高年齢雇用継続給付の手続きはどうやって行いますか?

 今回、服部印刷で高年齢雇用継続給付の手続きを説明することになっていた大熊社労士。車に向かって服部印刷に向かった。


大熊社労士大熊社労士:
 こんにちは。もう今年も残りわずかとなりましたね。今日は高年齢雇用継続基本給付金(以下、「給付金」という)の申請手続きについてお話するのでしたよね。
宮田部長:
 はい、福島さんには手続き漏れのないように、と聞いただけでしたので、なんとなく手続きしてきちゃったんですよね。
大熊社労士:
 なるほど、それでは基本的な部分からお話しましょうね。まず給付金を受給するためには、60歳のときの賃金をハローワークに登録する必要があります。これが60歳以降の給付金の計算基礎となる賃金になります。多くのケースではこのときに併せて給付金が受給できるかの資格確認を行います。例えば、被保険者期間が5年未満の被保険者は給付金の対象とはなりませんが、このことが受給資格がないとこのタイミングで判明します。
宮田部長:
 なるほど。60歳になった従業員に対し、2種類の申請書を出していたのはその目的があったのですね。
大熊社労士:
 はい、その通りです。ちなみに、60歳になったときに被保険者期間が5年未満であっても、その後、例えば、61歳のときに被保険者期間が5年になったのであれば、そのときに受給資格が発生することになっています。
宮田部長:
 へぇ、うちの会社ではあまり対象者のイメージがつきませんが、忘れないようにしておきますね。
大熊社労士:
 さて、賃金を登録と受給資格の確認をすると、このような書類をハローワークから受け取ることになります。受給資格の有無と次の支給申請月等が書かれていますね。
https://www.hellowork.go.jp/dbps_data/_material_/localhost/doc/kourei_kyufu.pdf

高年齢雇用継続給付の手続きはどうやって行いますか?

宮田部長:
 なるほど、見たことありますね。
大熊社労士:
 そうですね。そして、原則として2ヶ月に1度、事業所管轄のハローワークに申請手続きを行うことになっています。申請書には前2ヶ月に支払った賃金を記載し、賃金台帳等の写しを添付していますよね。
宮田部長宮田部長:
 はい、ここ数回は私が持っていっています。確か、申請した後にもらえる書類に、みなさんに2ヶ月に1回、署名してもらうんですよね。
大熊社労士:
 そうですね。ちなみにこの2ヶ月に1度の申請月は会社ごとにハローワークが指定しているんですよ。
服部社長:
 なるほど、2ヶ月に1回であれば、総務の手間は少なくなりそうですね。逆を返すと申請を忘れそうになる。だから、福島さんは宮田部長にしっかり申請するように伝えたのですね。さすが、ある意味ポイントを押さえた引継です(笑)。
宮田部長:
 確かにそうですね、って、社長、その言い草はないじゃないですか!(笑)
大熊社労士:
 おっしゃる通りだと思います(笑)。実はこの申請は前回もお話したように、期限厳守になっています。支給申請月中に行わないと原則として支給されないんですよね。ただし、初回の申請については、最初に支給を受けようとする支給月から起算して4ヶ月以内に行うことができることになっています。
服部社長:
 なるほど。ひとつここで確認してもいいですか?60歳以降、すぐに賃金が下がらない従業員もいずれ下がれば給付金の対象になるのですか?
大熊社労士:
 はい、受給資格がある被保険者でも60歳以降の賃金が75%以下にならない場合には、申請しても、当然ながら不支給になりますし、申請の必要もありません。75%未満になった場合に、申請をすることでそこから対象になりますよ。
服部社長:
 ということは、ひとまず60歳になったときには必ず登録しておいたほうがいいということですね。
大熊社労士:
 おっしゃる通りです。ちなみに、給付金には限度額が設けられており、各月の賃金が343,396円(平成24年)を超える場合には支給されないことになっています。そして、この限度額は毎年8月1日に変更されることになっていますよ。
宮田部長:
 大熊先生、給付金ですが、支給されるのは申請をしてからどれくらいかかるのですか?
大熊社労士:
 そうですね、概ね1週間程度と言われています。申請手続きをすると、支給額等の通知書がハローワークから渡されますから、これをご本人に渡して、手続きが終了したことをアナウンスするといいでしょうね。
宮田部長:
 そうですね。これからは給付金の意味もちゃんと伝えておきたいと思います。
服部社長服部社長:
 大熊さん、ふと思ったのですが、この給付金、良く考えたら、従業員本人に支給されるわけじゃないですか。それでも会社が手続きを行う必要
があるのですか?あ、当社はもちろん、従業員のためにやることに問題はないんですけどね、疑問に感じたものですから。
大熊社労士:
 はい、手続きですが、実は被保険者本人が行うことが原則になっています。ただし、事業主が証明する欄が有ったりしますし、やはり従業員のみなさん自身で手続きをすることは非常に負担になりますので、できるだけ、事業主が行うようハローワークは推進しています。ちなみに、御社ではすでに締結済みですが、事業主が行う場合には、支給申請書を提出することについて労使協定を締結することが求められています。
服部社長:
 そういう考え方が原則なのですね。よくわかりました。きちんと管理し、継続的に会社が手続きをするようにしましょう。宮田部長、よろしく。
宮田部長:
 はい、きちんと管理をしていきますね。

>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今日は給付金の手続き方法について説明しました。この給付金の手続きですが、電子申請で行うことも可能となっています。電子申請で行う場合には、被保険者から「記載内容に関する確認書/提出代行に関する同意書」を最初に取り付けて手続きを行うことになります。申請内容は通知する必要がありますが、申請書類そのものに署名することはありませんので、紙の書類のやりとりがなくなることで、利便性が上がるといえるのかもしれません。


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2012年12月10日「雇用保険の高年齢雇用継続給付金は短時間の被保険者でも受給できますか?」
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2012年10月9日「改正高年齢者法の継続雇用しない労働者の範囲等に関する指針案概要が発表に」
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2012年9月29日「改正高年齢者雇用安定法のリーフレット ダウンロード開始」
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2012年9月17日「65歳までの雇用が義務付けられたと聞きました」
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2012年9月6日「改正高年齢者雇用安定法が公布」
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2012年8月30日「改正高年齢者雇用安定法成立 2013年4月1日に施行」
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2008年12月10日「高年齢雇用継続給付・育児休業給付・介護休業給付の支給申請に関する協定書」
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参考リンク
ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」
https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_continue.html

(宮武貴美)

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