社会保険料を翌月から見直すことができる新型コロナの改定の期間が延長になりました

 10月に入り、そろそろ長袖のシャツに変えてもいいくらい涼しくなったと感じる大熊であった。


大熊社労士
 おはようございます。今日は9月末に急遽発表された新型コロナウイルス感染症関係の変更についてご案内しましょう。
宮田部長宮田部長
 あ!あれですね、雇用調整助成金とかの助成金の延長。予定通り12月末まで特例措置が延長したってやつ。
大熊社労士
 そうですね。以前から「予定」としてご案内していましたが、正式に決まりました。その他にも実は社会保険関係が変更になったのです。
福島さん
 社会保険関係ですか?
大熊社労士
 はい。こちらも以前ご案内したことがあるのですが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて休業をし給与が下がった場合に、社会保険料を翌月から改定できるようになっています。
福島さん
 本来であれば、月額変更(随時改定)を待つべきところ、特例ですぐに社会保険料が変更できるというものですね。
大熊社労士
 そのとおりです。休業で給与が変更になった影響であれば翌月に改定できるというものです。以前の特例改定は4月~7月の休業が対象だったのですが、今回新たに8月~12月の休業が対象となりました。また、4月や5月に特例改定をしている人の特例も出てきています。つまり2種類の特例が設けられました。
宮田部長
 前の特例(前特例)と、今回の8月以降の特例(新特例①)、そして、今回の4月・5月改定の特例(新特例②)・・・ややこしいですね。
大熊社労士大熊社労士
 えぇ、特例ができることは労使にとって、社会保険料の負担が軽減されるという面では望ましいことだとは感じますが、何しろ事務手続きは煩雑になります。今回追加された特定をもう少し詳しくお話ししておくと、新特例①は、前特例と同様に2020年8月から12月までの間に、給与が著しく下がった月が生じ、標準報酬月額が2等級以上あること。そして、従業員本人が特例改定に同意しているときに翌月から標準報酬月額が改定できます。
福島さん
 ややこしいですが、前特例の期間が延長になったイメージですね。
大熊社労士
 はい、特例としては別のものになりますが、そのようなイメージをもってもらえれば理解しやしすいと思います。ただし、休業が回復した場合の取扱いについては、前特例が回復月から3ヶ月間で判断することになっていますが、新特例は新特例②も含め、回復月から1ヶ月で判断することになっているので、注意してくださいね。
宮田部長
 え!そんな制度になっているのですね。
大熊社労士
 はい、これに通常の月額変更(随時改定)に算定基礎(定時決定)が加わるので、もう、何が正しいかわからなくなりますよ(苦笑)。
福島照美福島さん
 大熊先生、新特例②は、今もお話に出た算定基礎(定時決定)に関することですか?
大熊社労士
 福島さんはするどいですね。その通りです。前特例を利用して4月または5月に給与が著しく下がり、5月または6月に特例改定した場合には、算定基礎(定時決定)が優先されます。つまり、特例改定で下がった標準報酬月額となるのは8月分まで。もちろん、4月~6月の給与が低くて算定基礎も低くなるという人も多いとは思いますが、8月の給与がより低いような場合には、算定基礎(定時決定)が反映されることで標準報酬月額が大きくあがってしまうことがあります。
服部社長服部社長
 うちみたいに製造業であれば、4月から本格的に休業して、5月支払いの給与から休業手当が発生したという会社もありますよね。そうなると4月の給与が高いからとか・・・いろいろありそうですね。
大熊社労士
 そうなのです。そのため、2020年4月または5月に給与が著しく下がり、5月または6月に前特例の特例改定を受けており、8月の給与が9月からの標準報酬月額に比べて2等級以上下がり、従業員本人が特例改定に同意していることといった要件に該当すれば、新特例②が利用できることになります。
福島さん
 算定基礎(定時決定)の内容も考えないといけないのはたいへんですよね。
大熊社労士
 そうですね。実際には、2等級以上の変更がある人を洗い出して、要件に該当しているか、社会保険料の削減になるか等を確認して、従業員の意向を確認することになるのでしょう。
>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 おはようございます。大熊です。今回追加された特例改定は、新特例①・新特例②で様式も別になっています。2021年2月末までに届出があったものが対象となりますが、年末調整も社会保険料控除の点で関係してきますので、早めに対応をするようにしましょう。


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2020年10月1日「新型コロナの影響に伴う標準報酬月額の特例改定の期間が12月まで延長に」
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2020年6月29日「新型コロナによる休業の場合に社会保険料を翌月から改定できる特例が創設されました」
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2020年6月26日「休業開始翌月から月額変更が可能に~新型コロナ 随時改定の特例が新設」
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2020年6月26日「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合 健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を翌月から改定 することが可能です」
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参考リンク
日本年金機構「【事業主の皆さまへ】新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合における標準報酬月額の特例改定の延長等のご案内」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/0930.html
日本年金機構「【事業主の皆さまへ】新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合における標準報酬月額の特例改定のご案内」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/0625.html
(宮武貴美)