外国人労働者雇用の際の実務ポイントを教えてください

 前回、外国人労働者の雇用に関する相談を受けることとなった大熊だが、今回は外国人を雇用する際のより具体的な注意点について説明することにした。



大熊社労士:
 今日は、具体的に外国人労働者を雇用する場面を想定して、お話しましょう。
宮田部長:
 はい、前回は雇い入れる時の注意点でしたので、引き続き雇用契約を結ぶときの注意点などを教えてください。
大熊社労士大熊社労士:
 分かりました。外国人労働者というと何か特別な感じがして、通常の(日本人)従業員と別に考えてしまいがちですが、労働基準法等の各種基準が日本人と同じように適用されます。
宮田部長:
 ということは、業務中にケガをすれば労災保険が適用されるということですね。
大熊社労士:
 その通りです。また基準を満たせば年次有給休暇を取得する権利もありますし、時間外勤務をすれば割増賃金の支払いが必要になります。
福島さん:
 厚生年金にも加入するということですか?
大熊社労士:
 はい、加入基準を満たしているかぎり、会社としては加入させる義務があります。ただし、厚生年金保険料が掛け捨てとなってしまうことがあるため、外国人脱退一時金制度(国民年金保険料を納めた期間または厚生年金保険に加入した期間が6ヶ月以上必要)というものがあります。また、一部の国ではありますが、日本と社会保障協定を結んだ国との間で「年金加入期間の通算」という、相手国との年金加入期間を相互に通算し年金受給権を獲得できるものもあります。
宮田部長宮田部長:
 なるほど。外国人労働者は日本人従業員と同じように取り扱い、厚生年金に加入していた場合は、退職時にどのようにするのかといった話をしておくべきですね。
大熊社労士:
 そういった配慮をすることはとても重要ですね。さて、話の内容を少し変えて、雇用契約についてお話しましょう。
宮田部長:
 通常の従業員と同じように労働基準法が適用されるということですので、労働条件を明示することが必要になりますね。外国語の雇用契約書を作成しなければならないのでしょうか?
大熊社労士:
 法律上の義務はありませんが、やはり本人に分かりやすく明示するためにも、外国語による書面を交付するのが望ましいでしょう。書面を交付するだけでなく、本人が理解できるように説明しておくことも重要になります。
宮田部長:
 この労働条件の明示において、具体的にどのようなトラブルがありますか?
大熊社労士:
 これは日本人の場合も同様ですが、雇用契約書をもらったが説明を受けていないということが多いようです。会社としては、紙に書いてあるからといって説明を省略せず、きちんとその内容について説明することが重要です。その他には、説明と実際とが異なることによるトラブルも多く、例えば説明がないまま作業服代が給与から控除されていることや、実際の残業時間が説明で聞いていた時間よりも多いといったことがトラブルになりやすいようですね。
福島照美福島さん:
 説明もできれば母国語でしておくのが良さそうですね。英語であればなんとかなりそうですが、その他の言葉となると対応が難しいですね。
大熊社労士:
 外国語サービスのあるハローワークもありますし、「外国人雇用管理アドバイザー制度」という雇用管理や外国人労働者の職業生活に関する相談に応じてくれる制度がありますので、そういったものを活用するのも良いでしょう。
宮田部長:
 そうそう、外国人労働者を雇い入れる際、会社が住居を借り上げてそこに住んでもらうというイメージがありますが、そうする必要があるのでしょうか?
大熊社労士:
 確かにそういった対応をしている場合がありますが、そこまでする必要はありません。実際に住居の問題についてはトラブルになりやすいのですが、そもそも雇用契約と住居の話を切り離して考えることが重要ですね。
宮田部長:
 社宅等の適用に関しては入退去のルールをきっちり決めておき、その説明をしておくことがそもそも必要ですね。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は外国人労働者と契約を結ぶ際の注意点について取り上げてみました。ここでは、今年の10月から始まった外国人雇用状況の届出についてお話してみましょう。外国人労働者(特別永住者及び在留資格「外交」・「公用」の者を除く)を雇用する場合、その氏名や在留資格、在留資格、国籍等をハローワークへ届け出ることになっています。これは、雇用保険の被保険者になるか否かに関わらず、すべての外国人が対象となりますので、例えば1日だけ働いた場合であっても届出が必要になります。この届け出については、第3号様式を窓口への届け出のほか、報告システムを使って電子申請もできるようになっています。



関連blog記事
2007年12月17日「外国人労働者の採用で注意すべきことは何ですか?」
https://roumu.com/archives/64766619.html


参考リンク
東京外国人雇用サービスセンター「外国語サービスのあるハローワーク」
http://www.tfemploy.go.jp/jp/coun/cont_2.html
社会保険庁「社会保障協定」
http://www.sia.go.jp/seido/kyotei/index.htm
神奈川労働局「外国人労働者の雇用に当たっての留意点」
http://www.kana-rou.go.jp/users/antei/gaikoyou.htm
厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin-koyou/01.html
厚生労働省「届出様式について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin-koyou/02.html
厚生労働省「外国人雇用状況報告システム」
https://gaikokujin.hellowork.go.jp/gkjgs/index.jsp


(福間みゆき)


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