9月から都道府県別になる健康保険料はどのように徴収すればよいのですか

 平成21年9月から健康保険料は、都道府県別に設定された保険料率が適用される。そこで大熊社労士は宮田部長にその説明を行うこととした。



宮田部長宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。最近は朝晩涼しくなってきましたね。いよいよ今日は高校野球の決勝ですが、甲子園が終わるともうすぐ秋になりますね。
大熊社労士:
 そうですね。少しずつ秋に近づいている感じがします。私は極度の暑がりなので早く秋が来て欲しいですよ。秋になれば大好きなラグビーも開幕しますしね。さてもうすぐ9月になるので、今日は健康保険についてお話しておきたいと思います。平成20年10月に全国健康保険協会(協会けんぽ)が発足し、中小企業を中心に多くの企業の従業員が加入していた政府管掌健康保険が協会けんぽに引継がれました。
宮田部長:
 はい、協会けんぽになったことは理解しています。
大熊社労士:
 その健康保険料率ですが、現在は全国一律の8.2%が適用されているのですが、9月からは都道府県別の保険料率となり、8.15%から8.26%の間で設定された率となります。
宮田部長:
 そうなんですか。
大熊社労士大熊社労士:
 はい、御社(愛知県)の場合ですと、8.19%となり、若干ですが保険料が下がることになります。しかし、地域によっては保険料率が高くなるところもあるんですよ。例えば、保険料率が一番高い都道府県は北海道の8.26%、反対に一番低いところは長野県の8.15%です。当初の試算の段階では、北海道は9.38%、長野県は7.80%で、最大格差が1.58%になるとされていましたが、都道府県毎の保険料率への円滑な移行を図るため調整が行われ、平成21年度については実際の保険料率と全国平均の保険料率(8.2%)の差が10分の1とされることになりました。
宮田部長:
 激変緩和措置ということですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。協会発足後5年間、つまり平成25年9月までは都道府県間の保険料率の差を小さくした上で、保険料率を設定するとしています。健康保険料の天引きは翌月徴収されていますので、10月になったら給与計算ソフトの設定をお願いしますね。
福島照美福島さん:
 わかりました。都道府県別に設定されるということですが、他県に支店があるような場合は、本社、支店のどちらの県の保険料率が適用されるのですか?
大熊社労士:
 良い質問ですね。給与計算をする際には、どの都道府県の保険料率が適用されるのかを必ず確認することが重要です。原則として、社会保険は事業所(支店、営業所、工場など)単位で適用することになっていますので、社会保険の手続きは、支店や営業所の所在地を管轄する社会保険事務所で事業所ごとに手続きをすることになります。
福島さん:
 ということは同じ会社に勤務していても、勤務地の所在地によって保険料率が異なるケースがあるということですね。
大熊社労士:
 はい、そうですね。本社所在地が名古屋の場合、本社は愛知県の保険料率、大阪支社は大阪府の保険料率が適用されることになります。ただし、支店や営業所で賃金計算や賃金の支払業務が行われていないなど、主な人事管理機能が備わっていなければ、独立した一事業所としてみなされないため、本社で一括して手続きすることができるようになっています。大阪に従業員数名の支社があり、その人事管理等は本社である名古屋で一括しているため、社会保険も名古屋で手続きしているような場合には、大阪支社に勤務している従業員も含め、愛知県の保険料率が適用されることになります。
福島さん:
 分かりました。注意点は何かありますか?
大熊社労士:
 はい。人事管理機能等をどこで行っていて、どこで社会保険の手続を行っているかの確認が重要になります。現在、順次、新しい水色の健康保険証が会社に送付されているようですので、届きましたら、下から2行目の「保険者名称」を確認してみてください。そこに「全国健康保険協会○○支部」とあり、その○○の部分が適用される都道府県名を表しています。併せて、厚生年金保険料率も9月から変更となり、算定基礎届による標準報酬月額の改定も同時に行う必要がありますので、給与計算時には注意が必要ですね。
福島さん:
 給与計算のチェックリストに追加して、ミスしないようにします。
大熊社労士:
 それは良い対応ですね。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は9月から始まる都道府県別の健康保険料率について取り上げてみましたが、社会保険料が大きく変わると、従業員から総務へ問い合わせがよせられることがあるしょう。特に、今回は健康保険率と厚生年金保険料率が変わり、さらに算定基礎届による標準報酬月額の改定も同時に行われることから、従業員から前月と社会保険料が変わったことについて説明を求められることが予想されます。そのため、会社としては給与明細と併せて通知書を交付するなどして、対応しておくことが望まれます。



関連blog記事
2008年10月10日「社会保険料変更に関する通知」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55154483.html
2009年8月17日「協会けんぽ都道府県各支部ホームページでの情報提供が充実」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51605116.html
2009年7月31日「9月から適用となる協会けんぽの都道府県保険料額表のダウンロードできます」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51595736.html
2009年7月14日「7月1日から協会けんぽの様式が変更になりました」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51587611.html
2008年10月20日「協会けんぽになると保険料が変るのですか?」
https://roumu.com/archives/64998747.html


参考リンク
協会けんぽ「都道府県毎の保険料率への移行について」
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/8,12390,131.html
協会けんぽ「都道府県支部のページ 」
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/13.html
協会けんぽ「健康保険証(被保険者証)の交付」
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/11,0,43.html
協会けんぽ「健康保険証の切替えについて(一部変更)」
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/news/detail.1.19423.html


(福間みゆき)


当社ホームページ「労務ドットコム」および「労務ドットコムの名南経営による人事労務管理最新情報」「Wordで使える!就業規則・労務管理書式Blog」にもアクセスをお待ちしています。