外国人研修制度、技能実習制度とは何ですか?
みなさん、こんにちは 大熊です。いよいよ今日は大晦日。この大熊ブログは今年の1月1日にスタートしましたので、今日でちょうど1年になります。人事労務管理の近年の重要ポイントを会話形式でできるだけ分かりやすく解説するというコンセプトで運営しておりますが、お陰様で無事、開設満1年を迎えることができました。来年も毎週、一般のみなさんにも分かりやすい内容で運営していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
さて、2007年最後の今回は外国人雇用の最終回をお送りします。先日、外国人雇用の基本説明を受けた宮田部長でしたが、その後の社内の検討を経て、今後、外国人の雇用を本格的に考えることとなったようです。再度相談したいという電話を受け、大熊は服部印刷を訪問しました。
宮田部長:
大熊先生、こんにちは。我が社でもやはり人材を確保するために、外国人労働者の雇用を本格的に考えてみようと思っています。
大熊社労士:
そうですか。
宮田部長:
ところで、ここ数年、外国人研修制度という言葉を耳にしますが、これはどのようなものですか。
大熊社労士:
はい、製造業を中心として、外国人研修制度を利用することが増えています。これと似たものとして、技能実習制度というものもあり、こちらの方の利用も増えているようです。先日資料を見たのですが、実際にこの5年間で研修生は1.8倍、技能実習生は2.3倍となっているそうです。
福島さん:
すごい勢いで増えていますね。でも、いろいろと問題があるようで、以前、研修生が逃げ出さないように、会社がパスポートや預金通帳を保管していたという報道を見たことがあります。
大熊社労士:
この他にも、強制的に賃金の一部を預金させていたこともあったようですね。制度利用の増加に伴って様々なトラブルが起きています。そもそも、この外国人研修制度は、諸外国の労働者を日本に受け入れ、1年以内の期間に様々な技術・技能・知識の修得を支援するという制度ですので、「研修」の在留資格を得て入国しているものです。在留資格一覧表を見て確認して頂きたいのですが、「研修」の場合、就労することはできません。
宮田部長:
えっっ?確か、研修生は自動車や金属機械といった工場で働いていたと思いますが。
大熊社労士:
ええ、そもそも研修生は労働者ではないのです。彼らはあくまで研修生であり、非実務研修と実務研修を受けることになっており、計画に基づいた育成をしていく必要があるのです。
宮田部長:
労働者ではないとすると、具体的にどのようなことに注意が必要ですか。
大熊社労士:
研修生は時間外労働や休日労働をすることができません。また、先ほどのとおり実務研修と非実務研修を受ける必要があり、その比率が2:1と決まっています。研修生を受け入れる際、研修計画書を作成することになっていますが、研修内容が記載されているにも関わらず、非実務研修を実施していない場合は不正行為と認定され、認定後3年間は研修生を受け入れることはできなくなってしまいます。よく「外国人研修・技能実習制度」とひと括り扱われることがありますが、研修と技能実習生とはまったく別物ということにも注意が必要になります。
宮田部長:
研修生と何が異なるのですか?
大熊社労士:
技能実習制度は、研修生の中から研修成果や技能実習計画の評価等を受けて、これらの要件を満たした場合に技能実習生になることができるというものです。
福島さん:
在留資格に「技能実習」という資格は見当たりませんが、どの在留資格になるのですか。
大熊社労士:
「特定活動」に該当します。特定活動は、法務大臣が個々の外国人に対して特定の範囲においてできるとしている活動のことです。これも一覧表で確認して頂きたいのですが、一定範囲で就労可とされています。
宮田部長:
ということは、技能実習生は労働者になるのですか?
大熊社労士:
その通りです。研修生は労働者ではなく、技能実習生は労働者ということになります。ですから技能実習生には労働基準法や最低賃金法等が適用されます。技能実習生が就いている業務は、産業別最低賃金の対象となっているケースがありますので、地域別最低賃金だけでなく産業別最低賃金の確認も必要になりますね。
宮田部長:
なるほど、いろいろ難しいのですね。とりあえず基本は理解できました。実際にこうした制度を利用する際にはまた具体的な相談に乗ってくださいね。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回は外国人研修・技能実習制度について取り上げてみました。ここでは、外国人留学生についてお話してみましょう。留学生というと、通訳や貿易事務といったイメージを持ってしまいがちですが、実際には販売や営業、設計業務などの分野でも活躍しています。留学生への求人については、外国人雇用サービスセンターやハローワークで受理をしています。また、「アジア人財資金構想」というアジアの優秀な留学生を招いて、ビジネスマナーを教えたり、日本語能力検定1級を取得させるなどして育成していこうという動きがあるようです。経済産業省の事業として、平成19年度より始まっており、今後注目が集まっていくでしょう。
関連blog記事
2007年12月24日「外国人労働者雇用の際の実務ポイントを教えてください」
https://roumu.com/archives/64772290.html
2007年12月17日「外国人労働者の採用で注意すべきことは何ですか?」
https://roumu.com/archives/64766619.html
参考リンク
法務省入国管理局「「研修生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針(平成19年改訂)」の策定について」
http://www.moj.go.jp/PRESS/071226-1.html
入国管理局「不正行為認定」
http://www.immi-moj.go.jp/seisaku/fusei.html
(財)国際研修協力機構「研修と技能実習の相違」
http://www.jitco.or.jp/contents/seido_soui.htm
中小企業庁「『アジア人財資金』構想」
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/g_book/gb091.html
東京外国人雇用サービスセンター「留学生等の日本企業への就職」
http://www.tfemploy.go.jp/jp/stud/stud_6.html
(福間みゆき)
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