高校生のアルバイトを仕事に就かせるときの注意点を教えて下さい

 前回、高校生を雇用する場合の注意点について確認したが、いよいよ今週から高校生にアルバイトにやって来ることとなった。配属は工場となり、製本作業を行う予定となっている。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。先週ご相談しました高校生のアルバイトですが、いよいよ明日から来てもらいます。
大熊社労士:
 そうですか。今年は新規採用を控えられましたが、高校生のアルバイトが入ってくることによってフレッシュな印象を受けることができ、職場の雰囲気も変わりますね。
宮田部長宮田部長:
 そうですね。それも期待したいですね。アルバイトの彼には、工場の製本工程で仕事をしてもらおうと考えていますが、実際に仕事をさせるにあたっての注意点はありますか?
大熊社労士:
 はい、18歳未満の者については、労働基準法で危険・有害な業務をさせてはいけないとされており、その具体的な範囲については年少者規則第8条に定められています。例えば、ボイラーの溶接やクレーンの運転などがあります(詳細は文末の関連法規を確認)。
福島さん:
 なるほど。44個の業務が挙げられており、幅広い内容ですね。
大熊社労士:
 これらの業務については、大きく①安全上危険な業務、②衛生上有害な業務、③福祉上有害な業務の3つに分けることができます。そして、各々の業務について細かな行政解釈などが出ていますので、注意して確認する必要があります。今回については、製本の作業内容からみて問題ないでしょう。またそもそも労働基準法において、厚生労働省が定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならないとされています。
福島照美福島さん:
 基本的には、重たい物を持ったり運んだりといったことはないと思いますが、この重量物を取り扱う業務とはどのような業務を指しているのでしょうか?
大熊社労士:
 これについても年少者規則第7条に定めがありまして、以下のように、就業禁止となる重量物の最低基準が示されています。
断続作業の場合
 満16歳未満 男:15㎏ 女:12㎏
 満16歳以上満18歳未満 男:30㎏ 女:25㎏
継続作業の場合
 満16歳未満 男:10㎏ 女:8㎏
 満16歳以上満18歳未満 男:20㎏ 女:15㎏
宮田部長:
 こんなルールがあるとはまったく知りませんでした。性別および年齢別、作業が連続か断続かによって、細かく決められているのですね。
大熊社労士大熊社労士:
 規定の中において明確な作業方法の定めは示されていませんが、健康に及ぼす影響との関係からみますと、重量物を直接担うケースを指していて重量物を押すようなケースについては含まれないと考えられます。
宮田部長:
 18歳未満の者については、身体の発育に危害が生じないように一層注意しなければなりませんね。しばらく仕事をしていくと、18歳未満であることという認識が薄れて行きかねませんので、総務の方でしっかり管理していきます。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。労働安全衛生法第61条では、未経験者であること、技能を有しない労働者であることを理由として、一般的な就業制限が規定されています。このうち一定の業務については免許を有しない者の就業を禁止していますが、この免許取得そのものについて、年少者であることを欠格事由としているものがあり、具体的には次のとおりです。
満18歳未満に満たない者であることを欠格事由とするもの
・特級ボイラー技士免許
・一級ボイラー技士免許
・二級ボイラー技士免許
・特別ボイラー溶接士免許
・普通ボイラー溶接士免許
・ボイラー整備士免許
・クレーン運転士免許
・移動式クレーン運転士免許
・デリック運転士免許
・ガス溶接作業主任者免許
・林業架線作業主任者免許
・発破技士免許
・揚貨装置運転士免許
・潜水士免許
・エックス線作業主任者免許
満20歳に満たない者であることを欠格事由とするもの
・高圧室内作業主任者免許


 なお、会社が、労働基準法第62条(危険有害業務の就業制限)に違反して年少者を危険有害の業務に従事させた場合についても、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の罰則がありますので一層の注意を払うことが望まれます。


[関連法規]
労働基準法 第62条(危険有害業務の就業制限)
 使用者は、満18歳に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
2 使用者は、満18歳に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
3 前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。


労働基準法 第63条(坑内労働の禁止)
 使用者は、満18歳に満たない者を坑内で労働させてはならない。


年少者規則 第8条(年少者の就業制限の業務の範囲)
 法第六十二条第一項の厚生労働省令で定める危険な業務及び同条第二項の規定により満十八歳に満たない者を就かせてはならない業務は、次の各号に掲げるものとする。ただし、第四十一号に掲げる業務は、保健師助産師看護師法 (昭和二十三年法律第二百三号)により免許を受けた者及び同法 による保健師、助産師、看護師又は准看護師の養成中の者については、この限りでない。
一  ボイラー(労働安全衛生法施行令 (昭和四十七年政令第三百十八号)第一条第三号 に規定するボイラー(同条第四号 に規定する小型ボイラーを除く。)をいう。次号において同じ。)の取扱いの業務
二  ボイラーの溶接の業務
三  クレーン、デリック又は揚貨装置の運転の業務
四  緩燃性でないフィルムの上映操作の業務
五  最大積載荷重が二トン以上の人荷共用若しくは荷物用のエレベーター又は高さが十五メートル以上のコンクリート用エレベーターの運転の業務
六  動力により駆動される軌条運輸機関、乗合自動車又は最大積載量が二トン以上の貨物自動車の運転の業務
七  動力により駆動される巻上げ機(電気ホイスト及びエアホイストを除く。)、運搬機又は索道の運転の業務
八  直流にあっては七百五十ボルトを、交流にあっては三百ボルトを超える電圧の充電電路又はその支持物の点検、修理又は操作の業務
九  運転中の原動機又は原動機から中間軸までの動力伝導装置の掃除、給油、検査、修理又はベルトの掛換えの業務
十  クレーン、デリック又は揚貨装置の玉掛けの業務(二人以上の者によって行う玉掛けの業務における補助作業の業務を除く。)
十一  最大消費量が毎時四百リットル以上の液体燃焼器の点火の業務
十二  動力により駆動される土木建築用機械又は船舶荷扱用機械の運転の業務
十三  ゴム、ゴム化合物又は合成樹脂のロール練りの業務
十四  直径が二十五センチメートル以上の丸のこ盤(横切用丸のこ盤及び自動送り装置を有する丸のこ盤その他反ぱつにより労働者が危害を受けるおそれのないものを除く。)又はのこ車の直径が七十五センチメートル以上の帯のこ盤に木材を送給する業務
十五  動力により駆動されるプレス機械の金型又はシヤーの刃部の調整又は掃除の業務
十六  操車場の構内における軌道車両の入換え、連結又は解放の業務
十七  軌道内であって、ずい道内の場所、見通し距離が四百メートル以内の場所又は車両の通行が頻繁な場所において単独で行う業務
十八  蒸気又は圧縮空気により駆動されるプレス機械又は鍛造機械を用いて行う金属加工の業務
十九  動力により駆動されるプレス機械、シヤー等を用いて行う厚さが八ミリメートル以上の鋼板加工の業務
二十  削除
二十一  手押しかんな盤又は単軸面取り盤の取扱いの業務
二十二  岩石又は鉱物の破砕機又は粉砕機に材料を送給する業務
二十三  土砂が崩壊するおそれのある場所又は深さが五メートル以上の地穴における業務
二十四  高さが五メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務
二十五  足場の組立、解体又は変更の業務(地上又は床上における補助作業の業務を除く。)
二十六  胸高直径が三十五センチメートル以上の立木の伐採の業務
二十七  機械集材装置、運材索道等を用いて行う木材の搬出の業務
二十八  火薬、爆薬又は火工品を製造し、又は取り扱う業務で、爆発のおそれのあるもの
二十九  危険物(労働安全衛生法施行令 別表第一に掲げる爆発性の物、発火性の物、酸化性の物、引火性の物又は可燃性のガスをいう。)を製造し、又は取り扱う業務で、爆発、発火又は引火のおそれのあるもの
三十  削除
三十一  圧縮ガス又は液化ガスを製造し、又は用いる業務
三十二  水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、シアン化水素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
三十三  鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、シアン化水素、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
三十四  土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
三十五  ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
三十六  多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
三十七  多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
三十八  異常気圧下における業務
三十九  さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務
四十  強烈な騒音を発する場所における業務
四十一  病原体によって著しく汚染のおそれのある業務
四十二  焼却、清掃又はと殺の業務
四十三  刑事施設(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律 (平成十七年法律第五十号)第十五条第一項 の規定により留置施設に留置する場合における当該留置施設を含む。)又は精神科病院における業務
四十四  酒席に侍する業務
四十五  特殊の遊興的接客業における業務
四十六  前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣が別に定める業務



関連blog記事
2009年3月30日「高校生のアルバイトを雇用する際の注意点を教えて下さい」
https://roumu.com/archives/65070671.html
2007年1月27日「交代制による深夜業延長許可申請書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51943770.html
2007年8月27日「年少者に係る深夜業時間延長許可申請書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54788527.html


参考リンク
神奈川労働局「高校生等を使用する事業主の皆さんへ」
http://www.kana-rou.go.jp/users/kijyun/kokosei.htm


(福間みゆき)


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