電子申請をする際の電子証明書はどのように取得すればいいのでしょうか?
前回の訪問では、先日スタートした離職票の電子申請手続きの概要について質問をした福島さん(2011年12月5日のブログ記事「離職票の電子申請がスタートしたと聞きました」を参照)。本日はそれに引き続き、電子申請を行う上での準備について質問することにした。
大熊社労士:
こんにちは、福島さん。今日は電子申請のことでしたよね。
福島さん:
こんにちは。そうです、仮に当社で電子申請を行うには何から始めればよいのかと思いまして。
大熊社労士:
電子申請は、時間や場所を問わずにでき、また官公署に出向く必要がないということがメリットとされていますが、事前に準備しなければならないことがあります。まずは電子証明書の準備が必要になりますね。
宮田部長:
いつも届出する書類に社長の印鑑を押していますが、あの代わりとなるものということですよね。
大熊社労士:
はい、その通りです。この電子証明書は認証局と呼ばれる電子証明書を発行する機関で手続きをする必要があります。法務省の「商業登記に基礎を置く電子認証制度(電子認証登記所)」など、いくつかの認証局があります。この認証局で電子証明書の取得手続きをするのですが、取得のためには諸費用がかかりますし、有効期限もあるので認証局による違いを確認してから取得してくださいね。ちなみに今日ご説明する内容は、こちらのパンフレットにもありますよ。
宮田部長:
ありがとうございます。それで諸費用は大体どれくらいを見ておけばいいのですか?
大熊社労士:
そうですね、認証局によって様々ですが、年間1~2万円程度となります。法務省では、電子証明書の証明期間が3ヶ月のときは2,500円、3か月を超えるときはその超える期間3ヶ月当たり1,800円を加算した額とされていますね。
服部社長:
福島さんに、毎回届出してもらったり、郵送で手続きをしてもらったりすることを比べるとこの費用であれば、安いのかも知れませんね。
大熊社労士:
そうですね。届出に出向くには時間も交通費もかかりますからね。さて、先ほどの電子認証登記所で説明すると、取得のために専用ソフトウェアをダウンロードし、インストールをする必要があります。これに会社の名前や申請者の氏名などを入力し、電子証明書の取得に必要なファイルを作成するのです。この際に、電子証明書発行申請書がPDFで作成され印刷できますので、事業主の印鑑を押すことになります。
宮田部長:
電子証明書に取得に必要なファイルを作成するためのソフトウェア…、先は長そうですね。
大熊社労士:
はい、確かにそうですね(苦笑)。作成したファイルについてはCD-RやFDに入れて、電子証明書発行申請書と共に提出します。この際に法務局印鑑カードを登記所で提示する必要があります。登記所で電子証明書の発行手続が完了すると、電子証明書発行確認票が交付されるので、これにより先ほどの専用ソフトウェアから電子証明書をダウンロードすることになります。
宮田部長:
電子申請は便利だと思うのですが、電子証明書の取得だけで、かなりややこしいですね。私には到底無理だと感じてしまいました。
大熊社労士:
確かにおっしゃる通りです。パソコンの苦手な人や細かい手続きは面倒という人にとっては、この電子証明書の取得というものが電子申請の大きなハードルになっていると思います。インターネットを介しての手続きですので、やはり情報漏えい等を防ぐためには必要な手続きなのですけどね。
服部社長:
大熊さん、ここまで聞いておいて申し訳ないのですが、もっと簡単な手続きというのはないものでしょうか?この前の離職票では署名が省略できるというようなお話をしていらっしゃったように記憶していますが。
大熊社労士:
はい、実は社会保険労務士が事業主に代わって書類を電子申請で行うときは、事業主の電子証明書は不要ということになっています。当然ながら、まったく何もいらないとなると問題ですので、証明書に押印をしていただくという必要はあるのですけどね。
宮田部長:
へぇ~、そういうのがあるんですね、うちでは、そちらを検討したいですね。ね、福島さん?
福島さん:
そうですね、一度、そのお話も伺ってもよろしいですか?
大熊社労士:
もちろん構いませんよ。じゃ、次回は社会保険労務士が手続きを代行する際の方法についてお話しましょうか。
服部社長:
申し訳ありませんですが、よろしくお願いします。福島さんには、もっといろいろなことをお願いしたいと思っていますからね。
大熊社労士:
はい、了解しました。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回は事業所が電子申請をする際に、まずは取得しなければならない電子証明書について説明しました。電子認証登記所では社会保険・労働保険関係手続であるe-Govのほか、商業・法人登記、不動産登記、動産・債権譲渡登記など各種登記のオンライン申請ができ、また、e-Taxと呼ばれている国税電子申告・納税システムにも利用できる電子証明書が取得できます。多くの手続きに利用できるため、便利ではありますが、取得までに手間がかかることはネックになっているでしょう。
関連blog記事
2011年12月5日「離職票の電子申請がスタートしたと聞きました」
https://roumu.com/archives/65530652.html
2011年11月29日「離職票の電子申請スタートに伴い、電子化された雇用保険の各種返戻書類」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51892783.html
2011年11月22日「電子申請で離職票手続きを行なう際の離職者本人の署名取扱い」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51890538.html
2011年11月14日「電子申請で手続きを行なった離職票手続きは電子公文書による発行に」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51888262.html
2011年10月17日「11月28日から予定される離職票の電子申請交付とその申請方法」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51880942.html
2011年9月20日「ネットから印刷して利用できるようになった雇用保険の帳票類」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51874539.html
2011年6月29日「離職票発行の電子申請は平成23年11月28日から受付開始」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51856892.html
参考リンク
法務省「商業登記に基づく電子認証制度」
http://www.moj.go.jp/ONLINE/CERTIFICATION/index.html
厚生労働省「e-gov事前準備マニュアル」
http://www.mhlw.go.jp/sinsei/tetuzuki/e-gov/dl/jizen01.pdf
(宮武貴美)
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