当社でも障害者を雇用する必要がありますか?

 今日は服部印刷の定期訪問日。大熊が会社の玄関をくぐったところ、服部社長が待ち構えていた。


服部社長:
 大熊さん、いつもお世話になっております。今日は私の方からお聞きしたいことがあり、お待ちしていました。
大熊社労士:
 そうでしたか、どのようなことですか?
服部社長服部社長:
 先日、業界団体の会合に出かけたら、障害者の雇用に苦労しているというような話を耳にしましてね、当社にも何か関係があるならば、気にしないといけないと思いまして。
宮田部長:
 そういえば、以前の障害者雇用促進法の改正の話をしていただきましたよね。そのことも関係あるのですかねぇ?
関連blog記事
2009年6月29日「平成21年4月に改正された障害者雇用促進法とはどのような内容ですか」
https://roumu.com/archives/65111013.html
大熊社労士:
 その改正も確かに関係あるのかもしれませんが、今回の件はおそらく障害者の法定雇用率の話ではないかと想像します。実は、先月の中旬ごろ、法改正がありまして、この法定雇用率が引き上げられることになりました。
宮田部長:
 消費税も社会保険料率も引き上げ、そしてこれも引き上げ、もう何でもかんでも引き上げ続きですねぇ。
大熊社労士:
 そうですね。それではまずは法定雇用率とはなにかというところから説明しましょう。一言で言えば、「企業に一定の割合の障害者を雇ってください」ということなのですが、その根拠が法律にあるのです。
宮田部長:
 ほぉ。
大熊社労士大熊社労士:
 それが障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)という法律なのですが、この法律ではすべての事業主に対し、雇用する労働者に対し、一定割合の身体障害者・知的障害者を雇用することを義務付けています。この割合を法定雇用率と言い、国および地方公共団体並びに特殊法人・都道府県等の教育委員会・民間企業ごとにその率が定められています。
服部社長:
 あぁ、確かに耳にしたことがありますね。
大熊社労士:
 今回話題になっているのは、その率について、平成25年4月1日から引き上げになることが決定されたからだと思うのですが、御社を含めた民間企業では現状の1.8%から2.0%になります。ちなみに国および地方公共団体並びに特殊法人については現状の2.1%から2.3%に、都道府県等の教育委員会については現状の2.0%から2.2%に変更になります。これをまとめると以下のようになりますね。
□民間企業 1.8%→2.0%
□国および地方公共団体並びに特殊法 2.1%→2.3%
□都道府県等の教育委員会 2.0%→2.2%

宮田部長宮田部長:
 へぇ。となると、当社は社員数50名だから1名を雇用する義務があるということですね!
大熊社労士:
 そうですね。大雑把にいうとそうなります。もう少し細かい点をお話をすると、法定雇用率については常用雇用労働者数に対し、乗じることになっているのですが、この常用雇用労働者数のカウントにおいては、正社員のような方のほか、週の所定労働時間20時間以上30時間未満のようなにパートタイマーついてもカウントすることになっています。
宮田部長:
 そうなんですか、となると、当社でも人数が増えますね。
大熊社労士:
 ただし、先ほどのようなパートタイマーの方は、0.5人でカウントすることになっています。さらには、週の所定労働時間20時間以上30時間未満で働く障害者についても原則として0.5人としてカウントされることになっています。
宮田部長:
 なんか、それ以前聞いたことがありますね。
大熊社労士:
 そうですね、確かに以前にも障害者雇用納付金制度のことも含めてお話しましたよね。雇用障害者数が法定雇用率に満たない事業主が不足する障害者数分の一定の納付金を納めるというものですが、いまは免除されている常時使用する労働者数101人以上200人以下の企業も平成27年4月からは、この納付金制度の対象になります。
服部社長:
 先日、私が聞いた話はこの両方のようですね。どうも常用雇用労働者数が200人を少し超えている企業のようでして、納付金の対象になったという話と、人数が増えるという話をしていましたからね。
大熊社労士:
 なるほど。常時雇用労働者数が201人以上300人以下の企業では、平成22年7月から納付金制度の対象となり、さらには今回の法定雇用率の引き上げですので、お話をされていた企業では、もしかしたら、納付金を納めた途端に3人から4人雇用しなければならなくなった企業なのかもしれませんね。
服部社長:
 そうですね。当社ではまだ納付金対象外の規模ですが、社会貢献の一つとして、障害者雇用も考えていこうと思います。
大熊社労士:
 障害者雇用の促進は政府としても今後の大きな課題としてされていることでもありますので、是非、少しずつでも採用活動を目指していただければと思います。

>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。障害者雇用は現在の職安行政においてももっとも大きな課題の一つとなっていることから、今後、様々な規制強化が予定されています。また企業側においても実際に障害者を雇用しようとする際には様々なクリアすべき課題がありますので、早い段階からその雇用のあり方について検討を進めておきたいものです。


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2010年07月14日「[ワンポイント講座]短時間労働者数が変動するケースにおける障害者法定雇用人数のカウント方法」
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2010年7月6日「改正障害者雇用促進法の施行に伴い、7月1日より障害者助成金の取扱いが一部変更に」
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2010年5月19日「増加する障害者の雇用と不況で増加した解雇」
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2010年4月23日「障害者雇用のポイントが非常によくまとまった小冊子「はじめからわかる障害者雇用~事業主のためのQ&A集」」
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2009年5月13日「[改正障害者法]分割支給が可能となった障害者雇用調整金(最終回)」
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2009年5月12日「[改正障害者法]事業協同組合等算定特例の創設(第5回)」
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2009年5月11日「[改正障害者法]常用雇用労働者数のカウントへの短時間労働者の追加(第4回)」
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2009年5月8日「[改正障害者法]障害者雇用率算定における短時間労働者の算入(第3回)」
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2009年5月7日「[改正障害者法]適用から5年間に限り行われる障害者雇用納付金制度の特例(第2回)」
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2009年4月24日「[改正障害者法]常時雇用労働者101人以上の企業にまで拡大される障害者雇用納付金制度」
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(宮武貴美)

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