6月30日に施行される改正育児介護休業法のポイントを教えて下さい(3)

 前回の訪問時(2010年3月1日のブログ記事「6月30日に施行される改正育児介護休業法のポイントを教えて下さい(2)」)では、改正育児・介護休業法の施行によって所定外労働の免除が新設されることなどを解説した。今回も引続き、大熊社労士は子の看護休暇、介護休暇について解説するため服部印刷を訪問した。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。まもなく新年度が始まりますね。
大熊社労士:
 本当に1年が経つのは早いですね。そういえば今年の春は1名の新入社員の方が入られる予定でしたね。
宮田部長:
 はい。この厳しい就職環境の中での新卒ですから、みんな期待しているところです。
大熊社労士大熊社労士:
 私も期待通りの活躍を願っていますよ。され今日ですが前回の続きで、子の看護休暇と介護休暇についてお話したいと思います。まず子の看護休暇ですが、この制度は従来から設けられている制度であり、法改正前においては、病気やケガをした小学校就学前の子の看護のために年5日の休暇を取得できるとされています。
宮田部長:
 これが今回の改正でどのように変わるのでしょうか?
大熊社労士:
 はい。この取得日数が拡充されます。小学校就学前の子が1人であれば現行と同様に年5日ですが、対象となる子が2人以上の場合には年10日となります。
福島さん:
 対象となる子の人数によって、日数が5日もしくは10日になるということですね。2人養育している場合で1人の子の看護のために、10日の休暇を利用することもできるのでしょうか?
大熊社労士:
 はい、子1人につき5日という設定ではありませんので、10日を取得することも可能です。
宮田部長宮田部長:
 なるほど。休暇は本来、日単位で与えることが求められていますが、従業員から時間単位や半日単位で申請があった場合は、申請どおり与えても法的に問題ないのでしょうか?
大熊社労士:
 これについても問題ありません。具体的には指針第2 2(3)の中に、時間単位や半日単位での休暇取得を認める等制度の弾力的な利用ができるように配慮してくださいと記載されています。ちなみに、この休暇の取得については改正前は「負傷し、又は疾病にかかったその子の世話」を行うための休暇とされていましたが、改正後は「子に予防接種または健康診断を受けさせること」も取得事由として追加されています。
福島さん:
 なるほど、となると昨年以来大きな問題となったインフルエンザの予防接種も休暇の取得対象として認められるということですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。子の看護休暇は、企業規模に関わらず今年の6月30日から施行されますので、早めに規程の修正などをしておく必要がありますね。これに対し、次にお話する介護休暇については、労働者が100人以下の企業の場合、3年間の猶予があります。
福島照美福島さん:
 当社の従業員数は100人以下ですから、子の看護休暇の改正対応が必要になるけれども、介護休暇はまだ適用されないということですね。
大熊社労士:
 そのとおりですね。介護休暇について解説しておきますと、子の看護休暇と同じように、要介護状態の対象労働者が1人であれば年5日、2人以上であれば10日の介護休暇を取得できるようになります。また、労使協定を締結することで、介護休暇を取得できる労働者から当該事業主に引続き雇用された期間が6ヶ月に満たない労働者と1週間の所定労働日数が2日以下の労働者を適用除外とすることが可能です。規程の修正と併せて、労使協定の方も見直しておく必要がありますので、注意をお願いしますね。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は子の看護休暇と介護休暇をとり上げましたが、ここで今回の改正育児介護休業法の施行により、創設された企業名公表制度と過料について補足しておきましょう。まず、企業名公表制度とは、育児・介護休業法の規定に違反している事業主に対して、厚生労働省が法違反の是正についての勧告をした場合に、その勧告を受けた事業主がこれに従わなかったときにその旨を公表することができるという制度のことを言います。過料については、厚生労働省およびその委託を受けた都道府県労働局長が育児介護休業法の施行に関して必要があるときに事業主に対して報告を求め、その報告の求めに対して報告しなかったり、虚偽の報告をした者について20万円以下の過料に処すとした制度のことです。ちなみにこれらの制度は平成21年9月30日より施行されていますので、指摘を受けた場合は早急に対応することが求められます。


[関連告示]
子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成21年厚生労働省告示第509号)
第2 事業主が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための指針となるべき事項
2 法第16条の2の規定による子の看護休暇及び法第16条の5の規定による介護休暇に関する事項
(3) 労働者の子の症状、要介護状態にある対象家族の介護の状況、労働者の勤務の状況等が様々であることに対応し、時間単位又は半日単位での休暇の取得を認めること等制度の弾力的な利用が可能となるように配慮するものとすること。



関連blog記事
2010年3月1日「6月30日に施行される改正育児介護休業法のポイントを教えて下さい(2)」
https://roumu.com/archives/65220912.html
2010年2月1日「平成22年6月30日に施行される改正育児介護休業法のポイントを教えて下さい(1)」
https://roumu.com/archives/65199603.html
2010年3月18日「4月1日に施行される育児・介護休業法に基づく紛争解決制度」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51708408.html
2010年3月8日「4月14日に名古屋で改正育児・介護休業法対策セミナーを開催」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51706017.html
2010年3月5日「厚生労働省から「改正育児・介護休業法に関するQ&A」が公開」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51703762.html
2010年2月19日「改正法対応の育児・介護休業規程 ダウンロードを開始」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51698802.html
2010年2月5日「厚生労働省より公開された改正育児・介護休業等に関する規則の規定例」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51692789.html
2010年1月31日「厚労省担当課長の談話に見る改正育児・介護休業法の背景・目的」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51690787.html
2010年1月22日「「[新改正育児介護休業法]所定外労働の免除の義務化が除外できるケースと注意点(2)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51686226.html
2010年1月18日「[新改正育児介護休業法]1歳までの再度の育児休業申し出(1)
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51683890.html


参考リンク
厚生労働省「育児介護休業法の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/tp0701-1.html
21世紀職業財団「両立支援のひろば」
http://www.ryouritsushien.jp/


(福間みゆき)


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