[有期雇用特措法(2)]高度専門職の有期雇用特例について説明します

 いよいよ4月。まだまだスーツ姿が様になっていない新入社員たちの姿を見ながら、大熊は春の訪れを感じていた。
前回の記事はこちら
2015年3月30日「[有期雇用特措法(1)]定年後の有期雇用契約の特例を適用する場合にはこの手続きが必要です」
https://roumu.com/archives/65702789.html


大熊社労士大熊社労士:
 こんにちは。いよいよ4月に入りましたね。ということで、今回は前回に引き続き、2015年4月1日に施行された有期雇用特別措置法のお話をしていきましょう。
服部社長:
 前回は、定年後の継続雇用の従業員に関するお話をお聞きしましたよね。
大熊社労士:
 そうですね。まずは65歳以降も継続雇用する従業員が発生するのかを確認するんでしたよね。今回は、もう一つの特例、高度専門職に関する内容についてお伝えします
宮田部長:
 高度専門職?私も会社の経理として、高度な仕事をしていますよ!
大熊社労士:
 確かに、宮田部長は服部印刷になくてはならない人ですよね。
宮田部長:
 いやぁ、そんな風な反応をされるとやりづらいなぁ(照)。
大熊社労士:
 でも、残念ながら今回の高度専門職には該当しないと思います。
宮田部長:
 あぁ、持ち上げておいて、一気に落とすとは残酷なことをする(涙)。
大熊社労士:
 いやいや、そもそも今回の特例は有期雇用者のものですから、宮田部長は対象外ですよね(笑)。宮田部長、持ち上げておいてすみません。さて、実はこの高度専門職というのは、対象者がかなり限定されているのです。1つ目は年収の要件、2つ目は高度専門職の範囲です。先に2つ目の要件に触れておきましょうね。高度専門職というのは、以下のいずれかにあてはまる者のことを言います。
博士の学位を有する者
公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士
ITストラテジスト、システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
大学卒で5年、短大・高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニアまたはデザイナー
システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタント
国等によって知識等が優れたものであると認定され、上記からまでに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者
宮田部長宮田部長:
 うわ~、確かに如何にも高度な専門知識を持ってるという感じですね。あ、私も今年の社労士の試験に合格すれば、に該当するじゃないですか!
大熊社労士:
 あはは、確かにそうかもしれませんね。それでは、宮田部長が有期雇用だったと仮定して、もう1つの要件はどうですか?2つ目の年収要件です。これは、年収1,075万円以上であるというものです。
服部社長:
 年収1,075万円…なかなかの金額ですね。これは賞与も含めた額ですか?
大熊社労士:
 条件によって、含めることができるか否かかが決まります。というのも、その従業員に「支払われると見込まれる賃金の額」を指します。これには確実性が必要で、賞与についても支給額があらかじめ決まっている場合や、最低保障額が確約されているのであれば、その決まった額・確約されている額を含めることができます。一方、勤務成績等に応じて払われるものは、確実に支払われるとはいえないため、含めることはできません。
服部社長服部社長:
 なるほど。そうなると、ますます難しくなりますね。いくら高度の専門職だからといって、最初から1,075万円を確約するのは中小企業の経営者としては難しいですからね。
大熊社労士:
 おっしゃるとおりだと思います。特に有期の人の特例で、この高度専門職の人が、5年を超える一定の期間内に完了する業務(プロジェクト)に従事する場合に、そのプロジェクトに従事している期間は、無期転換申込権が発生しないというものです。一定期間、雇用して、実力を見て判断するという類のものではないですからね。
宮田部長:
 1,075万円・・・さすがにこの水準では難しいなぁ。
大熊社労士:
 なるほど、そうなのですね。まぁ、これは本当に一握りの人だと思いますよ。
服部社長:
 そうでしょうね。それで、仮に2つの要件に該当した場合には、どのよう
な特例が設けられているのですか?長いプロジェクトに参画させても、ずっと無期転換をしないということですか?
大熊社労士:
 いえ、上限は決まっています。通常、労働契約法の無期転換ルールに従うと、有期労働契約を反復更新して5年経つと無期転換権が発生しますよね。この5年が上限10年になります。単純に10年までOKというわけではなく、プロジェクトの期間が上限なのですけどね。つまり、5年を超え10年以内のプロジェクトということになるでしょう。
福島照美福島さん:
 いまからだと・・・例えば2020年の東京オリンピックに向けたプロジェクトとかですか!?
大熊社労士:
 さすが鋭いですね。おっしゃるとおりです。前回、説明した定年後の継続雇用の場合は、継続雇用している間は無期転換権は発生しませんでしたが、今回の高度専門職の場合には上限があることが注意事項となりますね。
服部社長:
 了解しました。まぁ、当社では該当するケースがないとは思いますが、何か具体的な事案があれば、早めにさせて相談させていただきますね。
大熊社労士:
 そうですね。手続き等は、前回と似通っていますので、具体的な事案が発生した際に、お話することにしましょう。さて、宮田部長、服部社長の前で社労士試験のことを話した以上、今年は是が非でも合格してくださいね。
宮田部長:
 は・・・はい、がんばります。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。高度専門職の場合には、「第一種計画認定・変更申請書」を提出することになります。この申請書には「特定有期業務の内容並びに開始及び完了の日」や「第一種特定有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置の内容」を記入することになっていますので、提出を検討されている方は、よく確認してください。


関連blog記事
2015年3月30日「[有期雇用特措法(1)]定年後の有期雇用契約の特例を適用する場合にはこの手続きが必要です」
https://roumu.com/archives/65702789.html
2015年3月2日「4月に施行される有期雇用特別措置法のパンフレット ダウンロード開始」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52066505.html
2014年12月1日「定年後に嘱託社員になった従業員の無期転換ルールが変更になります」
https://roumu.com/archives/65691406.html
2014年11月22日「来年から定年再雇用者と高度専門知識を有する有期雇用者は労働契約法の無期転換から除外に」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52056534.html
2013年2月18日「定年後に嘱託社員になった従業員が5年勤務したら無期転換になるのですか?」
https://roumu.com/archives/65599459.html

参考リンク
厚生労働省「労働契約法の改正について~有期労働契約の新しいルールができました~」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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