障害者雇用率未達成の場合には社名公表になるのですか?

 新緑が美しい季節。今日もお昼頃には暑くなりそうだと思いながら、大熊は服部印刷に向かった。


大熊社労士:
 おはようございます!今日は本当に気持ちのよい朝ですね。
服部社長:
 おはようございます。本当にそうですね。この週末も非常によい天気でしたから、ビールと本を持って、公園でゆっくりしてきましたよ。日向は少し暑かったですか、木陰は風も通って快適でしたよ。
福島照美福島さん:
 社長、それはいい週末でしたね。私も来週はお弁当でも持って、家族で公園に行ってみようかな。
服部社長:
 それはいいと思うよ。真夏は暑すぎてゆっくりできないからね。さてさて、大熊さん。今日は障害者雇用に関して、確認させていただければと思っています。
大熊社労士:
 分かりました。どのような内容でしょうか?
服部社長服部社長:
 はい。当社の現在の従業員数は52名ですので、1名の障害者を雇用する必要があります。以前アドバイスいただいて以来、労働局が主催する面接会などにも参加しているのですが、結果としては1名も採用できていないのが実情です。聞くところによれば、障害者の雇用義務を果たしていない企業は、社名が公表されるということなのですが、当社は大丈夫でしょうか?
大熊社労士:
 なるほど。確かにそのような制度があり、年によっても違いますが、数社が公表されていることがあります。その公表基準が公開されていますので、ご説明しますね。
服部社長:
 よろしくお願いします。
大熊社労士:
 はい。障害者雇用率未達成の事業主に対しては、公共職業安定所が「障害者の雇入れに関する計画」を作成するように命ずることがあります。その対象は6月1日現在で、次のいずれかに該当する企業が、「雇入れ計画作成命令」の対象となります。
障害者の実雇用率が全国平均実雇用率未満であり、かつ、不足数が5人以上である企業
法定雇用障害者数が3~4人の企業であって、障害者を1人も雇用していない(0人雇用=実雇用率0%)のもの
不足数が10人以上の企業
宮田部長宮田部長:
 あれ、ということは当社の場合はこの作成命令を受けることはないということですか?結果的には社名公表にもならない?
大熊社労士:
 現状のルールだとまあそうなりますね。だから雇用しなくていいということではありませんが。
服部社長:
 はい、当然そうだと思っています。
大熊社労士:
 雇入れ計画の内容は、計画期間中に障害者雇用率を達成するように作成する必要があります。具体的には、次の事項について、事業所ごとにその内訳が明らかになるようにしなければなりません。
・計画の始期及び終期
・雇入れを予定する常時雇用する労働者の数及び雇入れを予定する障害者の数
・計画の終期において見込まれる常時雇用する労働者の総数及び障害者の数
福島さん:
 実際にどれくらいの企業がこの作成命令を受けるものなのですか?
大熊社労士大熊社労士:
 平成29年度の資料を見ると、平成29年度公表を前提とした平成26年度では全国で280社に命令が出されたようです。この計画書を公共職業安定所に提出した上で、計画期間中は、毎年6月1日現在の計画の実施状況を7月15日までに、また計画の終期における状況を終期の翌日から起算して45日以内に、管轄公共職業安定所に報告しなければなりません。そして計画期間中、雇用状況の改善が特に遅れている企業に対し、公表を前提とした9か月間の特別指導が行われ、それでも改善されない場合には、企業名が公表されます。
服部社長:
 なるほど。未達成の場合にはまずは指導が行われ、それでも複数年に亘って改善しない場合に、企業名が公表されることがあるということですね。
大熊社労士:
 はい、その通りです。
服部社長:
 少し安心しましたが、雇用数ゼロというのはさすがに問題だと思っています。宮田部長、今後も面接会などには積極的に出席し、雇用できるように進めていこう。
宮田部長:
 はい、分かりました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス  こんにちは 大熊です。厚生労働省がまとめた平成30年の障害者雇用の状況を見ると、雇用障害者数は534,769.5人で、対前年7.9%(38,974.5人)増加、実雇用率は2.05%(対前年比0.08ポイント上昇)となっています。その一方で、法定雇用率達成企業の割合は45.9%(対前年比4.1ポイント減少)となっており、依然として障害者雇用が進んでいない企業が多く存在することが分かります。今後も法定雇用率は引き上げられていきますので、未達成企業のみなさんはいまのうちに雇用を進めておくようにされるとよいでしょう。


関連blog記事
2017年7月17日「2018年4月より障害者の雇用率が2.2%に引き上げられます」
https://roumu.com/archives/65781320.html

参考リンク
厚生労働省「平成30年 障害者雇用状況の集計結果」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04359.html
厚生労働省「平成29年度 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等について」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11704000-Shokugyouanteikyokukoureishougaikoyoutaisakubu-shougaishakoyoutaisakuka/0000201345.pdf

(大津章敬)

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