もう行いましたか?定年再雇用者の無期転換に関する特例の認定申請
改正労働契約法が施行されて4年強。最近は顧問先で無期転換の相談が多くなってきているな・・・そんなことを思いながら、大熊は服部印刷に向かった。
大熊社労士:
おはようございます。いよいよ6月も間近、時間がどんどん経っていきますね。
宮田部長:
本当に早いものですよ。
大熊社労士:
そうですね。年を重ねるたびに時間が早く過ぎるように感じます。さて、今日は有期契約労働者の無期転換の特例について、確認しておこうと思い、お伺いしました。
宮田部長:
無期転換ですか?
大熊社労士:
はい。改正労働契約法が平成25年4月1日に施行され、有期労働契約が繰り返し更新され、通算5年を超え、従業員から無期契約への転換の申し込みがあった場合には、契約を無期労働契約に変更しないといけないというものです。
福島さん:
平成25年4月から5年ということで、来年4月から無期契約になる人が本格的に出てくるというお話でしたよね。
大熊社労士:
ええ、そうです。世の中の動きとしては、①5年以内で有期契約を終了し人材を入れ替えていく、②積極的に無期転換を図っていく、③5年以内の期間で、一定以上の人材は無期転換にしつつそれ以外の人材は5年以内で雇い止めとする、という選択肢の中、③が多いように感じます。
服部社長:
最近は人材不足という声を多く聞きます。もちろん、業績の悪化等を考えると、有期として人員調整できる幅を持っておきたいという経営者の思いはあるものの、余程の採用力がないと無期になる前に雇い止めをしつつ、人員を回すということは難しいのだろうなと感じています。
大熊社労士:
そうですね。いずれにしても、有雇用働契約の雇い止めもトラブルに発展しやすいこともあり、いまは有期雇用契約の場合には、有期にする理由を会社側も本人も理解しておく必要がありますよね。
服部社長:
単純にパートだからとか、中途社員は最初は3ヶ月の契約社員というのではいけないのでしょうね。
大熊社労士:
はい、業務の内容で決めるべきなのでしょう。さて、前置きが長くなりましたが、今日は定年の再雇用者について確認をしようと思っていたのでした。
宮田部長:
定年の再雇用者って、確か無期転換しないんでしたよね?
大熊社労士:
そうですね。その内容は以前、お伝えしたとおりです。覚えていますか?
■以前の説明はこちらのブログを参照
2015年3月30日「[有期雇用特措法(1)]定年後の有期雇用契約の特例を適用する場合にはこの手続きが必要です」
https://roumu.com/archives/65702789.html
2014年12月1日「定年後に嘱託社員になった従業員の無期転換ルールが変更になります」
https://roumu.com/archives/65691406.html
宮田部長:
あ、そういえば、申請書を出さなくてはならなかったのですね!大熊先生にお聞きしてからすっかり放置してしまっていました。ありゃー。
福島さん:
私もまずは60歳の定年+継続雇用の5年よりも長く・・・65歳以降も働く人がいるか整理できていませんでした。
服部社長:
なるほど。おそらく1年ほど前は、65歳になったらリタイアでいいじゃないかと思っていましたが、うーん、人手不足、また、熟練した技術を考えると、むしろ65歳でリタイアはもったいない気がするな。
宮田部長:
そうですよ。65歳以降でも元気な人、多いですからね。
福島さん:
大熊先生、そうなると特定の手続きを行っておいた方がよいということになりますよね?いまからでも間に合いますか?
大熊社労士:
現状、65歳以降の雇用契約がないのであれば間に合うと思います。というのもこの無期転換の特例は、認定を受けた時点で効果が発生することになっています。定年を既に迎えている従業員がいる場合でも、その従業員に無期転換の申込み権が発生していて、権利行使をしている場合、そうした場合を除き、対象になるとしているのです。つまり、例えば、既に定年後、再雇用で64歳になっている人と3年契約を結んでいるといった場合を除き、対象になるということです。
福島さん:
弊社は、有期契約は1年以内としていて、原則は年度ごとにやっているので問題なさそうですね。
大熊社労士:
そうですね。そうそう問題になることはないと思います。
服部社長:
当社では今後、対象者が出てくるかは分からないが、念のための手続きを行っておこう。そうそう、大熊さん、この申請・・・認定かな?・・・は、更新とかは必要ないのですよね?
大熊社労士:
基本的には、定年の申請に関し、一度、認定を受ければ更新の手続きはありません。認定ですので、不認定の場合もありますし、また、認定を受けた場合でも、申請書に記載する計画の内容が変更になった場合には、変更申請が必要ですので、注意してくださいね。
服部社長:
なるほど。となると、対象者が発生する可能性があるのであれば、申請をしておいた方がよさそうですね。
福島さん:
そういえば、大熊先生、申請書の中の計画について「高年齢者雇用推進者の選任」というものがあるかと思いますが、これって、何か申請書とは別の届出をしなければならないのですか?
大熊社労士:
申請書を提出する多くの企業がそれを選択しているようですが、特に別途の届出が義務付けられているわけではありません。毎年6月から7月にかけてハローワークに提出する「高年齢者雇用状況報告書」がありますが、ここに高年齢者雇用推進者を記入する欄がありますので、この報告書の写しを確認書類として提出してもよいことになっています。
福島さん:
そうなのですね。宮田部長のお名前で提出していますので、昨年、提出した報告書の写しを添付することにします。
宮田部長:
え!?私が高年齢者雇用推進者!?これまで何もやってこなかったよ。
服部社長:
宮田部長は自分の定年後も心配しているようだから、ちょうどいい、高年齢者の働きやすさをぜひ、検討していってください。せっかくなので、実効性のある提案を待っていますね。
宮田部長:
ひ、ひぇー。がんばります。
大熊社労士:
あはは。では、私は福島さんのサポートをがんばることにしますね。
宮田部長:
大熊先生まで!でも、この機会に既に定年再雇用をされている方にお話を聞いてみるとしますか。
福島さん:
宮田部長、がんばってくださいね!
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。申請書の提出期限は特に定められていませんが、認定を受ける必要があるため、時間的な余裕を持って提出することにしましょう。なお、無期転換の特例は、高度専門職に関しても存在しますが、複数のプロジェクトについて特例の適用を希望する場合には、それぞれについて計画の認定申請が必要となります。
関連blog記事
2014年12月1日「定年後に嘱託社員になった従業員の無期転換ルールが変更になります」
https://roumu.com/archives/65691406.html
2015年3月30日「[有期雇用特措法(1)]定年後の有期雇用契約の特例を適用する場合にはこの手続きが必要です」
https://roumu.com/archives/65702789.html
参考リンク
厚生労働省「労働契約法の改正について~有期労働契約の新しいルールができました~」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
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