65歳以上の人が退職すると失業手当は一時金になります

 雇用保険の適用拡大になることを聞いた宮田部長は、その人たちにどのような失業手当が支給されるのか疑問に思っていた。そこで、大熊に確認することにした。
前回までの記事はこちら
2016年9月19日「来年から雇用保険の被保険者範囲が拡大されます」
https://roumu.com/archives/65753263.html
2016年9月26日「高齢者の保険料免除は平成31年度まで続きます」
https://roumu.com/archives/65753264.html


宮田部長:
 大熊先生、先日、来年から65歳以上の人も雇用保険に加入するというお話を教えていただきましたよね。
大熊社労士:
 これまで雇用保険に加入しなかった65歳以降に新たに就職した人の話ですね。
宮田部長宮田部長:
 そうです、それです。ふと疑問に思ったのですが、雇用保険に加入するということは会社を辞めたときには失業手当が出るということですよね?
大熊社労士:
 そうですね。ただ、通常の・・・65歳未満の人のいわゆる失業手当とは少し異なります。ポイントは一時金になるということです。
宮田部長:
 一時金?
福島さん:
 大熊先生、今回新たに雇用保険に加入する人たちも、これまでの高年齢求職者給付金が支給されるということでいいのですよね?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、その通りです。いま、福島さんがおっしゃった「高年齢求職者給付金」が一時金なのです。少し整理をしておきましょうか。雇用保険の給付の中には、求職者給付というものがあり、失業して仕事を探す人に対し給付金が支給されます。そして、その中に一般的に「失業手当」と表現されることの多い「基本手当」や、いま話題に上がっている「高年齢求職者給付金」があります。基本手当は一般被保険者に対するもので、高年齢求職者給付金は高年齢継続被保険者に対するものになっています。
宮田部長:
 今回は高年齢継続被保険者に対するものの説明ということですね。
大熊社労士:
 そうですね。先を続けると、高年齢求職者給付金は高年齢継続被保険者が退職をし、労働の意思及び能力があるのに就職できない・・・つまり、就職活動をする場合に支給されることになります。この前提は、基本手当と同じとなります。
宮田部長:
 例え65歳以上でも、働く意思がないともらえないとは厳しい!
大熊社労士:
 まぁ、確かに(笑)。ただ、「求職者給付」に分類されているわけですから、単純に退職したからという理由だけでは支給されません。さて、その条件ですが、退職日以前1年間に被保険者として認められる期間が6ヶ月以上ある場合に、一時金が支給されることになります。
福島さん:
 ここは、基本手当と比較して案外要件が緩く感じますね。
大熊社労士:
 確かにそうですね。基本手当は少なくとも12ヶ月の被保険者期間が必要になることを考えると、短期で退職した場合でも支給される可能性が高くなりますね。そして、実際にいくらもらえるかという点ですが、被保険者であった期間が1年未満の場合には基本手当の日額の30日分、1年以上の場合には50日分となっています。
宮田部長:
 それが一時金でもらえるのですよね?えーっと、仮に基本手当の日額が1万円の場合だと、50万円が一度にもらえるってわけですか?わぉ、すごいですね。
大熊社労士:
 確かに「わぉ」という感じかもしれませんが、基本手当の日額については上限があり、現在は、6,370円です。ですので、50日分でも32万円弱になりますね。
福島照美福島さん:
 それでもかなりな額になりますね。特に基本手当は年金との調整が行われたかと思いますが、高年齢求職者給付金は調整がされないのでしたよね?
大熊社労士:
 そうなんです。それは大きいですよね。これまでは、おおおよそ65歳前に退職し基本手当をもらうか、65歳以降も継続して高年齢求職者給付金をもらうかという選択だったものが、64歳で退職し基本手当をもらい、65歳で再就職、その後退職し高年齢求職者給付金をもらい、再度、69歳で再就職、その後退職し高年齢求職者給付金をもらう、なんて人が出てくるかも知れないなと思っています。
宮田部長:
 そうか、そのようなもらい方ができるのですね。
大熊社労士:
 そうですね。もちろん、元気に働くことができるうちは働いてもらうというのがよいと思っていますので、今回の法改正もよい活用がされるといいなと思っています。
福島さん:
 そうですね。今後は弊社でも65歳以上で働き続ける人が出てくるかと思いますので、退職時にはしっかり説明できるように準備しておきます。ありがとうございました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今回の改正では、高年齢被保険者に支給されないことになっていた育児休業給付、介護休業給付および教育訓練給付金も支給されることになりました。こちらも内容を確認しておきましょう。


関連blog記事
2016年9月26日「高齢者の保険料免除は平成31年度まで続きます」
https://roumu.com/archives/65753264.html
2016年9月19日「来年から雇用保険の被保険者範囲が拡大されます」
https://roumu.com/archives/65753263.html
2016年9月16日「雇用保険の適用拡大等について」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51436948.html

参考リンク
厚生労働省「【重要】雇用保険の適用拡大等について~ 平成29年1月1日より65歳以上の方も雇用保険の適用対象となります ~」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000136389.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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