労災保険において進められている業種区分見直しの検討
労災保険制度は、業種ごとの作業態様等の差異により災害率が異なる実態を前提として、55の業種に区分し、労災保険料率を決定、徴収しています。この区分については、平成18年に「その他の各種事業」から「通信業、放送業、新聞業又は出版業」、「卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業」、「金融業、保険業又は不動産業」が分離され、独立した区分として料率が決定されました。
その後、平成22年10月12日から開催された厚生労働省の労災保険財政検討会では、業種区分についての検討が重ねられ、最終報告が取りまとめられました。本日はこの内容について取り上げておきましょう。
この報告書では、以下の5点がまとめられています。
平成18年度に、「その他の各種事業」から、3業種を分離・独立しているが、適用事業場数、単純収支率、事務従事者割合等に大きな変化がないので、現時点では、業種区分の統合や、さらなる分離・独立の必要はない。
平成18年度に分離・独立した3業種のうち、「通信業、放送業、新聞業又は出版業」、「金融業、保険業又は不動産業」の保険料率は、「その他の各種事業」の3/1,000と同一であり、労災保険制度をなるべく簡便な仕組みとするため、今後とも災害率が同水準ならば、統合について検討が必要である。
「その他の各種事業」のうち、「情報サービス業」、「医療保健業」、「洗たく、洗張又は染物の事業」については、災害の発生状況等を踏まえ、分離・独立させる観点からデータ収集や実態調査等が必要がある。
一般に、保険集団が小さいほど、労働災害の発生等により、保険料率の変動が激しくなるので、安定的な運営には、保険集団が大きいことが望ましい。
業種区分の分離・独立に当たっては、業界全体で労働災害防止への取り組みができることが重要であるので、業界団体の組織状況を考慮する必要がある。
報告書を確認すると、「情報サービス業」については労働者数の増加が、「医療保健業」はその他の各種事業の中で事業場数および労働者数が最多の業種であることが、そして、「洗たく、洗張又は染物の事業」については、労災給付費を労災保険料で除し100をかけた単純収支率が、その他の各種事業の中で最も高いことが分離・独立の検討に進められていること分かります。
労災保険料率は、3年に1回見直しが行なわれており、平成24年は見直しが行なわれる予定であるため、この見直しの連絡とともに何らかの調査票が送付されるかも知れません。
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参考リンク
厚生労働省「「労災保険財政検討会」最終報告書取りまとめ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001h3vq.html
(宮武貴美)
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