週労働時間60時間以上の雇用者を5%以下といった具体的数値目標が示された過労死防止対策大綱

過重労働 2015年4月21日のブログ記事「徐々に見えてきた過労死防止対策大綱案の内容」では、過労死防止対策大綱案の内容について取り上げました。この過労死防止対策大綱(以下、「大綱」という)が先週、閣議決定し、公表されました。この大綱は、昨年11月に施行された「過労死等防止対策推進法」の規定に基づき、過労死等の防止対策を効果的に推進するために定められたものです。

 内容としては、過労死等防止対策推進法に基づき、(1)調査研究等、(2)啓発、(3)相談体制の整備等、(4)民間団体の活動に対する支援の4つの対策を効果的に推進するため、今後おおむね3年間での取組について定められています。その中でも基本的な考え方として、「将来的に過労死等をゼロとすることを目指し、平成32年までに週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下、年次有給休暇取得率を70%以上、平成29年までにメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする目標を早期に達成することを目指すこととする」と数値目標が設定されました。

 また、職場の関係者に対する啓発にも触れられており、「過労死等は職場において生じるものであることから、その防止のためには、一般的な啓発に加えて、職場の関係者に対する啓発が極めて重要である。特に、それぞれの職場を実際に管理する立場にある上司に対する啓発や、若い年齢層の労働者が労働条件に関する理解を深めるための啓発も重要である」とされています。これまで以上に管理職への教育が必要であり、一方で、一般社員についても自己を守るためにも教育が必要になってくることが分かります。

 さらに「職場における取組として、労働基準や労働安全衛生に関する法令の遵守が重要であることから、関係法令の規定や関連する事業主が講ずべき措置や指針及び関係通達の内容及びその趣旨に対する理解の促進及びその遵守のための啓発指導を行う必要がある」としており、これまで労働法に対する啓発は重要であるにも関わらず、重視されていなかったように思いますが、今後は力を入れていく必要が出てくるのでしょう。

 この大綱では、過労死等という観点から、長時間労働、メンタルヘルスケア、パワーハラスメント、ワークライフバランスといった近年の労働分野における大きなテーマが多く含まれています。企業としてもこれらの取組みに注力していくことが望まれます。


関連blog記事
2015年4月21日「徐々に見えてきた過労死防止対策大綱案の内容」
https://roumu.com
/archives/52071017.html

2014年10月15日「2014年11月より過労死等防止対策推進法が施行 政令も閣議決定」
https://roumu.com
/archives/52052762.html

2014年10月14日「厚生労働大臣 経団連へ長時間労働削減等「働き方改革」を要請」
https://roumu.com
/archives/52052687.html

参考リンク
厚生労働省「「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が閣議決定されました」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000092244.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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