育児休業中には住民税の徴収が猶予されるのですか?

 5月も中旬となり、「そろそろの住民税の特別徴収の通知書が各企業に届く頃だな」と思った大熊は、宮田部長に育児休業者の住民税のことについて説明することとした。


大熊社労士:
 こんにちは、社労士の大熊です。
宮田部長:
 大熊先生、いらっしゃいませ。気付いたらお約束の時間になっていましたね。時間が経つのは本当に早いものだ。
大熊社労士大熊社労士:
 いろいろお忙しくされているみたいですね。そういえば、そろそろ住民税の特別徴収の通知が届く頃ですね。
宮田部長:
 そうかぁ、住民税は6月から変更になるんでしたね。
大熊社労士:
 そうですね。給与計算ソフトに新しい額を入力する必要がありますよ。そこで今日は宮田部長からご質問が出るのではないかな?と想像してきた内容をお話ししようと思います。
宮田部長:
 え!何か特別なことがあるのですか?
大熊社労士:
 いえいえ、そんなに驚かないでください(笑)。恐らく、特別徴収の通知書には育児休業中の福島さんのお名前も記載されているかと思います。私の想像によると、恐らく住民税は「0円」ではないかと思うのですが、もし住民税額が記載されていたらどうやって徴収するの?と気にされるのではないかと思いまして。
宮田部長:
 福島さんは育児休業中なのに、記載されてくるのですか?
大熊社労士:
 そうですね。今年の初めに給与支払報告書を各市区町村に送ったと思いますが、これに基づいて各市区町村は特別徴収の通知を発送します。福島さんの分も特別徴収として送っていると思うので、通知が来るという訳です。
宮田部長宮田部長:
 あぁ、あの在職者と退職者を分けて送ったやつですね。それで・・・あの・・・基本的なことなのですが・・・特別徴収というのが給与から天引きするものでしたよね?
大熊社労士:
 おっと、これは失礼しました。おっしゃる通りです。
宮田部長:
 でも、どうして「0円」だと思うとおっしゃるのですか?
大熊社労士:
 はい、今回届く特別徴収の通知というのは、昨年の所得に基づいて計算されるものなのです。福島さんは欠勤をされたので、年収としてはかなり小さくなっています。恐らく住民税がかかるまでの年収になっていないのではないかと想像したのです。
宮田部長:
 そうかぁ、確かに給与は3ヶ月分しかなかったですから、おっしゃる通りかもしれません。ん?これがもし、かなりあった場合には、住民税は発生するということですか?
大熊社労士:
 その通りです。住民税は前年の年収によってその額が決定しますので、住民税がかかるような年収があれば、育児休業中であっても住民税額が発生し、それを支払う必要が出てきます。
宮田部長:
 なるほど。でも雇用保険から給付金がもらえたりするとはいえ、育児休業中は収入が減少するので、支払いは大変ですよね。
大熊社労士:
 はい、おっしゃる通りだと思います。
宮田部長:
 何か減免になるような措置はないのですか?
大熊社労士:
 残念ながらないようですね。一時的に納税することが困難な場合には、徴収が猶予されるという措置は設けられています。
宮田部長:
 徴収が猶予?
大熊社労士:
 住民税は市区町村が徴収しますので、従業員がお住まいの地方団体の長が認める場合には、育児休業中1年以内の期間に限り、徴収されないことになります。あ、免除されるわけではなく、支払いの時期がズレるということですよ。
宮田部長:
 なるほど。後で支払ってね、ということなのですね。
大熊社労士:
 はい、その通りです、職場復帰後に納税することになります。
宮田部長:
 収入がないことを考えると良い制度ですよね。
大熊社労士:
 そうですね。ただし・・・猶予された住民税には延滞金がかかることになっており、住民税と延滞金の両方を納税する必要があります。
宮田部長:
 え!それは大変じゃないですか。それで延滞金というのはどれくらいになるのですか?
大熊社労士:
 はい、年14.6%の延滞金になるのですが、育児休業の徴収の猶予の場合、この2分の1が免除されることになっています。また、地方団体の長の判断により全額免除されることもあるようです。
宮田部長:
 そうですか・・・それなりの額になるでしょうね。まぁ、延滞金の免除はあると言っても、職場復帰後も残業ができないといったことがあるので、徴収を猶予してもらってもなかなか厳しいかも知れませんね。
大熊社労士:
 確かにおっしゃるとおりですね。支払わなければならないことには変わりないですからね。まぁ、育児休業の方で支払いが大変ということを耳にしたら説明をしてあげてくださいね。
宮田部長:
 そうですね。ありがとうございました。

>>>to be continued

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大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今日は育児休業中の住民税の猶予措置について説明しました。この手続きについては、育児休業を取得する従業員本人が各市区町村に申し出をすることになっています。詳しくは居住している市区町村に確認するようにしてください。


関連blog記事
2013年5月6日「育児休業給付が支給されている期間は失業手当の勤続年数に入りますか?」
https://roumu.com/archives/65610218.html
2013年4月15日「育児休業中の社会保険料について確認させてください」
https://roumu.com/archives/65607299.html

参考リンク
厚生労働省「育児休業や介護休業をする方を経済的に支援します(平成24年7月)」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/12.html

(宮武貴美)

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