インターシップ受け入れの際の注意点を教えてください

 服部印刷では、学生の採用手段の一つとしてインターシップの導入を検討している。そこで本日は大熊にインターシップを受け入れた際の注意点について、相談することにした。



宮田部長宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。新聞などの報道によれば、平成22年4月入社の内定率がかなりひどい状況になっているようですね。
大熊社労士:
 そうですね。昨年12月1日現在での大卒の就職内定率は全体で73.1%となり、調査が開始された1996年以降、最低となりました。平成23年4月入社組についても会社説明会が始まる時期になりましたが、説明会への申込みが定員に達することも多く、学生さんも大変なようです。
宮田部長:
 ほんの2年前まではまったく逆の状況だったわけですから、可哀相というか、運が悪いというか、いまの大学生は大変ですね。さて、その新卒採用ですが、当社もそれほど人数は採用できませんので、厳選して優秀な学生を採用したいと考えています。そこで当社では今年からインターシップを導入しようという話がでています。そこでお聞きしたいのですが、そもそもインターシップの学生は労働者として扱うことになるのでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 まずはインターシップにおける学生の労働者性を検討する必要があります。この点については通達(平成9年9月18日 基発第636号)が出されており、インターシップが見学や体験的なものであり、使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないとされますが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生との間に使用従属関係が認められる場合には、その学生は労働者に該当すると考えます。
宮田部長:
 それぞれの実態を見た上で判断するということですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。インターシップといっても工場で印刷の仕組みを学ぶものであれば、労働者には該当しませんので、万が一、その場で怪我をしたとしても労災の適用は受けられないということです。
宮田部長:
 会社としてはインターシップの受入れを行う際、どのようなカリキュラムで実施するのか、具体的に決めておく必要がありますね。
大熊社労士:
 それがよいですね。インターシップの中には、大学の教育課程の一環として行われるものがありますが、これについても通達(昭和57年2月19日 基発第121号)が出されており、主なものとして以下のようなポイントが挙げられます。
実習の目的および内容
□教育課程の一環として行われるもの
□大学等から委託先事業場に対し所定の教育実習委託費が支払われていること
□工場実習規程等により実習期間、実習科目、実習の履修状況の把握、表彰・制裁等について定めており、この規則に基づいて実習が行われていること など
実習の方法および管理
□実習は委託先事業場の従業員で、大楽等から実習の指導を委嘱されたものの指導の下で行われていること
□実習生が直接生産活動に従事することはないこと
□実習生の欠勤、遅刻、早退の状況などは、最終的には大学等において把握・管理されていること
実習手当等 
□委託先事業場から一定額の手当が支給されているが、その手当は、実習を労働的なものとしてとらえて支払われているものではなく、実習補助的ないし恩恵的な給付であると考えられること
福島照美福島さん:
 いろいろな通達で細かい基準が定められているのですね。勉強になります。結論としては上記の内容が認められるような場合については、労働者として扱わないということですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。まずはどのような位置づけとしてインターシップを導入するのか、方針を決めてもらうことが重要ですね。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回はインターシップを受け入れる際の注意点について取り上げてみましたが、インターシップの一環で、実質的にアルバイトとして仕事をしてもらう場合について補足しておきましょう。この場合、使用従属関係が認められることから、その学生は労働基準法第9条に定める労働者に該当することになります。そして、会社は学生に対して労働条件を明示する義務があり、アルバイト労働契約書を交付するなどの対応が必要になります。併せて、労働者として扱うことから労災保険も適用となり、万が一、業務中に事故に遭ったような場合には、労働災害として扱うことになりますので、学生に対して労働条件の内容だけでなく、就業に当たっての注意点などについても分かりやすく伝えておくことが望まれます。



関連blog記事
2010年1月19日「調査開始以来最悪の水準となった大卒の就職内定率」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51684970.html
2007年9月19日「インターンシップ誓約書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54815093.html
2007年9月19日「インターンシップ応募シート」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54815077.html
2007年7月9日「インターンシップにはどのような効果がありますか?」
https://roumu.com/archives/64554830.html


参考リンク
財団法人日本国際教育支援協会 学生教育研究災害障害保険
http://www.jees.or.jp/gakkensai/
財団法人大学コンソーシアム京都「インターンシップ導入マニュアル」
http://www.consortium.or.jp/student/intern/manual/


(福間みゆき)


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