終業時刻後の自主練習は原則的に労働時間には該当しません

 すっかりクリスマスイルミネーションに変わった街を見て、冬の訪れを感じる大熊であった。


大熊社労士
 おはようございます!
服部社長服部社長
 おはようございます。今朝は冷えますね。先日まで冷房を入れ、クールビズをしていたような気がしますが、すっかり朝晩は冷え込むようになってきました。
大熊社労士
 本当にそうですね。当社が入居しているビルの前の道は先日からクリスマスのイルミネーションが始まりましたし、1階では毎年恒例の大きなクリスマスツリーの設営が行われていますよ。
福島さん
 いまはハロウィーンが終わると、すぐにクリスマスですからね。
大熊社労士
 さてさて、今日は先日、厚生労働省から公開された労働時間に関するリーフレットの内容について取り上げたいと思います。どのようなものかと言うと、研修や仮眠、移動など労働時間についてよく問題になる論点についての考え方を具体例をもって示したものなのですが、これがなかなか突っ込んだ内容になっているのです。
福島さん
 そうなんですね。そもそも労働時間の定義は「使用者の指揮命令下にある時間」でしたよね?
大熊社労士大熊社労士
 はい、その通りです。なにが労働時間となり、なにがならないのかは、この定義に基づき判断すればよいのですが、そうは言っても微妙なものがある訳です。今回はそのあたりに突っ込んでいるのです。具体的に見ていきましょう。まずは「研修・教育訓練の取扱い」ですが、労働時間に該当しない事例として以下が示されています。
(1)終業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会。
(2)労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て、一人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練。
(3)会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない。
宮田部長宮田部長
 (1)は以前から結構問題になっていたんですよ。お弁当を出すということは、業務、つまり労働時間なのではないかという意見をもらったことが何度もあります。
服部社長
 確かに自主参加の研修とは言え、できれば出席して欲しいと思って、その負担を減らすためにお弁当を用意しているのは事実だからなぁ。でも今回の論点はお弁当が出ている=指揮命令下ということではないという解釈なのでしょう。
大熊社労士
 そうですね。ポイントは実はお弁当ではなく、「参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない」というところにあるのでしょう。ちなみに(2)も結構ありますよね。例えば当社でも、新人が研修講師の練習で、セミナールームを予約して、自主練習を行っているようなことがよくあります。
福島照美福島さん
 美容室なんかでもよくありますよね。営業終了後に若手が自主練習をして、先輩がサポートするような場面を見かけることがよくあります。あと私の友人にマッサージ師がいるのですが、彼なんかもよく営業終了後に社員が自主的に残って練習をしていると話していました。
大熊社労士
 そうですね。そうした技術職は文字通り「手に職」の世界ですから、そのようなことが多いと思います。料理人の世界もそうですしね。さてさて、次は、労働時間に該当する事例です。
(1)使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修。
(2)自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学。
服部社長
 これらは間違いなく、労働時間でしょうね。
大熊社労士
 そう思います。このように今回、厚生労働省が日頃よく寄せられる質問をもとに、リーフレットの形でその見解を示しました。ほかにも仮眠や移動などの取扱いについても示されていますので、また次回以降も解説しますね。

>>>to be continued

大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 こんにちは、大熊です。今回、厚生労働省よりこうした事例が示されましたが、やはり重要なのはその前提となる労働時間の定義の理解です。福島さんも述べていましたが、労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当します。まずは管理者を中心にこの定義をしっかり理解することが重要です。


関連blog記事
2019年10月17日「厚労省から示された研修・教育訓練等を始めとした労働時間の考え方」
https://roumu.com/archives/99034.html
2019年10月17日「リーフレット:労働時間の考え方「研修・教育訓練」等の取扱い」
https://roumu.com/archives/99022.html

参考リンク
厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

(大津章敬)