ストレスチェックの概要を復習しましょう
前回の助成金の説明に引き続き、ストレスチェックについて解説することとなっていた。大熊が服部印刷に到着すると、服部社長も待ってくれていた。
前回のブログ記事はこちら
2015年6月29日「ストレスチェックを実施すると助成金が支給されるのですか?」
https://roumu.com/archives/65712284.html
大熊社労士:
今日は、ストレスチェックについての説明をするのでしたよね。
宮田部長:
あ!そうでした。忘れていましたが、よろしくお願いします。
大熊社労士:
それでは、まず復習として制度の概要を押さえておきましょう。まず、ストレスチェックは労働安全衛生法が改正されて、今年12月に施行されるものです。医師等が社員のストレスチェックを実施して、その結果を受け取った本人が希望すれば、医師との面接を受けることができるという制度です。
福島さん:
確か、面談でその人に何らかの対応が必要な場合には、配慮をしなくてはいけなかったんですよね。労働時間の短縮とか。
大熊社労士:
そうですね。
宮田部長:
でも、なぜ本人の希望を聞いて医師が面接するんでしたっけ?高ストレスの人は全員面接!ってしちゃえばいいじゃないですか。
大熊社労士:
確かにそう思ったりしますよね。でも、そこが今回の制度の大きなポイントです、今回の制度の主な目的は、従業員自身が自分のストレスの程度を把握し、ストレスへの気づきを促すことで、職場の改善につなげる。そして、働きやすい職場づくりを進める。結果的に従業員がメンタルヘルス不調になることを防ぐこととなっています。
服部社長:
つまり、メンタルヘルス不調者が出てからではなく、一次予防に力を入れようということですね。
大熊社労士:
その通りです。ですので、医師の面接という点についても、「自分のいまの状態を医師に見せたほうがよいかも知れない」というように感じた従業員を対象にするのです。もちろん、会社には安心して面接を受けることができるような環境にすることが求められていますけどね。
宮田部長:
なるほど!でも、大熊先生、それで高ストレスだと結果の出た人が、仮に「自分は大丈夫」と何もしなかったら、それこそ実施する意味がなくなっちゃいませんか?
大熊社労士:
確かにそのように感じますよね。実は、前回はお話をしていませんでしたが、ストレスチェックの手順として、「集団ごとの集計・分析」というのがあります。これは努力義務なのですが、医師等のストレスチェックを実施した人は、ストレスチェック結果を集団ごとに集計・分析し、職場ごとのストレスの状況を把握、それを会社に通知して、会社が職場の環境を改善することになっています。
服部社長:
集団として処理をすることで、複数ある職場のどこに課題があるのかを探り、対処するということですね、なるほど。
大熊社労士:
特定の部署で高ストレスがかかっているようであれば、その部署の業務内容や労働時間を分析して、仕事の量や質として負荷が大きくなりすぎていないかを確認することができます。その場合には、業務内容の見直し、人材の投入等の対応策が打てますからね。
宮田部長:
大熊先生、でも、うちの総務なんて人員が少ない中でやっているじゃないですか。集団っていっても、ほぼ個人が特定できちゃったりしますよ。それでもよいのですか?
大熊社労士:
今日の宮田部長は鋭いですね。確かにおっしゃるとおりであり、集計・分析の単位が10人未満の場合には、集計・分析の結果を医師等から会社に提供してはいけないとなっています。あ、もちろん、従業員の全員の同意があれば問題ないですけどね。
宮田部長:
すごく厳密に決まっているのですね。
大熊社労士:
そうですね。やはり、このストレスチェックはメンタルヘルスの問題に直結していますから、会社が勝手に個人を特定する情報をとって、それを人事に利用するというのは避けなくてはなりません。ですから、人事権のある社長や人事部長は、ストレスチェックの実施の事務にも従事してはならない、とまでマニュアルに記載されています。
宮田部長:
じゃ、私も関わることができないってことですね。
福島さん:
宮田部長、関わることができない、って言ってもちゃんと勉強してくださいね。
大熊社労士:
あはは、そうですね。まぁ、このような仕組みになっていますので、実は、ストレスチェック制度では衛生委員会の役割がかなり重要になってきます。どのように進めるのかというのも、衛生委員会で決定し、周知・推進していくことになりますね。
服部社長:
衛生委員会はますます重要なポジションを占めるのですね。
大熊社労士:
そうですね。来年の制度施行に向けて、いまから準備を進めていきましょう。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回はストレスチェック制度の概要を復習しました。次回は、従業員がストレスチェック制度を受ける義務や受けた際の賃金の取扱い等についてみていきましょう。
関連blog記事
2015年6月29日「ストレスチェックを実施すると助成金が支給されるのですか?」
https://roumu.com/archives/65712284.html
2014年10月6日「2015年12月からストレスチェックの実施が義務付けられます」
https://roumu.com/archives/65685637.html
参考リンク
厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策・心身両面にわたる健康づくり(THP)」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。
最新情報の速報は「労務ドットコムfacebookページ」にて提供しています。いますぐ「いいね!」」をクリック。
http://www.facebook.com/roumu