過労死を防止するための法律ができたのですか?
服部印刷に到着した大熊を出迎えてくれたのは、服部社長だった。
服部社長:
大熊さん、こんにちは。そういえば、いつだったか、過労死を防ぐための法律ができたとか聞いた覚えがあるのですが、少し詳しいことを教えてもらえませんか?
大熊社労士:
はい、「過労死等防止対策推進法」のことですね。ちょうど、今月から施行になった法律です。過労死は「karoshi」として英語の辞書に載っており、ILO(国際労働機関)のサイトでも「Case Study: Karoshi: Death from overwork」という記事が掲載されているなど、国際的にも大きな問題として認識されています。そこで国としても本腰を入れて対策を進めていますが、国だけが単体で進めるのではなく、事業主や労働者自身も含めて対策が必要という認識が強まっています。
服部社長:
確かに国がいくら旗を振っても、それのみで解決する課題ではないですよね。
大熊社労士:
そうなんです。そこで今回、この過労死等防止対策推進法を制定し、国、地方公共団体、事業主、国民の責務を規定するということにしたのです。法律自体に細かな対策や事業主がしなければならない具体的な内容が記載されているわけではなく、まずは基本理念が書いてあるような形になっています。
宮田部長:
ということは具体的に何かすぐに対応をすべきことがあるわけではないのですか?
大熊社労士:
はい、そうです。ただし、先月お話をした「過重労働解消キャンペーン」については、過労死等防止対策推進法が成立した影響を受けています。
宮田部長:
そういえば、大熊先生にそのようにお聞きした覚えがありますね。なんか聞きなれない法律だなぁ、なんて思ったっけ。
大熊社労士:
それは失礼いたしました。され、その影響ということですが、実は、法律に11月を「過労死等防止月間」にすると規定されているのです。この影響もあって「過重労働解消キャンペーン」が行われることになったのでしょう。
服部社長:
なるほど。確かにキャンペーンをしたからといって何か特別な対応が必要ではないですよね。もちろん、当社でもこの機会に長時間労働や未払い残業がないかを確認してはいますけどね。
大熊社労士:
まずは、そのような自主的行動が求められるのでしょうね。あわせて、国に対し、過労死等の防止のための対策に関する大綱を定めることを義務付けています。この大綱を作成するために、過労死等防止対策推進協議会を設置し、意見を聴くという手続きが取られます。
宮田部長:
タイコウ?
大熊社労士:
はい。過労死を防ぐために、より具体的にどうして行くべきかというような方向性が書かれたものになるだろうと私は想像しています。そのために、調査や研究も行われることになっていますからね。
宮田部長:
ということは大綱ができたときには、また、要注意ということになりますね。
大熊社労士:
そうですね。また、そのときには案内することになるかと思いますので、一緒に勉強しましょうね。
服部社長:
了解しました。今後、国も更に過労死を防ぐための様々な啓発活動をするでしょうから、都度、従業員本人の意識も高めて、生産性の高い業務ができるように、業務の見直しも進めていきたいと思います。
大熊社労士:
そうですね。
宮田部長:
なんだか今日は難しい勉強をしてしまったようで、疲れてきたな・・・長時間労働は心身に影響を及ぼすことになるから早く帰ることにしよう。
福島さん:
宮田部長、今日は年末調整の件で打合せをすることになっていたでしょ!早く帰るのは構いませんが、打合せのときには集中してくださいよ!
宮田部長:
そ・・・そうだったね・・・がんばるよ。
大熊社労士:
あはは、福島さん、宮田部長にお手柔らかにね!
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今日は「過労死等防止対策推進法」についてお話しましたが、厚生労働省のホームページでは、専用ページを作り、周知を図っています。それだけ、厚生労働省としても重要な法律だと認識しているのでしょう。
関
連blog記事
2014年10月13日「来月は労働基準監督署の過重労働調査が重点的に行われます」
https://roumu.com/archives/65686400.html
参考リンク
厚生労働省「平成26年11月1日より、過労死等防止対策推進法が施行されます」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000053525.html
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
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