有期契約労働者の無期転換ルールとはどのようなものですか?
大熊から改正労働契約法の解説を受け始めた服部印刷。今回は改正労働契約法の目玉となる有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換ルールについて聞くことになっていた。
[改正労働契約法特集全3回:前回の記事はこちら]
https://roumu.com/archives/65573476.html
宮田部長:
こんにちは。大熊先生、今日は労働契約法の続きでしたよね。
大熊社労士:
そうですね。まずは今回の労働契約法改正のポイントを再確認しておきましょうか。改正点をまとめると以下の3つになります。
有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
有期労働契約の更新等(「雇止め法理」の法定化)
期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
宮田部長:
はい。そして、このうちを前回、解説していただいたんでしたよね。
大熊社労士:
そうですね。それでは今日は今回の改正労働契約法の目玉であるについて説明しましょう。これは有期労働契約が一定の条件によって、無期労働契約に転換してしまうという制度です。
宮田部長:
え~、前回もお話しましたが、当社のパートさんは契約書をきちんと交わしていますよ。まぁ、継続的に雇用の期待がされるような言葉を言うと、雇止めできないという話は前回お聞きしましたが…。
大熊社労士:
はい、雇止めできるかどうかは別として、有期の契約は有期です。現在の法律であれば、その有期が無期に変わるようなことはありません。ただ、今回のの改正ではその有期の契約が5年を超えて、反復更新された場合には、その契約が期間の定めのない契約、つまり無期の契約に転換するというものなのです。もちろん勝手にすり替わるわけではなく、労働者の申込みがあった場合という条件でですけどね。これを「無期転換ルール」と呼んだりしています。
服部社長:
いくら、雇止め法理が法定化されたと言っても、有期労働契約である以上は雇止めされるのではないかという不安が働いている人には付きまとう。だからそこそこ長く有期で働いているのであれば、無期労働契約に転換させてしまえということですか。
大熊社労士:
はい、おっしゃる通りです。それに加え、有期であることによって年次有給休暇を取得しづらいというようなケースもあるようですから、有期労働契約であることが労働者として正当な権利の行使を妨げていると考えられているのです。
宮田部長:
うちのパートさんは年次有給休暇もちゃんと取得しているのになぁ。
服部社長:
まぁ、年次有給休暇は計画的に取得してくれて、それがパートさんたちの働きやすさに繋がり、能力を発揮してくれるのであれば、構わないと私は思っていますよ。それで大熊さん、5年ということでしたが、当社では春先の繁忙期だけ、最長でも3ヶ月の期間限定で手伝いに来てくれるような人もいます。。毎年同じ人が来てくれると仕事を教える手間もなく助かるので、こちらから電話で「今年もお願いできないか」なんて連絡してるのですが、こういう人も5年になると、該当してしまうのですか?
大熊社労士:
いいえ、その場合は大丈夫ですね。今回の法律においてクーリング期間というものが設けられています。この5年間は通算の期間で考えることになるのですが、契約更新をして5年ちょうど勤務して退職した人がいると仮定します。この人を再度雇いたいと思ったとき、5年の終了から一定の期間が空いていれば無期転換ルールが適用されないという例外が定められています。
宮田部長:
なるほど、以前の有期労働契約期間をリセットしてくれる期間ですね!
大熊社労士:
はい。このクーリング期間は原則として6ヶ月とされています(※若干の例外あり)。法が想定しているのは、服部社長の事例ではないとは思いますが、いずれにしても毎年一定の忙しい時期に3ヶ月程度働くようなケースでは、毎年、労働契約期間はリセットされるようなイメージなので、今回のには当てはまらないですね。
服部社長:
それは安心しました。ついでにもう一つ確認してもいいですか?無期転換ルールが適用されるときの労働条件はどうなるのですか?正社員のような条件に引き上げられるわけではありませんよね?
大熊社労士:
はい、この無期転換ルールは期間の定めのみを変更するものですので、原則として労働条件は有期労働契約の際の内容を引き継ぐとされます。更には、別に定めておくことで、労働条件を変更することもできるとされています。つまり、無期転換する人に適用する就業規則を定めておくことや個別の労働契約で調整することができるのです。
服部社長:
なるほど。これはルールの策定も検討する必要がありそうですね。
大熊社労士:
はい、おっしゃる通りですね。
宮田
部長:
ただ、社長、うちのパートさんのほとんどはすでに5年以上働いていますよ。いまさらルールを作ってもみんな無期の契約だ~、なんていう可能性もありますよ。
大熊社労士:
宮田部長、また鋭いところを突きましたね。実は、通算して考える5年の期間ですが、施行日後の日を契約期間の初日とする有期労働契約について適用することとなっていて、更には、施行日前の日が初日である有期労働契約の契約期間は、通算の契約期間に算入されません。ということで、御社で長く働いているパートさんも直ちに適用になるわけではありませんよ。
宮田部長:
ほぉ。それでは今後、雇用契約の管理をしっかりしていく必要があるのですね。ありがとうございます。
大熊社労士:
はい、それでは次回は最後に残ったをテーマに取り上げましょうね。ありがとうございました。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回取り上げた、そしての施行日はまだ決定していません。改正労働契約法は平成24年8月10日に公布されましたが、公布日から起算して1年を超えない範囲内で決定されることになっていますので、後日明らかになるであろう施行日もきちんと確認しておきましょう。さて、この無期転換ルールですが、いつまで有効かという点も問題となります。この点に関しては、有期労働契約期間中に通算の契約期間が5年を超えることとなる有期労働契約の初日から満了となる日まで申し込みできるとされています。そして、通算の契約期間が5年を超えた場合で。更に更新した場合にも引き続き申し込みできることになっています。特に1年間で権利がなくなるというわけではありません。なお、服部印刷では有期契約労働者をパートタイマーとして話を進めていますが、契約社員であっても同様で、有期労働契約であれば該当する話ですので、必要に応じ読み替えてください。
岩出誠弁護士による法改正対策セミナーを大阪で開催
労働者派遣法や労働契約法、高年齢者法などの改正のポイントと実務上の対策について取り上げるセミナーを開催します。
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講師:岩出誠弁護士(ロア・ユナイテッド法律事務所代表パートナー)
[日時および会場]
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平成24年9月14日(金)午後1時30分~午後4時30分
マイドームおおさか 第1・2会議室(堺筋本町)
[詳細およびお申込み]
本セミナーの詳細およびお申し込みは以下よりお願いします。なお、LCG会員のみなさんは専用ホームページ「MyKomon」よりお申し込みをお願いします。
http://www.lcgjapan.com/sr/seminar/1209sr3rd.html
関連blog記事
2012年8月27日「改正労働契約法が成立したと聞きました」
https://roumu.com/archives/65573476.html
2012年8月16日「改正労働契約法に関する通達が発出されました」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51947946.html
2012年8月10日「改正労働契約法が公布 改正労働者派遣法は10月1日施行で決定」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51946955.html
参考リンク
厚生労働省「労働契約法が改正されました~有期労働契約の新しいルールができました~」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002hc65.html
厚生労働省「改正労働契約法について」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html
(宮武貴美)
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