セクハラによる労災認定 基準見直しの方向性

セクハラによる労災認定 基準見直しの方向性 2011年6月16日のブログ記事「精神障害にかかる労災支給決定件数 前年比1.3倍の308件と急増 意外と低い長時間労働との相関関係」でも取り上げたとおり、精神障害の労災認定が年々増加していますが、現在、その判定におけるセクシュアルハラスメントの取り扱いの見直し検討が進められています。本日は先日、厚生労働省 精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 第5回「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会において公開された報告書(検討のたたき台)の内容を取り上げることとしましょう。

 精神障害の労災認定については、「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」の別表1「職場における心理的負荷評価表」でその心理的負荷の評価が行われていますが、「セクシュアルハラスメントを受けた」という出来事については現行の評価表ではその平均的な心理的負荷の強度を「Ⅱ」としています。しかし、セクシュアルハラスメントの態様は様々であり、これによる心理的負荷の強度も弱いものから極めて強いものまで幅広く存在することから、今回の報告書では、具体的修正の例として以下を掲げています。
特別な出来事等
□心理的負荷が極度に該当するもの(特別な出来事等)の例
・強姦や本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメント

強度の修正の例
□Ⅲ(強い心理的負荷)に修正するものの例
・胸や腰等への身体的接触を含むセクシュアルハラスメントであって、継続して行われた事案
・胸や腰等への身体的接触を含むセクシュアルハラスメントであって、行為は継続していないが、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった、または会社への相談等の後に職場の人間関係が悪化した事案
・身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた事案
・身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、性的な発言が継続してなされ、かつ会社がセクシュアルハラスメントがあると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった事案
□Ⅰ(弱い心理的負荷)に修正するものの例
・「○○ちゃん」等のセクシュアルハラスメントに当たる発言をされた事案
・職場内に水着姿の助成のポスター等を掲示された事案

 厚生労働省ではこの報告書に基づき、年内にも指針を示すとしています。今回は継続性と企業の対応に重点が置かれていますので、これを契機にハラスメント対策の流れについて見直しておきたいところでしょう。


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2011年6月27日「脳・心臓疾患にかかる労災支給決定件数の84%は80時間以上の時間外労働」
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2011年6月22日「精神障害にかかる労災支給決定件数と高い相関関係を持つ「職場での対人関係トラブル」」
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2011年6月16日「精神障害にかかる労災支給決定件数 前年比1.3倍の308件と急増 意外と低い長時間労働との相関関係」
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参考リンク
厚生労働省「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 第5回「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ggp0.html

(大津章敬)

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