プライバシーに配慮して障害者の把握を行うにはどのようにすればよいのでしょうか?

 服部印刷では、来年7月より段階的に障害者雇用納付金制度の対象事業主が拡大されることから、障害者雇用の検討を開始した。そこで、障害の有無を採用段階でどのように把握・確認していったらよいのか、大熊社労士に相談することにした。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。今年も残すことをあと半月となりましたね。
大熊社労士:
 そうですね。本当に毎年、あっという間に1年が過ぎてしまいますよ。
宮田部長宮田部長:
 さて今日は、障害者の把握・確認方法について教えてください。採用にあたって、事前にどのような配慮が求められているのか勉強しておきたいと思います。
大熊社労士:
 分かりました。個人情報保護法の関係から、社員の個人情報については利用目的を明確にした上でその範囲内で使用する必要があります。中でも障害者の方については一層の配慮が求められるため、厚生労働省から「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」というもとが出されています。
宮田部長:
 会社としては、このガイドラインに基づいて、障害者の把握・確認をしていくことが必要なのですね。
大熊社労士:
 はい。会社の方で情報を利用するケースとしては、障害者雇用状況の報告、障害者雇用納付金の申告、障害者雇用調整金または報奨金の申請のためなどが挙げられます。そして、取得した個人情報は基本的には毎年利用することになりますので、そのことも伝えておく必要があります。
宮田部長:
 この個人情報は毎年、会社で確認する必要があるのでしょうか?
大熊社労士:
 確認は必要最小限にすべきですね。場合によっては、障害等級の変更や手帳に有効期限が設けられているケースがありますので、その都度申し出てもらうように手続を示しておくと良いですね。併せて、本人の同意を得るにあたっては、どのような目的で使用するのか、しっかり説明しておくことが望まれます。
福島照美福島さん:
 採用した際に障害者であることを把握していれば、個別にお願いできますが、勤務している者の中から障害者を把握するにはどのようにすれば良いのでしょうか?
大熊社労士:
 はい。ガイトラインで示されている方法としては、例えば社内LANが整備されている場合に掲示板に案内をしたり、社内報で知らせるという方法があります。また、呼びかける際には利用目的を知らせ、「業務命令として、この呼びかけに対する回答を求めているものではないこと」も伝えておくことが望まれます。
宮田部長:
 会社としてはしっかり説明を行い、従業員に協力をお願いするという形ですね。
大熊社労士大熊社労士:
 そのとおりです。また実際に提供された情報の取扱いについても注意が必要であり、障害者であることを明らかにする書類を備え付ける必要があり、本人の死亡・退職または解雇の日から3年間は保存する必要があります。また、障害者雇用状況の報告書等の漏洩防止や情報の安全管理のために必要な措置を講じることが求められています。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回はプライバシーに配慮した障害者の把握について取り上げてみましたが、以下では本人から情報の利用停止の申出があった場合について補足しておきましょう。会社は、本人から障害者雇用状況の報告等のために利用しないよう要求された場合、その求めが適正であると認められるときは、利用を停止する必要があります。具体的には、障害者雇用状況の報告等以外の目的のために利用されているという理由や、情報が偽りその他不正の手段を用いて取得されたという理由、本人の同意無く、情報が第三者提供されているという理由によって、障害者雇用状況の報告等に利用しないように求められた場合が該当します。そのため、会社としては、本人に同意なく、利用目的の範囲を超えて情報を取り扱ってならないことに注意が必要です。



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2009年4月20日「4月に創設された障害者雇用に関するグループ算定特例」
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2009年4月10日「平成22年7月に予定される障害者雇用の除外率10%引き下げの概要」


参考リンク
厚生労働省「障害者雇用対策の概要」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha02/index.html


(福間みゆき)


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