うつの症状に早く気づいてあげるためのポイントはありますか?

 前回に引き続き、うつ病の症状を示す社員への対応について相談を受けている大熊社労士。今回は、うつに早く気づいてあげるためのポイントについて説明することにした。



宮田部長宮田部長:
 うつ病の症状を示している社員は、以前からなんらかの症状は出ていたのではないかと思うのですが、それに早く気づいてあげられなかったのが残念です。
大熊社労士:
 そうですね。うつの人は、同僚など周囲の目を気にしてわざと元気なフリをすることが多いと言われており、そのため、なかなか分かりにくいようですね。
宮田部長:
 そうなんですね、かなり我慢しているのですね。初めて知りました。ところで、周囲の者がうつに早めに気づくポイントはあるのでしょうか?
大熊社労士:
 はい、一般的に朝が辛くなり、起きにくくなると言われています。それまで遅刻したことのない人が遅刻をしたり、その回数が多くなったりすると注意が必要でしょう。
福島照美福島さん:
 彼女は遅刻をしなかったのですが、出社後の調子は良くなかったように思います。例えば、朝礼のときなどにぼんやりしていて、名前を呼ばれても返事ができなかったこともありました。そのときは、ちょっと疲れているのかなという程度にしか思わなかったのですが、今から振り返ってみれば、うつの症状が出始めていたのかも知れません。
大熊社労士:
 そうですね。元気なフリをしていても、よく観察していれば、うつ的な症状が出ていることは分かるといわれています。朝の遅刻や体調不良のほかにも、決断力や判断力も鈍くなったり、仕事の優先順位が付けられなくなってきます。また、いろいろなことが気になり手を出したりしますが、やり終えることができず放り出すということを繰り返すこともあるようです。
福島さん:
 言われてみれば、整理整頓が得意だった彼女が、最近は片づけができなくなってきて、終業後にいろいろな物が散らかっていたこともありました。
服部社長服部社長:
 うつで辛いというサインを彼女は出していたのでしょうね。他にも、判断力が鈍くなるということについては、次のようなことがありました。仕事上で普段ならAにすべきかBにすべきかと尋ねると、判断はどちらかというと早い方で、その理由も自分の中できちんと整理して答えることのできる社員なのですが、最近の彼女はその判断ができないようで、また自分に自信がないのか後ろ向きの内容が多かったように思います。
大熊社労士大熊社労士:
 そうやって振り返ってみると、いろいろなヘルプのサインを出していたのでしょうね。最初にも説明しましたが、不調に気づかれまいと気を遣いますので、本人はかなり疲れてしまいます。一瞬は明るい表情をしていたとしても、その後は疲れた表情をしたり、暗い雰囲気を漂わすようなことがあれば要注意です。辛さを外に向かって出すことができなくなっていることも考えられますので、辛い思いを早めに聞き出すことが大切でしょう。
服部社長:
 彼女には申し訳ないが、うつのことについて勉強になりました。普段と違うな、怪しいなと思ったら注意を怠らないようにします。
大熊社労士:
 是非そうしてください。それとなく愚痴を聞きながら、不調を確認するように心掛けてください。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は、うつに気づくポイントについて取り上げてみました。うつの人は周囲の他の人の目を気にする方が多いといわれており、元気なフリをしがちですが、何らかのヘルプサインが出ているものです。遅刻が多くなる、ぼんやりすることが多くなる、整理整頓ができなくなる、判断や決断ができなくなる、優先順位が付けられなくなる、後ろ向きな発言が多くなるなどが見られるようになったら注意が必要です。これらは上司よりも、周囲の社員の方が気付きやすい場合もありますので、職場全体で不調に気付いてあげられるようにすることも必要でしょう。



 関連blog記事
2008年1月14日「うつ病の症状がある社員をそのまま働かせてもよいのでしょうか?」
https://roumu.com/archives/64787175.html
2008年1月7日「うつ病の症状が見られる社員が発生したときの対応は、どうしたらよいですか?」
https://roumu.com/archives/64787155.html
2007年12月18日「深刻化するメンタルヘルス問題:心の不調に気づくポイント」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51196396.html
2007年11月27日「公的機関等が提供するメンタルヘルス相談機関」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51175715.html
2007年11月23日「激増するメンタルヘルスに関する労働相談」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51169065.html
2007年10月19日「具体的対応が遅れるメンタルヘルス対策」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51131807.html
2007年6月15日「うつ病等のメンタルヘルス不全者への医療費助成」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50994157.html
2007年4月13日「深刻化する企業のメンタルヘルス問題」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50942271.html
2006年7月28日「年々深刻化する企業のメンタルヘルス問題」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50664577.html


参考リンク
独立行政法人労働者健康福祉機構「産業保健推進センターのご紹介」
http://www.rofuku.go.jp/sanpo/
愛知労働局「職場におけるメンタルヘルスの相談機関について」
http://www2.aichi-rodo.go.jp/topics/docs/04-06-22-1.html
大阪労働局「メンタルヘルスについて 」
http://osaka-rodo.go.jp/joken/anzen/kenko/mental.php
福岡労働局「メンタルヘルス」
http://www.fukuoka.plb.go.jp/7eisei/eisei08.html
独立行政法人 労働者健康福祉機構「勤労者心の電話相談(無料)」
http://www.rofuku.go.jp/rosaibyoin/kokoro_soudan.html


(鷹取敏昭)


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