ポイント制退職金制度とはどのような制度なのですか?

 先日、地元の経営者団体の役職に就任し、従来以上に忙しくなった服部社長。最近は他の経営者から相談を受けることが多くなっていた。


服部社長:
 大熊さん、こんにちは。最近はなかなか打ち合わせにも参加できず、申し訳なかったです。
大熊社労士:
 いえいえ、宮田部長からも最近お忙しくされていると聞いておりますので。それにしても経営者団体の方のお仕事も大変なようですね。
服部社長服部社長:
 そうですね。私も若い頃からこの会の先輩経営者にはいろいろ助けられましたので、いまは恩返しだと思っていますよ。さて、いまの話にも関係するのですが、最近、この団体に加入している若手経営者から結構相談を受けることが多くなってきたのですが、先日、退職金制度に関する質問を受けました。当社では数年前に大熊さんに制度改定をお願いしましたが、世間にはまだまだ手付かずという会社が多いようですね。
大熊社労士:
 そうですね。御社の場合は適格退職年金の廃止問題もありましたので、退職金制度の見直しが進みましたが、多くの中小企業ではまだまだ昔の制度が、十分な検証がされないままに放置されているというのが現状ではないかと思います。
服部社長:
 やはりそうなんですね。まあ確かに普段、会社を経営していて退職金を意識することはあまりないからなぁ。
大熊社労士:
 そうですね。それだけに退職金は経営上、大きなリスクになることがある訳です。さて、その会社では退職金についてどのような話になっているのですか?
服部社長:
 はい、現在は勤続年数別の支給額が退職金規程で定められているようなのです。
大熊社労士:
 なるほど、定額制ですか。例えば勤続30年で500万円といった感じなのですね?
服部社長:
 そのようです。それこそ30年以上前からその制度を運用してきたようなのですが、在職中の貢献度がまったく退職金に反映されないのは問題だと考えているようです。そこで退職金に在職中の貢献度を適切に反映させることができる仕組みを考えたいという相談でした。
大熊社労士大熊社労士:
 なるほど。近年は今回のご相談のように退職金にも在職中の貢献度を仕組みとして反映させたいと考える企業が一般的になっています。具体的な制度としてはいくつか候補がありますが、貢献度反映型の退職金制度の代表選手といえばやはりポイント制退職金制度ではないでしょうか。
服部社長:
 ポイント制ですか。
大熊社労士:
 はい。ポイント制退職金制度は専門的にいえば、確定拠出型/貢献度反映型の退職金制度というものになります。確定拠出型というのは退職時に実際に支給する金額を退職金規程等で約束する制度のことを言いますが、それでも分かりにくいと思いますので簡単な例を出しましょう。一般社員と管理職は通常、貢献度が違いますよね?
服部社長:
 そうですね。当然、管理職の方が貢献度が大きいですね。
大熊社労士:
 はい。そこでポイント制退職金制度では、例えば一般社員については在職1年当たり10万円、管理職については同じく在職1年当たり20万円の退職金を支給するといったルールを定めるのです。つまり、勤続40年の場合、一般社員で40年の場合の退職金は10万円×40年=400万円。これに対し、一般社員として10年勤務した後、残りの30年は管理職であった場合には、10年×10万円+30年×20万円=700万円となります。
服部社長:
 つまり、早く管理職に昇進し、会社に大きな貢献を残してくれた社員については毎年の付与金額が大きくなるので、結果的に退職金が増えるということですね。
大熊社労士:
 その通りです。実際には社内にある等級制度に基づき、以下のようなポイントを付与し、それを累積させ、最終的にその累積ポイントの合計にポイント単価を乗じて、退職金を計算することになります。よってポイント制と呼ばれるのです。
 J1:10ポイント J2:15ポイント
 S1:20ポイント S2:30ポイント
 M1:40ポイント M2:50ポイント
服部社長:
 なるほど。非常に分かりやすい制度ですね。
大熊社労士:
 そうですね。この制度は職能資格制度などの等級制度と非常に相性が良いために、多くの企業で導入が行われています。もっとも貢献度反映型の退職金制度はポイント制だけではありません。来週は、その他の貢献度反映型の退職金制度について解説したいと思います。
服部社長:
 分かりました。よろしくお願いします。


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to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス 
こんにちは、大熊です。今回はポイント制退職金制度について取り上げました。近年の退職金制度改定においては、このポイント制がもっとも基本の選択肢となっています。今回はポイント制の原型である等級ポイントのみで構築する仕組みをご紹介しましたが、実際には勤続年数に対応する勤続ポイントなどを設定する例も多く見られます。企業業績の低迷と社員に高齢化、そして運用環境の悪化により、退職金については今後、企業経営上の大きなリスクになることは不可避な状態にあります。まずは自社の退職金の現状を把握し、早い段階で制度改定や資金手当などの具体的対策を打っておきたいものです。


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2011年6月6日「退職金規程では、支払時期や懲戒解雇時の取扱いなども明確に規定する必要があります」
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2011年5月30日「退職金規程では、その適用範囲と勤続年数の計算方法を明確に規定しましょう」
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2011年5月23日「退職金は企業にとって中長期的なリスクであると認識する必要があります」
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2009年11月2日「退職金は請求後7日以内に支給しなければならないのですか?」
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参考リンク
大津章敬著「日本一わかりやすい退職金・適年制度改革実践マニュアル」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4539720732/roumucom-22
大津章敬著「中小企業の退職金・適年制度改革実践マニュアル」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4539719599/roumucom-22

(大津章敬)

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