衛生管理者が長期で休んでしまったら、どうすれば良いのでしょうか?

 前回は、従業員数が50名を超えることによって、会社として安全管理体制を構築する必要があるという話をし、安全管理者について解説を行なった。今回はその続きとして、衛生管理者についての解説を行なうこととなった。



大熊社労士:
 それでは引き続き、衛生管理者についてお話しましょう。
福島照美福島さん:
 衛生管理者については、少し調べてみました。安全管理者は業種によって選任しなければならないか否かが決まっていましたが、衛生管理者はすべての業種において従業員が50人以上であれば選任する必要があります。また、人数については、安全管理者の場合には定めはありませんが、衛生管理者の場合、人数の規模毎に定めがありました。
大熊社労士:
 両者の選定基準を上手く理解できていますね。すばらしいです。それでは衛生管理者の仕事について解説していきましょう。安全管理者は安全に関する技術的事項を管理していましたが、衛生管理者の場合は衛生に関する技術的事項を管理する業務を担っています。週に1度は作業場等を巡視し、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときに、直ちに労働者の健康障害を防止するための措置を講じることが求められます。過重労働に対する会社の対応責任が強くなっていることから、衛生管理者に求められる役割がますます重要になっていますね。
福島さん:
 衛生管理者になることができる資格として、第1種衛生管理者などいろいろと書いてありましたが、詳しく教えてください。
大熊社労士大熊社労士:
 はい、衛生管理者になるための資格としては、衛生管理者免許試験に合格するか、労働衛生コンサルタントであること等が必要になっています。そして、衛生管理者免許試験には第1種と第2種免許があり、業種によっては、第1種でなければならないものと、第2種でも良いものとがあります。
宮田部長:
 衛生管理者については、山田君が資格をもっているので彼を任命しようと考えています。これは余談ですが、もしも衛生管理者が病気で長期休職することになった場合はどうすれば良いのですか。
大熊社労士:
 衛生管理者が旅行や病気等によって職務を行なうことができないときは、代理者を選任することになっています。衛生管理者がいなくなると、毎週1回の巡視など定期的な業務に支障が生じてしまいますので、何かトラブルが起きた場合、会社に法的な責任が問われる要因の一つになりかねないでしょう。
宮田部長:
 衛生管理者が果たす役割は重要ですね。どのような人を代理者とすればよいのでしょうか。
大熊社労士:
 次のうちいずれかに該当する者となっています(昭和23年1月16日 基発83号、昭和33年2月13日 基発90号)。
衛生管理者となる資格を有している者(衛生管理者免許、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなどの資格を有する者)
保健衛生に関する業務に従事している者または従事した経験を有する者
 のように資格をもった者でなくても、過去に衛生管理者の補佐をしていた者や衛生委員会の委員であった者などでも、代理者となることができます。ちなみに、この代理者については、監督署への選任報告義務はありません。
宮田部長宮田部長:
 衛生委員会の委員がいますので、代理者は確保できそうです。しかし、もしも保健衛生に関する実務経験をもつ者がいないような場合は、社員に衛生管理者の免許を取得してもらう必要があるということになりますね。
大熊社労士:
 その通りです。実際、免許者が退職すると、後任がなかなか見つからないことがあります。次のような場合については、都道府県労働局長の許可を受けることによって、事業場の専属や選任の数などにおいて規則どおりでなくてもよいという取扱いがあります。
短期間(おおむね1年以内)の現場等であって、所定の衛生管理者が得られないときは、特定の者を衛生管理の業務に従事させることを条件として、かつその期間に限り許可すること
衛生管理者の突然の死亡、退職等特殊の事由により欠員が生じたが、その充足に期間を要することがやむを得ないと認められるときは、特定の者を衛生管理の業務に従事させることを条件として、かつ期間(おおむね1年以内)に限って許可すること
 実務上は、衛生管理者を確保していくことを急ぐ必要がありますね。衛生管理者の資格試験は毎月行なわれていますが、取得までには数ヶ月は必要になります。その間、衛生管理者も代理者も不在ということになれば、衛生管理者が果たすべき役割が充分に行われなくなってしまいます。このような事態のときには、社内の管理部門の担当者が替わりに定期巡視などの業務をしておくことが求められますね。
宮田部長:
 なるほど。福島さん、一緒に試験受けない?


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は、前回に引き続き安全衛生管理体制について取り上げてみました。ここで衛生管理者を自社以外の者(例えば派遣社員)から選任するための条件について、お話しましょう。本来、衛生管理者は事業場に専属している者の中から選任しなければならないとされています。しかし、次の3つの条件にあてはまる場合は、派遣契約や委任契約を結んだ者、つまり自社の従業員以外の者を衛生管理者とすることが可能になっています。
安衛則第7条第3号のロ 「その他の業種」に該当する事業場
 つまり、安衛則第7条第3号のイに掲げる業種(農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業)以外の業種
衛生管理者として選任する者について、第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許若しくは衛生工学管理者免許を有する者又は安衛則第10条各号に掲げる者
衛生管理者として選任する者に係る労働者派遣契約又は委任契約において、衛生管理者が職務を遂行しようとする事業場に専ら常駐し、かつ、その者が一定期間継続して職務に当たることが明らかにされていること。


 衛生管理者に限らず、総括安全管理者や安全管理者などの担当者が、急遽退職するなどして会社の安全管理体制が機能しないという事態にならないように、複数の社員に資格をもたせておくような配慮が重要になっています。


[関連規則・通達]
労働安全衛生規則 第8条(衛生管理者の選任の特例)
 自業者は、前条第1項の規定により衛生管理者を選任することができないやむを得ない事由がある場合で、所轄都道府県労働局長の許可を受けたときは、同項の規定によらないことができる。


平成18年3月31日 基発第0331004号「自社の労働者以外の者を衛生管理者等に選任することについて」
http://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-47/hor1-47-23-1-0.htm



関連blog記事
2008年3月3日「従業員50名以上になったときに求められる安全衛生管理体制とは?」
https://roumu.com/archives/64834156.html


参考リンク
厚生労働省「総括安全衛生管理者等の選任義務」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/anzen/anzen00/5.html
財団法人 安全衛生技術試験協会
http://www.exam.or.jp/index.htm


(福間みゆき)


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