算定基礎の対象月に資格取得した被保険者ではどこに注意すれば良いですか?

 大熊の事務所でも、年度更新と算定基礎の処理が集中していたが、今日は服部印刷の算定基礎を確認する約束していた。予定時間通り、服部印刷に到着すると福島さんが待ち受けていた。


福島照美福島さん:
 大熊先生、こんにちは。先日教えていただいた算定基礎届ですが、修正しました。
宮田部長:
 早速、ありがとう。大熊先生、最終確認よろしくお願いします。
大熊社労士:
 はい、では、先日、お話していた点から確認しましょうか。ふむふむ、うん、これは大丈夫ですね。
宮田部長:
 なんだか、どきどきしちゃうなぁ。
大熊社労士:
 あはは。大丈夫だと思いますよ。うん、1枚目は問題ないな。では、後ろのほうから確認することにしましょう。
宮田部長:
 え?後ろのほうから?なぜ、後ろから確認するのですか?
大熊社労士:
 あ、私の癖なんですけどね、算定基礎届での誤りは、案外後ろにあることが多いためなのです。というのも、算定基礎の前のほうにある方というのは、全体で見ると、加入期間が長い人、つまりは勤続年数が長い人ですよね。となると、欠勤があったとしても年休で補うことが多く、また、管理職となり変動給(残業)で標準報酬月額が大きく変動する人も少なくなる。逆に後ろのほうにある方は、欠勤があって給与が控除されていたり、残業時間の変動が大きかったりするために確認が必要だったりと、チェックするべき項目が多くなったりするんですよね。
宮田部長:
 なるほど。そんなポイントがあるのですね。
大熊社労士:
 そうですね。あくまでも比較論ですし、これまでの感覚的なものも含まれていますけどね。
福島さん:
 後ろのほうといえば、気になった点があるのです。「算定基礎届の記入・提出ガイドブック(平成26年度版)」で確認して処理したので大丈夫だとは思いますが、4月21日に入社した社員がいて、その社員の取扱いがあっているかどうか・・・・。
大熊社労士:
 あ、この鈴木さんですね。ふむふむ、あぁ、間違っていないようですが、きちんと確認しておきましょうね。鈴木さんの算定基礎は、以下のように書いてあります。
   支払基礎日数 合計
 4月         
 5月  17日   17万円
 6月  31日   21万円
  →平均 19万円 修正平均 21万円
 備考:平成26年4月21日資格取得
福島さん:
 はい。4月21日入社ですので、5月支給分(4月16日~5月15日)は、不就労の4日分を給与から控除しました。そのため、17万円になっています。
大熊社労士:
 おそらく鈴木さんの月給は21万円、平均所定労働日数21日ということなのでしょうね。
宮田部長宮田部長:
 おぉ、それ、私も給与計算のときにチェックしましたが、まさにその通りです。21万円÷21日×(21日-4日)=17万円でした。
福島さん:
 それで、5月も確認したら、17日あるので、まずは17日以上ある5月・6月分の2ヶ月で平均をしました。その上で、ガイドブックの7ページを見て、5月は含めず、6月の給与のみで再度計算することがわかり、6月のみの金額である21万円を修正平均欄に記載したのです。
大熊社労士:
 まさにそのとおりですね。間違いありません。算定基礎は17日以上の月で算定することが原則ですが、このように算定対象月で中途入社した場合、日割計算により本来の1ヶ月分の給与ではない額が出てきます。これを含めると、低額な標準報酬月額になってしまうことがあるため、入社した月の日割計算の分はたとえ支払基礎日数が17日以上あったとしても、算定の対象月から除くことになっています。
宮田部長:
 なるほど、そういう取扱いもあるのですね。
大熊社労士:
 はい。これと混同しやすいものが、欠勤控除です。たまたま算定の対象月に欠勤があり、欠勤控除がされていたとしても、支払基礎日数が17日以上あれば、その月は含んで平均を算出することになります。
福島さん:
 そういえば、高橋さんがそうでした。3月1日に入社した高橋さん、4月に体調を崩して、1日お休みされたじゃないですか。
宮田部長:
 あぁ、そんなこともあったね。大熊先生、算定基礎ちゃんとできていますか?
大熊社労士:
 はい、問題ありませんね。他のページも見ていきましたが、特に気になる点はありませんでしたよ。さすが福島さんですね。
福島さん:
 いえいえ、前回は誤りがありましたし、今回も不安になりながら処理をしたので、勉強不足だなぁ、と実感しています。
大熊社労士:
 なるほど、でも、福島さんはレベルがあがりましたね。
福島さん:
 え?
大熊社労士大熊社労士:
 実はね、最初のうちは知識もない、気づきも少ないと
いうことで、たとえ問題が潜んでいてもその問題に気づかないということが往々にしてあります。だけど、不安に感じるということは、様々なことに気づき、目が届いているという証拠だと思います。つまり、気づくことができるレベルにあがったということですね。その不安を解消しながら処理を進めることでスペシャリストに近づくことができると思うので、ぜひ、がんばってください!
宮田部長:
 な・・・なるほどね。私も福島さんのように気づくことができる頼りになる部長にならなくては。がんばります!
大熊社労士:
 はい、応援していますよ!

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。前回と今回の2回に分けて算定基礎の実務的な内容を取り上げました。ぜひ、みなさんの処理の参考にお役立てください!


関連blog記事
2014年6月23日「社会保険算定基礎において年休取得者はどのようにカウントすればよいのですか?」
https://roumu.com/archives/65663127.html

参考リンク
日本年金機構「算定基礎届の提出」
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=2053
日本年金機構「月額変更届の提出」
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=2054

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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