障害者の「企業グループ算定特例」を知っていますか?

 服部印刷への訪問も、今日が今年の最後になる。最後ということで、服部社長も訪問を待ってくれているのが視界に入ってきた。


大熊社労士:
 こんにちは。今年ももう残りわずかとなりましたね。1年間、お世話になりました。
宮田部長:
 こちらこそ。本当に色々教えていただきありがとうございました。
服部社長:
 今年もいろいろありましたね。
大熊社労士:
 本当にそうですね。私にとっては、育児・介護休業法が2回も改正された珍しい年として印象に残っています。そして、来年は社会保険関係の保険料率が色々変更されそうですし、障害者の法定雇用率も引き上げとなりますので、このご質問が多くなってきています。
福島照美福島さん:
 障害者の雇用となると、やっぱり、どうやったら採用できますか?というのが多いのでしょうか。
大熊社労士:
 そうですね。もちろん、そういったご質問も多いのですが、時折、特例子会社を作りたいという相談があったり、グループ会社でまとめて算定できないかといった相談がぼちぼち出てきています。
宮田部長:
 特例子会社?何らかしらのメリットが受けられるのですか?「特例」だから。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね。障害者の雇用というのは、原則として個々の事業主に課せられていますよね。ですので、企業ごとに法定雇用率を満たしているか否が重要となります。ただし、障害者を雇用するとなると、少なからず配慮が必要になるので、一般の企業にそれを求めるとかなり負担になることもあります。
服部社長:
 確かに、車椅子の人がうちの会社に入社することを考えると、スロープの設置やエレベーターの設置と、かなり負担になり、雇用のハードルは高くなると感じます。
大熊社労士:
 そのため、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、そこで障害者を雇用し、その雇用している従業員を親会社で雇用しているとみなして雇用率を算定できる制度が設けられています。これが特例子会社の制度です。
宮田部長:
 なるほど、子会社の障害者を親会社の従業員とみなすことが特例ということですね。
服部社長服部社長:
 確かに障害者の雇用を一つの会社で行うことで、施設的な問題は解決しやすくなるでしょうし、労務管理の面でも行いやすくなるのでしょう。ただ、わざわざ子会社を作るとなると、それなりの企業規模・・・大企業が中心になるのではないですか。
大熊社労士:
 ええ。その傾向が強いです。そもそも特例子会社の認定要件の一つとして雇用する障害者が5人以上というものがありますので、少なくとも従業員が250名以上の企業が考える制度となります。もちろん、障害者を多く雇用して、調整金を受けることを念頭に置き、会社を設立することもあるのかも知れませんが。
服部社長:
 やはりそうですね。
福島さん:
 大熊先生、先ほどおっしゃった「グループ会社」というのも同じですか?
大熊社労士:
 よい質問をありがとうございます。グループ会社というと、先ほどの親会社~特例子会社の印象を持つかもしれませんが、特例子会社を設立することなく、「企業グループ全体」で雇用率を算定できる特例もあるのです。これを「関係会社特例」といった「企業グループ算定特例」といったりしています。
宮田部長:
 それって、普通のグループ会社ってことですか?
大熊社労士:
 「普通」って難しいのですが(苦笑)、特例子会社を設立するのではないと見ると普通かも知れません。例えば、事業の一部を分社化することや、他社を買収し、子会社化することなどで、子会社ができることがありますよね。こういう子会社を企業グループとして雇用率を算定することができるのです。
宮田部長:
 う~ん、いまいちイメージがつかないな。
大熊社労士:
 そうですよね。例えば、以下のような企業があるとしましょう。
 A社(親会社):従業員数110名 障害者1名を雇用
 B社(子会社):従業員数50名 障害者1名を雇用
 C社(子会社):従業員数30名 障害者1名を雇用
 法定雇用率は2.0%なので、A社は障害者1名の雇用が不足となります。
福島さん:
 C社は、雇用の義務まではないが雇用している企業ということになりますね。
大熊社労士:
 そうですね。A社については、従業員数が100名を超えているので、障害者雇用納付金の対象となる会社でもあり、現状は特例期間中ですので、不足分1名につき、4万円の納付金の支払が必要になります。ただし、A社からC社までを合算して考えると、法定雇用障害者数は3名実雇用率も3名で法定雇用率を満たしていることになるのです。
宮田部長宮田部長:
 そうか。全部の会社の従業員数を足しちゃうと母数が大きくなるから、障害者雇用数も多くなると思ったけれども、障害者を多く雇用している子会社があったりすれば、メリットが出てきますね。
大熊社労士:
 ただし、この「関係子会社特例」を利用するときには、2社以上の関係子会社が必要であったりするので、要件をきちんと確認する必要があります。
宮田部長:
 当社はいまのところ関係ないのですが、そういう制度もあるということを知っていたほうがよさそうですね。
大熊社労士:
 そうですね。それでは今年のお話はこれくらいにして・・・来年もよろしくお願いいたします。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。雇用率算定特例については、これらの他に「関係会社特例」と「特定事業主特例(事業協同組合等算定特例)」があるため、関心のある方は参考リンクからご確認ください。


関連blog記事
2017年7月17日「2018年4月より障害者の雇用率が2.2%に引き上げられます」
https://roumu.com/archives/65781320.html

参考リンク
厚生労働省「障害者雇用率制度」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaisha/04.html
愛知労働局「障害者雇用について」
http://aichi-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/shokugyou_taisaku/_79409/index0.html
埼玉労働局「職業対策関係」
http://saitama-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/shokugyou_taisaku.html

(宮武貴美)
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