派遣労働者の受入には期限があるのですか?
労働者派遣の基本について大熊社労士からレクチャーを受けている服部社長と宮田部長。派遣労働者の受入に期限があることをはじめて知るなど、労働者派遣について殆どわかっていないことを思い知らされた。
服部社長:
派遣と請負の違いはよく分かりました。わが社では、いまいる社員の仕事の補助的なことをしてもらおうと考えていますので請負ではなく、労働者派遣でなければならないでしょう。ところで、派遣社員を派遣してもらおうとする場合には、どのようにすればよいでしょうか?
大熊社労士:
まずは派遣会社に相談してみることから始めてください。インターネットで検索すると、派遣会社の情報がたくさん出てきますので、地域と仕事内容で絞り込んでもらうと良いでしょう。なお、その際には複数の派遣会社に相談されるようにしてください。派遣会社でも得意不得意の分野や地域がありますし、最近は派遣会社といってもやはり派遣社員を確保するのに困っている事情があるようなので、よく比較検討されると良いでしょう。先ほど、社員の仕事の補助的なことをしてもらおうと考えているということでしたが、具体的にどのような仕事を派遣労働者にさせようとお考えでいらっしゃいますか?
服部社長:
印刷物の点検確認や梱包、仕分けなどをやってもらおうと考えています。ところで、派遣労働者を受け入れる場合に、最初に注意しなければならないことは何でしょうか?
大熊社労士:
派遣会社は労働者派遣法に基づいて都道府県労働局の許可や届出をしているはずですので、まずはその確認を行ってください。営業担当者に尋ねたり、派遣会社のパンフレットなどで確認するとよいでしょう。次に、派遣労働者の受入期間には制限がありますので注意してください。
宮田部長:
へぇー、そうなのですか、派遣期間に制限があるのですか。
大熊社労士:
制限がない派遣業務もあります。例えば、情報処理システム開発や機械設計など専門的な知識、技術または経験を必要とする26の業務、有期プロジェクトの業務、所定労働日数の少ない業務、産前産後休業や育児休業、介護休業などの代替業務などです。先ほどのお話からすると、御社の場合はこれらに該当しないように思います。
宮田部長:
派遣期間の制限というとどの程度の期間なのですか?
大熊社労士:
1年または3年以内となります。この違いですが、1年を超え3年以内で派遣を受け入れる場合は、派遣先の労働者の過半数を代表する者の意見を聞かなければならないという条件がつきます。その理由は、派遣受入期間については本来派遣先が判断すべきものですが、この判断をより的確に行うために、現場の状況等を知っている派遣先の労働者代表の意見を聞くこととされています。異議がある場合は、その意見を十分に尊重するように努めるようにしなければなりません。
宮田部長:
1年では短いですね。採用が難しい状況を考えると、やはり3年を前提に考えなければならないと思います。ということは就業規則届出のときの同じように、社員代表の意見を聞く必要があるということですね。
大熊社労士:
そのようにお考えください。社員代表の意見を聞かずに派遣会社と契約を結んだ場合でも契約そのものは有効ですし、社員代表からの意見が反対であるにもかかわらず契約を結んだ場合も違法にはなりません。しかし、現場の意見を無視したり、強引に押し切ったりするのは望ましいことではありませんので、まずはよく話し合ってください。
服部社長:
わかりました。人手不足で現場も困っています。また派遣も受入期間があるということなので、臨時的な対応だということを伝えて理解をしてもらうようにします。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回も労働者派遣について取り上げてみます。労働者派遣事業には、特定労働者派遣と一般労働者派遣の2種類があります。この違いは派遣労働者の雇用形態によるものです。特定労働者派遣事業では、常用雇用の派遣労働者のみで構成されており、派遣先企業との派遣契約が終了しても、派遣元との雇用契約は継続しますので賃金も継続して支払われます。一方、一般労働者派遣事業は、基本的に登録型の派遣労働者によって構成されています。登録型の派遣労働者とは、事前に派遣元のリストに登録し、適当な派遣先が見つかれば、それに応じて派遣元と雇用契約を結び派遣労働が始まります。しかし、派遣が終了すれば、原則として派遣元事業主との労働契約も終了しますので、特定派遣に比べると不安定な状態におかれています。このような違いから、特定労働者派遣事業は届出制ですが、一般労働者派遣事業は派遣労働者の雇用保障の観点から特別の管理が求められており許可制となっています。
[関連法規]
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 第5条(一般労働者派遣事業の許可)
1 一般労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
2 前項の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を厚生労働大臣に提出しなければならない。
(1)氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
(2)法人にあつては、その役員の氏名及び住所
(3)一般労働者派遣事業を行う事業所の名称及び所在地
(4)第36条の規定により選任する派遣元責任者の氏名及び住所
3前項の申請書には、一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る事業計画書その他厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。
4 前項の事業計画書には、厚生労働省令で定めるところにより、一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る派遣労働者の数、労働者派遣に関する料金の額その他労働者派遣に関する事項を記載しなければならない。
5 厚生労働大臣は、第1項の許可をしようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 第16条(特定労働者派遣事業の届出)
1 特定労働者派遣事業を行おうとする者は、第5条第2項各号に掲げる事項を記載した届出書を厚生労働大臣に提出しなければならない。この場合において、同項第3号中「一般労働者派遣事業」とあるのは、「特定労働者派遣事業」とする。
2 前項の届出書には、特定労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る事業計画書その他厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。
3 前項の事業計画書には、厚生労働省令で定めるところにより、特定労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る派遣労働者の数、労働者派遣に関する料金の額その他労働者派遣に関する事項を記載しなければならない。
関連blog記事
2008年6月2日「派遣と請負とは何が違うのですか?」
https://roumu.com/archives/64910574.html
2008年4月2日「派遣受入期間の意見書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55026725.html
2008年03月22日「派遣先事業主・派遣元事業主に課せられた労働法の適用(労働基準法編)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51285988.html
2008年03月17日「産業医選任義務の従業員数50名に派遣労働者は含めるのか」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51279846.html
2008年3月15日「派遣先責任者選任義務の範囲」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51278351.html
2007年10月20日「8年間で企業における派遣労働者の割合が倍増!」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51128275.html
参考リンク
厚生労働省「労働者派遣事業・職業紹介事業等」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/haken-shoukai.html
東京労働局「労働者派遣事業関係」
http://www.roudoukyoku.go.jp/seido/haken/conttop.html
Wordで使える!就業規則・労務管理書式Blog「労働者派遣関連書式」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/cat_50241670.html
(鷹取敏昭)
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