今年の年末調整ではマイカー通勤者の通勤手当の非課税遡及分をこのように調整します

 今回は、前回の続きでマイカー通勤者の通勤手当の非課税範囲の拡大に関し、年末調整の対応を説明する予定で服部印刷を訪問した。宮田部長、福島さんともに出迎えてくれた。
前回のブログ記事はこちら
2014年10月27日「マイカー通勤者の通勤費非課税額が多くなったのですか?」
https://roumu.com/archives/65687789.html


宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。今日は、例の年末調整についてお話を聞く予定でしたよね。
源泉徴収簿大熊社労士:
 いつも以上に張り切っていますね(笑)。この内容は所得税に関することなので、基本的には顧問税理士さんにも確認いただきたいのですが、国税庁から説明用の資料と、源泉徴収簿の記載例(以下、「記載例」という)が出ているので、これに基づき、確認していくことにしましょう。
福島さん:
 はい、よろしくお願いします。
大熊社労士:
 その前に前回のおさらいも含めて振り返りをしておきましょうね。まず、2014年10月20日以後に支給されるマイカー通勤者等の通勤手当について非課税範囲が引上げられたのですよね。
福島さん:
 引上げは2014年4月1日に遡って適用される・・・でしたよね。
宮田部長:
 そして、55km以上だったっけ・・・区分の新設もあった!ですね。
大熊社労士大熊社労士:
 バッチリですね。この状況で何が起きているかというと、マイカー通勤者等で、2014年4月1日以後に支給されたもののうち、【課税として支給された人】については、その一部もしくは全部が非課税として取扱うことができるかも知れない、ということです。
宮田部長:
 そうかぁ、逆に言うと、既に全額非課税の人は調整するものがないということですね。そうなると、さほど多くないのかも知れませんね。
大熊社労士:
 確かにそうですね。まずは対象者がどれくらいか、絞り込むところから実施すると良いかも知れませんね。さて、調整の具体的手順ですが、記載例で確認していきましょう。毎月の片道通勤距離が50km、通勤手当が26,000円支給されているという事例になっています。
宮田部長:
 となると、課税されない1ヶ月あたりの金額は、45km以上55km未満に該当し、24,500円から28,000円に引上げられたことになりますね。つまり、26,000円-24,500円=1,500円、この1,500円が非課税として扱うことができる!
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。この記載例ですと、支給日は毎月15日から17日で、4月は15日に支給されていますので、この1,500円が2014年4月から12月まで(2015年以降も)非課税として取扱うことができます。
福島照美福島さん:
 記載例を見ると、毎月の給与で調整しているのが、11月17日の支給分からのようですね。それで、平成26年4月から10月までの通勤手当について「年末調整で精算必要(改正後の非課税限度額が遡及して適用される)」と書いてあるのですね。
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。ですので、記載例の場合は、1,500円×7ヶ月分(4月から10月分)が右端に「「非課税となる通勤手当10,500円(1,500円×7か月)」と記載」と記載されているのです。仮に10月31日に給与を支給するため、非課税範囲の引上げが、この10月31日の給与に間に合った場合には、ここは当然、4月から9月分の6ヶ月分になりますよね。
宮田部長:
 なるほど、自社がいつから対応したかによって異なるのですね。
大熊社労士:
 はい、そうですね。先に進めますと、先ほど示した7ヶ月分である10,500円が新たに非課税となるので、記載例では、総支給額①である3,615,000円から10,500円を引き去っているのです。
宮田部長宮田部長:
 そっか、「総支給額」と書いてあるから、いつもの賃金台帳のイメージだと、非課税の通勤手当も含めた総支給額だと思ってしまっていたが、源泉徴収簿の「総支給額」はあくまでも課税部分の記載なのですね。だから、新たに非課税として扱うものは取り除く必要があるということだ!
大熊社労士:
 お、鋭いですね。そのとおりです。結果、「給料・手当等」の金額を書き換え、年末調整を進めるということになります。ただし、「総支給額①」と「給料・手当等」の額は一致することが大原則ですので、先ほど見た右端の余白の欄に調整した内容を記載することになります。
福島さん:
 よく分かりました!「給料・手当等」の金額を調整してしまえば、後は通常の年末調整と同じなので、心配なさそうです。対象者もある程度絞込みができそうですし、見通しが立ちました!
< span style="color: #cc0000">宮田部長:
 おぉ~、さすが福島さん!頼りにしているよ!
大熊社労士:
 宮田部長も一緒に対応してくださいね。それと、給与計算ソフト会社も対応を検討されいると思いますので、その対応状況もぜひ、確認してみてください。
福島さん:
 承知いたしました。早速取り掛かることにしますね。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今回は触れませんでしたが、この非課税の調整については、退職者に発行する源泉徴収票についても対応が必要です。退職者に既に交付をしている場合には、源泉徴収票の「支払金額」欄を訂正し、「摘要」欄に「再交付」と記載して再交付する必要があるので、こちらも一度、確認してみてください。


関連blog記事
2014年10月27日「マイカー通勤者の通勤費非課税額が多くなったのですか?」
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2014年10月27日「年末調整で精算する際の源泉徴収簿の記載例」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51343385.html
2014年10月24日「平成26年版にリニューアル「すぐに使える年末調整提出書類の社員説明用資料」ダウンロード開始」
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2014年10月24日「ちょっと待って!今年の退職者に発行する源泉徴収票は確認してから慎重に!」
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2014年10月23日「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」
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2014年10月23日「非課税範囲拡大で求められる平成26年中の退職者への源泉徴収票再発行」
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2014年10月20日「こんなところにも影響が!?マイカー通勤手当の非課税枠拡大に伴う賃金規程の変更」
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2014年9月26日「[年末調整]平成27年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書ダウンロード開始!」
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2014年9月24日「今年の源泉徴収票の様式は昨年から変更なし」
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参考リンク
国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」
https://www.nta.go.jp/gensen/tsukin/index.htm
国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」
https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2585.htm

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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