育休取得・復帰プランを作ると30万円×2の助成金がもらえます

 大熊が服部印刷に到着すると、福島さんが首を長くして待っていた。


福島照美福島さん:
 大熊先生、今日は大熊先生がお越しになるのを首を長くしてまっていました!
大熊社労士:
 うれしいなぁ。あ、でも、これからは今日「も」と言ってくださいね(笑)。さて、福島さんが首を長くされていたのは、育児休業の引継ぎの話だからですよね。
宮田部長:
 あはは、確かにそうだ。あ、私も楽しみにしていましたよ。助成金の話も出るのですよね。
大熊社労士:
 はい、そうですね。前回、「育児休業取得者の円滑な育休の取得や育休後の職場復帰を支援できるように支援プランを作成した場合等に支給される助成金が用意されている」という話をしましたよね。今日はこの内容を説明しましょう。
福島さん:
 よろしくお願いします。
大熊社労士:
 育児休業を取るときには、通常、自分の業務を誰かに引き継いでお休みに入りますよね。そして、復帰後は、再度、引継ぎを行なうことになりますね。たとえ、それが1年前にやっていた業務であっても、直近1年間については、関わっていないですからね。
宮田部長:
 まぁ、私みたいに、時々福島さんを呼び出しちゃう上司もいたりしますが・・・(笑)
大熊社労士:
 確かに最近はそういうケースも増えていますね。ただ、やはり引継が発生する。その引継については、引き渡すときも、引き受けるときもスムースに進むことが求められます。ただ、実際にはなかなかスムースに行っていないケースも多いかと思います。
宮田部長宮田部長:
 確かになぁ。だからこそ福島さんにお休みのときにフォローしてもらったんだもんな。
大熊社労士:
 そうですよね。そういう育児休業を取得するとき、そして、育児休業から職場復帰するときに円滑にいくように育休復帰支援プランの作成を支援する「育休復帰プランナー」という人ができたのです。
宮田部長:
 へぇ、プランナーですか。
大熊社労士:
 はい、そうです。厚生労働省から委託される事業なのですけどね、私の社労士仲間も何人かこのプランナーをしていましたよ。プランの中には、以下のような項目を入れることになっています。
・育児休業取得予定者の円滑な育児休業取得のための措置として、育児休業取得予定者の業務の整理、引き継ぎに関する措置
・育児休業取得者の職場復帰支援のための措置として、育児休業取得者の育児休業中の職場に関する情報及び資料の提供に関する措置
宮田部長:
 何だか難しそうですね。
大熊社労士:
 確かにこうやってみると難しそうですが、「育休復帰支援プラン策定マニュアル」というのが公開されており、これに沿って対応していけば問題ありません。具体的には、妊娠の事実が分かった後には、上司や人事労務担当者が面談をし、いつから休みを取る予定かであるとか、引継はいつから行うのかといったことをヒアリングします。
福島さん:
 これまで何となく聞き、何となく部署で対応していたことについて、しっかりと面談しましょうということですね。
大熊社労士大熊社労士:
 はい、そうですね。そして、引継についても、きちんと業務引継書を作成することで、業務の整理と引継をしていきましょう、ということになります。普段から引継書を作成している企業はいいのですが、日々は業務に追われるばかりで、育児休業取得時の引継もほとんと口頭で行なうというケースもありますからね。
福島さん:
 それじゃぁ、安心して休めませんよね。
大熊社労士:
 そうですね。さらには出産後も不安で、逆に復帰したくないという思いになってしまうこともあるかも知れません。
宮田部長:
 そっかぁ、きちんと面談をし、引き継ぐことを改めて書面に残すって大切なことなんですね。
大熊社労士:
 そうですよ。そして、育児休業中は、復帰に関して不安に思うこともあると思いますので、職場の情報を定期的に発信してあげることで、育児休業取得者の復帰を支援することになります。
宮田部長:
 職場の情報・・・ですか?
大熊社労士:
 はい。例えば、社内報を発行しているのであれば、それをきちんと送ってあげることや、例えば、社内会議をした場合にはその議事録を送ってあげる等が考えられますよね。1年休んでいたらいまの社会環境であれば浦島太郎状態になってしまうことが多いと思いますので、それを防いであげなくてはなりません。
福島さん:
 確かにそれは重要ですね。働いていると連続的に起こる僅かな変化が、休んでいると復帰時に非連続の急激な変化に感じられますからね。
宮田部長:
 なるほど、それはそうかもしれないね。
大熊社労士:
 こういう取組を行い、その他所要の要件を整備した場合に助成金が支給されるのです。
宮田部長:
 え!大熊先生がおっしゃったことって、すごく当たり前のことじゃないですか!それで助成金がもらえちゃうのですか?
大熊社労士:
 そのように感じましたか?・・・実は私も同じように感じました。ただ、育休取得から復帰というのはきちんと整備がされていない部分でもあるのですよね。だからこそ、プランナーさんの支援を受けて、きちんとやっていこうという話なのです。もし、今、妊娠されている方がいるのであれば、すぐにプランナーさんに来ていただき、育休復帰支援プランを作成してくださいね。
宮田部長:
 ありがとうございます!

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今回ご紹介した助成金は、両立支援助成金の育休復帰支援プランコースというものです。「育休復帰支援プラン」を策定及び導入し、対象労働者が育休取得した場合及び復帰した場合に中小企業事業主に助成されるもので、プランを策定し、育休取得したときに30万円、その後、育休者が職場復帰したときに30万円が支給されます。詳細は参考リンクをご確認ください。


関連blog記事
2016年2月29日「育児休業期間の業務の引継ぎ・代替はどうすればよいのでしょうか」
https://roumu.com/archives/65733904.html

参考リンク
厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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