社会保険算定基礎の年間平均とはどのようなものですか?

 大熊が服部印刷を訪問すると、宮田部長が待ち構えたように出てきた。何か問題が起きているのかと心配になったが、どうやら算定基礎に関して、大詰めのところで何かに気付いたようである。


[社会保険算定基礎特集全3回:前回の記事はこちら]
https://roumu.com/archives/65565513.html


宮田部長宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。前回のアドバイスを元に、算定基礎届の内容をチェックしてみたのですが、気になったことがあるのでお尋ねしようと思っていたところでした。
大熊社労士:
 宮田部長が待ち構えていたように見えたので、焦りましたよ(笑)。それで、どのようなことが気になられたのですか?
宮田部長:
 はい、標準報酬月額が大幅に変更になるメンバーがいて、どうしてか理由を探っていたのですが、よく分からないのです。特に大幅に昇給したわけでもないのですが…。
大熊社労士:
 そうですか。従前の標準報酬月額と今回の標準報酬月額を比較されていたわけですね。素晴らしい行動ですね。
宮田部長:
 えへへ(笑)。遂に大熊先生に褒められる日が来たか。嬉しいなぁ。この歳になると褒められることなんて少ないからなぁ。えへへ。
大熊社労士:
 あはは。そうですか。服部社長に報告しておきますよ、宮田部長頑張っていますよって(笑)。さて、先ほどの問題に戻りましょう。標準報酬月額が大幅に変更になったのは、どなたですか?
宮田部長:
 何名かいるのですが、印刷機械のメンテナンスを担当している部門のメンバーが主ですね。このメンバーは4月・5月が繁忙期になるんですよね。
大熊社労士:
 なるほど。でも、なぜそのメンバーは4月・5月が繁忙期となるのですか?
宮田部長:
 当社はいくつかの繁忙期があるのですが、2月から3月にかけては、新年度が始まるということで、教科書やノートなどの印刷需要が増えるわけですよ。それで製造の部門は残業が多くなります。その結果、機械を稼働する時間が長くなるわけです。
大熊社労士:
 なるほど。
宮田部長:
 機械をメンテナンスする部門はそれで忙しくなるのですが、平日の稼働時間が長くなると製造部門の手伝いをすることも多くなり、更にはメンテナンスを残業や休日に行う必要が出てくるのです。しかも、製造が落ち着き始めたところで集中的にメンテナンスを行うものだから、4月・5月まで繁忙がずれ込むということもあり…。
大熊社労士:
 なるほど。いまお聞きする限りでは、今年に限って忙しいわけではなく、毎年その時期には忙しくなるようですね。
宮田部長:
 そうなんです。季節的な要因とはいえ、4月から6月に算定基礎をすると、このメンバーは1年間、保険料が高くなってしまうのですよねぇ。
大熊社労士大熊社労士:
 はい、おっしゃる通りですね。これは以前から問題になっていました。そして、昨年からその問題の是正に向け、特例が設けられ、取り扱いが変更になったのです。宮田部長が比較の際に、昨年の標準報酬月額と比較されていたかと思いますが、私の想像では福島さんは昨年、この特例を利用されて手続きをされていたのではないかと思います。
宮田部長:
 えぇ!恐るべし、福島さん!ですね。彼女の能力は非常に高いと思っていたのですが、そのような細かなところまで配慮していたとは!!!
大熊社労士:
 いやいや、今回、宮田部長が気づかれたことも十分すごいことだと思いますよ。この内容は実は前回の最後にお話しをした「年間平均」のことなんですけどね。
宮田部長:
 そういえば前回の最後にちらっと仰っていましたね。それで、なんですか、その「年間平均」というものは。
lb08134-l大熊社労士:
 はい、こちらの「算定基礎届等の提出について」という案内を見ていただけませんか。
「算定基礎届等の提出について」はこちらでダウンロードできます
東京都版
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51203039.html
東京都以外版
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51203040.html
宮田部長:
 あぁ、これ、算定基礎届と一緒に入っていた紙ですね。
大熊社労士:
 はい、その通りです。これの4枚目の先頭をご覧ください。「「当年の4、5、6月の3か月間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額」と「前年の7月から当年の6月までの間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額(支払基礎日数が17日未満の月を除く。)」の間に2等級以上の差を生じた場合であって、当該差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合」とありますよね。おそらく今回のケースではこれに該当するかと思われます。
宮田部長:
 ん?どういうことですか?
大熊社労士:
 はい、今回のケースのように、毎年この算定基礎の時期が繁忙である場合には、4月から6月の給与の平均額ではなく、1年間の給与の平均額で計算しましょう(年間平均)、というものです。
宮田部長:
 なるほど。そうでないと、対象の人だけ、極端に標準報酬月額が高くなってしまいますもんね。こりゃ、うまいこと考えたな。
大熊社労士:
 なお、このケースは繁忙のみではなく、算定基礎の時期が閑散であるものも対象になりますからね。それで、この対象者ですが先ほど読み上げた部分も含め3点のポイントがあります。
1.4月から6月の給与の平均と1年間(前年7月から当年6月)の給与の平均で算出した標準報酬月額に2等級以上の差があること
2.この差が業務の性質上例年発生することが見込まれること
3.年間平均で算出した標準報酬月額で定時決定することについて本人が同意していること
宮田部長:
 なるほど。勝手に行うのではなく、本人も同意していることが求められるのですね。ところで、その同意はどのようにして確認することになるのですか?
大熊社労士:
 いい質問ですね。これには専用の様式があります。こちらの「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等」の一番下に被保険者本人が署名した上で算定基礎届と一緒に提出することになります。また、こちらの「年間報酬の平均で算定することの申立書」も添付することになりますよ。
宮田部長:
 あぁ、そういわれると昨年、福島さんが説明して、署名をもらってくるとか言っていたことを思い出しました。
大熊社労士:
 標準報酬月額が下がるということは、将来の本人の年金額にも影響を及ぼすことになりますからね。プラスして、算定基礎届の備考欄には「年間平均」と記載することになりますので、ここも注意をしておいてくださいね。

宮田部長:
 わかりました!さっそく、4月から6月にかけて残業や休日出勤が多くなるメンバーをピックアップして確認することにしますね。来週の火曜日の提出期限には間に合うようにすぐに動きます!ありがとうございました!

>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今日は昨年より始まった算定基礎の年間平均について取り上げました。この年間平均は「定時決定における保険者算定」というものです。この年間平均のほかに、報酬の支払対象となった期間の途中に資格取得した人の扱い等、いくつかの特例措置がありますので、「算定基礎届等の提出について」を確認して処理を進めましょう。


関連blog記事
2012年6月25日「社会保険の算定基礎でパートタイマーはどのように扱われますか?」
https://roumu.com/archives/65565513.html
2012年6月18日「社会保険の定時決定(算定基礎)とはどのようなものですか?」
https://roumu.com/archives/65564446.html
2012年6月11日「支払対象期間の途中で資格取得した場合の社会保険算定基礎取り扱い」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51935263.html
2012年6月6日「日本年金機構 早くも社会保険算定基礎届の情報ページを公開」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51934468.html
2012年2月13日「平成24年4月1日から厚生労働大臣が定める現物給与の価格が改定されます。」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51174486.html
2011年6月15日「年間報酬の平均で算定することの申立書(社保定時決定)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55474497.html
2011年6月13日「今年度より適用される社会保険算定基礎の新たな保険者算定のQ&Aが公開」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51853414.html
2011年4月12日「実務にかなり大きな影響が予想される社会保険算定基礎の新たな保険者算定の要件」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51839061.html

参考リンク
日本年金機構「算定基礎届の提出」
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=2053

(宮武貴美)

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