裁判員が選任される流れはどのようになっているのですか?
前回は裁判員制度の目的などその概要を聞いた宮田と福島であったが、今回も引続き裁判員制度について、大熊社労士から説明を受けることになっている。
宮田部長:
大熊先生、こんにちは。前回のお話のとおり、翌日の朝礼で、社員に封筒が来ていないかどうか確認するように伝えておきました。
大熊社労士:
そうでしたか。裁判員制度は1年ごとに候補者を選んでいきますので、今後は、毎年社員に連絡していく必要があります。
福島さん:
総務の仕事が一つ増えましたね。12月に行うタスクとして取り上げておきます。
大熊社労士:
それは良い案ですね。裁判員制度は一国民として参加することになりますが、やはり会社のフォローが欠かせませんので、積極的に投げかけていくことが望まれます。では、今日は裁判員に選ばれる流れについてお話しましょう。裁判員の選任プロセスは以下のようになっています。今日の時点ですと、の候補者への通知・調査票の送付が行われたところです。
宮田部長:
なるほど、裁判員制度が始まるまでには、まだまだ長い道のりですね。
大熊社労士:
裁判員制度は来年の5月21日から始まりますので、5月21日以降の裁判に立ち会うことになります。実際には、7月ごろから参加することになるようです。
福島さん:
フロー図を見ますと、裁判の6週間前にまた通知が来るようですね。もしも、裁判に行かなければならない日に、どうしても重要な仕事がある場合は断ることができるのでしょうか?
大熊社労士:
この段階で「質問票」が送られ、次のような事情に当てはまっている人については、辞退するかどうかを回答することになっています。
・重い病気またはケガにより裁判所に行くことが難しい。
・親族・同居人の介護・養育を行う必要がある。
・仕事上の重要な用務があって、自らがこれを処理しなければ著しい損害が生じるおそれがある。など
宮田部長:
仕事上の理由も認められると考えて良いでしょうか?
大熊社労士:
これについては、注意が必要です。まだ具体的なことは分かっていませんが、仕事を理由とする辞退が認められるか否かは、事情を確認した上で、例えば、以下のような観点から総合的に判断されることになっています。
裁判員として職務に従事する期間
事業所の規模
担当職務の代替性
予定される仕事の日時を変更できる可能性
宮田部長:
これを見ますと、辞退することは難しそうです。それよりも、社員が裁判に参加できるよう環境を整えておく必要がありますね。
大熊社労士:
裁判員制度は今後続いていく制度ですので、いつ社員が裁判員になるとは限りません。そのため、宮田部長のおっしゃるとおり、今のうちに、社員に裁判員制度への理解を深めてもらっておくことが求められます。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。裁判にかかる日数については、約7割の事件が3日以内と想定されていますが、長い場合は5~6日の日数がかかるとされています。また、裁判員の負担を軽減するために、裁判はできるだけ連日に行うことになっていますので、実際に仕事の調整を行う必要が出てきます。企業としては、いまのうちから社員が裁判員に選任された場合のフォロー体制を検討することが求められます。併せて、裁判員に選任された社員について不利益な取扱いをしないことを管理職に徹底しておくことも重要になります。
[関連法規]
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 第100条(不利益取扱いの禁止)
労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
関連blog記事
2008年12月8日「来年5月21日から始まる裁判員制度とはどのようなものですか?」
https://roumu.com/archives/65023648.html
2008年11月29日「裁判員候補者に選ばれた際の注意点」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51452216.html
2008年11月24日「裁判員制度で支給された日当等は雑所得の取扱いを」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51454719.html
2008年11月21日「裁判員休暇規程」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55178248.html
2008年11月19日「お待たせしました!裁判員休暇規程のダウンロードを開始!」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51453215.html
2008年11月11日「いよいよ11月28日より裁判員候補者への資料送付が始まります」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51444106.html
2008年9月18日「裁判員休暇の賃金取り扱い 日本経団連調査でも86%が「有給」と回答」」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51412397.html
2008年9月16日「裁判員休暇の賃金取り扱い 9割の企業が「有給」と回答」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51410564.html
2008年8月13日「求められる裁判員制度導入に伴う特別休暇制度の検討」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51389871.html
2008年4月16日「裁判員制度 平成21年5月21日にスタート」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51307054.html
2008年1月21日「政令により裁判員辞退の申立てをすることができる事由が明らかに」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51232135.html
参考リンク
最高裁判所
http://www.saibanin.courts.go.jp/
最高裁判所「裁判員候補者名簿に登録されたことを公にすることは法律上禁止されていますので,ご注意ください(2008.12)」
http://www.saibanin.courts.go.jp/topics/saibanin_meibo_attention.html
法務省
http://www.moj.go.jp/SAIBANIN/index.html
(福間みゆき)
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