[改正派遣法]労働者派遣の期間制限の見直し(2)

 大熊が服部印刷に到着すると、服部社長、宮田部長、福島さんの3名が出迎えてくれた。
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2015年10月19日「[改正派遣法]労働者派遣の期間制限の見直し(1)」
https://roumu.com/archives/65721994.html


大熊社労士大熊社労士:
 こんにちは。今日は改正労働者派遣法の派遣期間の制限の見直しの続きでしたね。前回は、「派遣労働者個人単位の期間制限」についてお話しましたので、今回は「派遣先事業所単位の期間制限」を説明することにしましょう。
服部社長:
 よろしくお願いします。
大熊社労士:
 前回ご説明したとおり、改正前の派遣法では、同一の業務で原則1年間、過半数労働組合等の意見を聴いた上で、3年間まで派遣が認められていました。同一の業務ですので、例えば、御社の総務で一般事務をしてもらう人を派遣として受け入れた場合、最長で3年しか派遣の方に働いてもらえません。これは「業務」で派遣受入期間を通算するため、例え1年で「人」が変わったとしても、また例え1年で「派遣元の会社」が変わったとしても、3年が限度であることに変わりありません。
宮田部長:
 そうそう、人が変わったからって通算期間がリセットするものじゃないんだよ、ってどこかで聞いた覚えがありますよ。
大熊社労士:
 そうですね。それが改正後には、派遣先の同一の事業所に対し派遣できる期間は原則3年が限度ということになりました。さらに過半数労働組合等の意見を聴いた上で、3年を超えて受け入れることもできるようになりました。ちなみに1年経過した時点での意見を聴く必要はありません。
宮田部長:
 ん?ということは、3年ごとに過半数労働組合等が「派遣でOKだよ!」って言ったら、ずっと同じ業務で派遣を受け入れられるということですか?
大熊社労士:
 ほぼ合っていますが、若干、違います(笑)。実は、「OKだよ!」まで同意を取る必要はないのです。過半数労働組合等の「意見を聴くこと」が求められているのです。つまり、「常用雇用の人にして欲しい」と言っても、会社は必ずしもそのとおりの対応をしなくてもよいのです。もちろん、善処する必要はありますし、対応方針等を説明する義務があるとされています。
服部社長:
 なるほど。「意見を聴く」か。こうなると、なかなか派遣が常用雇用に切り替わることは難しいのかも知れませんね。
福島さん:
 大熊先生、前回の個人単位の期間制限と合わせて確認したいのですが、よろしいですか?
大熊社労士:
 もちろん。どのようなことですか?
福島照美福島さん:
 今回の事業所単位の期間制限も個人単位の期間制限も3年ですよね。仮に、派遣開始後のAさんに3年間、派遣で仕事をしていただいて、その後、過半数労働組合等の意見を聴き、さらに派遣を受け入れることとした場合、このAさんは同じ事業所の業務に派遣され続けることはできるのですか?個人単位も3年ですよね?
宮田部長:
 え?できないの?私は、3年ごとに意見を聴きさえすれば、同じ人にずーーーっと派遣できてもらえるんだ、って思っていたよ。
大熊社労士:
 福島さん、さすがに目の付け所がいいですね(笑)。答えは、同じ人を3年を超えて「課」などの同一の組織単位において派遣として受け入れることはできないということになります。よってAさんにそのまま派遣として、同じ仕事をしてもらうことはできません。一方、人が変われば、その組織でも派遣を受け入れることができます。またAさんについては、別の課など、異なる組織単位であれば、その事業所で派遣として働いてもらうことができます。
宮田部長宮田部長:
 そうなんですね。そりゃ、前回、大熊先生がおっしゃっていた26業務の問題は大きいですよ。だって、これまでは派遣であっても、ずっと同じところで働き続けることができると思っていたのに、この改正で「3年までよ」って言われたと同じですよね?「そりゃないぜ~」ですよね。
服部社長:
 確かに部長の言うとおりだね。大熊さん、この解決策は用意されていないのですか?やはり、他の部署に移すことが現実的なのでしょうか・・・いや、これも非現実的なような気がするな。
大熊社労士:
 実は、例外が設けられています。2つの期間制限の例外としていくつかあるのですが、「派遣元事業主に無期雇用される派遣労働者を派遣する場合」というのがあります。
福島さん:
 派遣元の会社で正社員であればよいということですか?
大熊社労士:
 う~ん、正社員とまでは言っていないくて、無期雇用されていればよいとなっています。無期雇用であれば、その派遣労働者は雇用が安定するため、派遣先の期間制限はなくてもいいよね、という感じでしょうか。
服部社長:
 なるほど、派遣先の派遣契約が打ち切りになったとしても、派遣元で面倒をきちんと見ても
らえるのであれば、派遣期間に関係なく働くことができるということですね。
大熊社労士:
 はい、そうです。その他に、60歳以上の派遣労働者を派遣する場合や、産休・育休・介護休業等の代替として派遣する場合等もあります。
宮田部長:
 じゃ、仮に優秀な人材がいて、3年を超えて派遣して欲しいと思った場合には、過半数労働組合等の意見を聴き、さらには、派遣元の会社に「無期雇用にしてあげてね」って頼めばいいんですね。そしたら、うちでずっと派遣としてきてもらえますね。
大熊社労士:
 あはは、そうですね。ただ、派遣元の会社も無期雇用となると、有期雇用の場合と比較して、雇用継続をしていかなければならないリスクが発生します。それこそ、定年まで雇用を約束することにとなると、「はい、分かりました」と簡単にうなずいてくれないかも知れませんよね。
服部社長服部社長:
 確かにそうですね。逆に当社で直接雇用したい人がいるとすると、そういう人は、派遣元の会社としても、手放したくない人材だったりするのでしょうね。優秀な人はどこまで行って求められる人材といえそうだな。
大熊社労士:
 確かにそうですね。そういう意味では、自身の労働市場での価値を上げるというのは、すごく重要で、もしかすると、派遣労働者で意識の高い人はその取組みを積極的に行っているのかもしれませんね。
服部社長:
 確かにそうですね。勉強になりました。
大熊社労士:
 派遣労働者を受け入れる場合には、「なぜ派遣にするのか」をしっかりと考えて対応するべきなのでしょうね。
宮田部長:
 はい、担当部署とも議論してみますね。
大熊社労士:
 よろしくお願いします。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。労働者派遣の期間制限の見直しのお話を2回に亘りしてきました。次回は、クーリング期間と、法改正前後の経過措置について触れることにしましょう。


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2015年10月19日「[改正派遣法]労働者派遣の期間制限の見直し(1)」
https://roumu.com/archives/65721994.html

参考リンク
厚生労働省「平成27年労働者派遣法の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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