概要が見えてきた70歳までの就業機会確保義務の検討状況

 以前よりお伝えしている70歳までの就業機会確保を義務化する法案の検討ですが、9月以降、労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会の中で議論が行われています。本日は2019年11月15日に開催された最新の会議の資料から、現在の検討のポイントについて取り上げたいと思います。

(1)70歳までの就業機会の確保について
 70歳までの就業機会の確保に係る事業主の努力義務(第一段階として努力義務化、その後、改めていわゆる義務化を検討)として、65歳までの雇用確保措置と同様の措置に加えて、新たな措置を選択肢として盛り込むにあたり、以下のような点について検討が必要である。
(a)定年廃止
(b)70歳までの定年延長
(c)継続雇用制度導入(現行 65 歳までの制度と同様、子会社・関連会社での継続雇用を含む)
(d)他の企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現
(e)個人とのフリーランス契約への資金提供
(f)個人の起業支援
(g)個人の社会貢献活動参加への資金提供

(2)法律上の努力義務を負う事業主
 70歳までの就業確保措置の責務については、65歳までの雇用確保措置の責務が、特殊関係事業主で継続雇用される場合であっても60歳まで雇用している事業主にあることから、70歳までの就業確保についても、60歳まで雇用していた事業主が、法律上、措置を講じる努力義務を負うと解することが適当でないか。

(3)対象となる労働者
 70歳までの就業確保措置では、成長戦略実行計画において、第二段階の法制整備(いわゆる義務化)の段階において、健康状態が良くない、出勤率が低いなどで労使が合意した場合について、適用除外規定を設けることについて検討することとされているが、これらを踏まえて、どのような仕組みが適切か検討すべきではないか。

(4)措置として事業主が実施する内容について
 事業主が70歳までの就業機会の確保に当たり具体的に実施する措置については、例えば、それぞれ以下のような内容が考えられるのではないか。
■「定年廃止」、「定年延長」、「継続雇用制度の導入」については、65歳までの雇用確保措置と同様のものが考えられるのではないか。
■「他の企業への再就職の実現」については、特殊関係事業主による継続雇用制度の導入と同様のものが考えられるのではないか。
■「個人とのフリーランス契約への資金提供」及び「個人の起業支援」については、事業主からの業務委託により就業することが考えられるのでは
ないか。
■「個人の社会貢献活動参加への資金提供」については、事業主が自ら又は他の団体等を通じて実施する事業による活動に従事することが考えられるのではないか。
※事業主が委託、出資する団体が行う事業に従事させる場合は、当該団体との間で、定年後又は 65歳までの継続雇用終了後に事業に従事させることを約する契約を締結する。

(5)新たな制度の円滑な施行を図るために必要な準備期間について
 65歳までとは異なる新たな措置が選択肢として盛り込まれることに伴う、措置の導入に向けた個別の労使による話し合いや事前の周知のほか、どのような点に留意する必要があるか。過去の高年齢者雇用安定法改正で努力義務を新設した際(※)は、改正法の公布後4か月~5か月で施行。

 骨太の方針2019に明記され、注目を集めた70歳までの就業機会確保ですが、このように議論が進んできています。予定では年明けの通常国会に法案が提出されることになっています。(5)の内容を勘案すれば、2021年4月の施行も十分にあり得るのではないでしょうか。まずは努力義務からではありますが、今後、70歳までの就業を前提とした人事管理が求められることは間違いありません。


関連blog記事
2019年6月6日「未来投資会議が案を示した70歳までの就業機会確保努力義務化の方向性」
https://roumu.com/archives/52172081.html
2019年5月16日「【超重要】未来投資会議 70歳までの継続雇用制度の概要案を公表」
https://roumu.com/archives/52171007.html

参考リンク
厚生労働省「第90回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会(資料)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07851.html

(大津章敬)