はいろいろ考えさせられます。
福島照美福島さん:
 また別の例ですが、挙式も披露宴も行ったのですが、新婚旅行は仕事の繁忙期を避けて、3ヶ月程経ってから行った友達がいました。このようなケースだと、挙式のときと新婚旅行のときに分割して特別休暇を取得したいという要望もあるかと思うのですが、わが社ではどう考えたらよいでしょうか?
大熊社労士:
 「結婚式もしくは新婚旅行のいずれか1回のみ特別休暇を与え、分割付与はしない」としては、どうでしょうか。この場合、一般的には新婚旅行の方で特別休暇を申請されることが多いと思いますが、結婚式前後にも数日の有休を求められることもあるでしょう。
福島さん:
 そうですね、その友人の話を聞くと結婚式は簡素にしようとしていても、やはり結構いろいろな準備があるのでたいへんそうで結婚式の前後であわせて2日程は休みをもらったと言っていました。
大熊社労士大熊社労士:
 そこでもう一つ注意点をお伝えしておきましょう。忌引の場合は、即座に特別休暇を利用することになります。これは事情が事情だけに仕方ありませんが、結婚で特別休暇を取得する場合は挙式にしろ、新婚旅行にしろ、少なくとも数ヶ月先の予定は決まっていると思われますので、その届出をできるだけ早めに提出してもらうようにしましょう。結婚時の特別休暇を7暦日与えるような場合、小規模の会社では仕事のやり繰りもたいへんになりますので、少なくとも1ヶ月前までに届出をさせるようにルール化しておいた方がよいでしょう。
宮田部長:
 1ヶ月前までに出さない場合は、特別休暇を与えないという取り扱いをしても構わないのですね。
大熊社労士:
 そもそも特別休暇は労働基準法などの法律に基づき付与するものではなく、会社からの恩恵的な休暇ですから、それでも構いません。しかし、結婚というおめでたい話ですから極力トラブルを起こしたくはないはずです。ですから、結婚が決まった時点で社員さんの方から、できるだけ早めに職場の上司に報告して、業務調整してもらうような工夫が欲しいところです。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。前回に引き続き「特別休暇」について取り上げてみました。文中でも説明しましたが特別休暇については労基法には規定していないため、会社の裁量範囲にありますが、慶弔という社員さんの人生にとっては非常に大切な出来事ですので、できるだけトラブルは避けたいものです。そこで、規程等で取得手続きについて明確にすると共に、休暇取得について普段から気軽に相談できるような環境作りが望まれます。特に再婚の場合、言い出しにくい人も中にはいると思われますから、そのような方にも変らない祝福ができるようにしたいものです。



関連blog記事
2007年8月6日「配偶者の兄弟姉妹が亡くなったときの特別休暇はどのようにすればよいの?」
https://roumu.com/archives/64597536.html
2007年6月1日「慶弔見舞金規程」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54367891.html
2007年1月20日「休暇(欠勤)届」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51723593.html


参考リンク
労務行政研究所「慶弔休暇の日数に休日を含めて定めることは、法令上可能か」
http://www.rosei.or.jp/service/faq/faq0/faq0403_04.html


(鷹取敏昭)


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