社会保険適用拡大(4)社会保険適用の要件「1年以上の雇用見込み」はどう判断しますか?
大熊は、今日も社会保険適用拡大の説明を宮田部長と福島さんにする予定をしていた。
前回までの記事はこちら
2016年6月13日「社会保険適用拡大(3)4分の3未満で社会保険に加入するのはどんな人ですか?」
https://roumu.com/archives/65743547.html
2016年6月6日「社会保険適用拡大(2)新たな4分の3基準を確認しておきましょう」
https://roumu.com/archives/65743542.html
2016年5月23日「社会保険適用拡大(1)パートタイマーへの社会保険の適用拡大が始まります」
https://roumu.com/archives/65742081.html
大熊社労士:
さて、今回も社会保険適用拡大の説明をしていきましょう。4分の3未満であっても、社会保険に加入することとなる人の要件について確認していきたいと思います。まず4つの要件は以下の通りでしたよね。
週の所定労働時間が20時間以上であること
雇用期間が1年以上見込まれること
賃金の月額が8.8万円以上であること
学生でないこと
福島さん:
そうそう、それでとの確認を前回したんでしたよね。
大熊社労士:
そうでしたね。特にの賃金の範囲がややこしいので注意をしてくださいねということでしたね。そして、これまた少しややこしいのがです。
宮田部長:
雇用期間が1年がややこしいのですか?
大熊社労士:
そうなんです。「見込まれること」ですからね。例えば、1年間継続勤務した人ならば、ややこしくないのですけれど、見込まれるという表現になるとたちまち、短期間の契約の人は?となってしまいます。
宮田部長:
そうかぁ。確かに6ヶ月契約の人で更新するかもしれないね、というような人というのはなかなか判断が難しいですよね。
大熊社労士:
まさにそのような人は問題になりそうですよね。この点に関しては、日本年金機構が公開したリーフレットによれば、以下のように整理が行なわれています。
a.期間の定めがなく雇用される場合
b.雇用期間が1年以上である場合
c.雇用期間が1年未満であり、次のいずれかに該当する場合
・雇用契約書に契約が更新される旨または更新される可能性がある旨が明示されている場合
・同様の雇用契約により雇用された者について更新等により1年以上雇用された実績がある場合
宮田部長:
いろいろなパターンがあるものですね。
大熊社労士:
そうなのです。宮田部長がおっしゃるのは、c.のケースですよね。このケースですと「更新される可能性がある」と判断されるのでしょうね。ですので、6ヶ月の契約が更新されて1年の契約となるので、最初から加入する人ということになるのでしょう。
宮田部長:
なるほど~。これからはパートさんの契約について、社会保険加入するかの確認も含め、より慎重に適切な内容にしていかなければなりませんね。
大熊社労士:
そうですね。
福島さん:
大熊先生、ふと思ったのですが、今「最初から加入する」とおっしゃったじゃないですか。今回、適用拡大が平成28年10月。このときの「最初」ってどうなるんですか?
大熊社労士:
さすが、鋭い質問ですね(笑)。例えば・・・どうでしょう、平成28年4月1日に時給1,000円、週25時間で働く1年の有期契約を結んだ場合で考えましょう。当然ながら、平成28年4月1日から平成28年9月30日までは社会保険の適用対象外であり、加入しません。それが、平成28年10月1日からは適用の可能性が出てくる。
宮田部長:
うんうん。大企業にお勤めになっているという前提ですね。
福島さん:
学生アルバイトでもなく。
大熊社労士:
みなさん、補足ありがとうございます(笑)。この場合、法施行日である10月1日時点でその後1年間の雇用期間が見込まれるかが判断されることになります。たとえ、平成28年4月1日時点で1年以上の雇用見込があったとしても、契約の更新がされないことが前提になっていれば、平成28年10月1日時点では、平成29年3月31日まで半年間しか雇用が見込まれないため、社会保険の適用にはならず、加入しないことになります。
宮田部長:
へぇ。なるほど~。
大熊社労士:
ただし、契約更新がないとされつつも、実際には契約が更新され、1年以上の雇用が見込まれるようになった場合には、その時点から被保険者になることになります。もちろん、社会保険加入を防ぐために、最初の契約を契約更新があるかも知れないような状況で「契約更新なし」とするようなことは問題でしょうから、実態に合わせた適切な契約が必要になります。
<
strong>宮田部長:
確かに。最近は、何か別の理由のために、あるべき姿を曲げてしまうと、どこかの都合が悪くなり・・・これが労務管理の問題だと労使トラブルに発展する、そんなことを感じています。抜け道を探すのではなく、実態を見て、適切に進めることが求められるのでしょうね。
大熊社労士:
素晴らしい!!!その調子で労務管理を進めていきましょう。ありがとうございます。
宮田部長:
よろしくお願いします。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回も4つの要件を確認しました。4つ目の要件「学生でないこと」ですが、これも雇用保険と同じ取扱いになります。卒業見込証明書を有する人で、卒業前に就職し、卒業後も引き続き同じ事業所に勤務する予定の人などは、被保険者になるため、気をつけましょう。
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2016年5月18日「通達で示された社会保険適用拡大後の「4分の3基準」取り扱い」
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2016年5月17日「必見!ついに公開されたパートタイマーへの社会保険適用拡大のQ&A」
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2016年5月18日「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集」
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(宮武貴美)
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