副業兼業を解禁した先行企業はどのようなルールにしているのですか?
この週末は非常に暖かく、春の訪れを感じている大熊であった。
大熊社労士
おはようございます!
服部社長
大熊さん、おはようございます。今朝も暖かいですな。また週の半ばには寒くなるようですが、これを何度か繰り返すと、本当の春がやってきますね。
大熊社労士
そうですね。新型コロナの感染も少し落ち着いてきましたし、徐々に元の生活に戻っていって欲しいものですね。
福島さん
本当にそうあって欲しいと思います。大熊先生、最近新聞を見てると大手企業で副業兼業を解禁するという記事を頻繁に目にするのですが、実際にそういった動きは強いのでしょうか?
大熊社労士
そうですね。感覚としては上場企業の一定数は今年の4月を中心に、副業兼業の解禁を進めるような動きが強いようです。私の顧問先でも準備中のところがいくつもありますから。
福島さん
やはり、そうなのですね。当社でもそういったニュースを見た社員から、副業をしてもよいのかという問い合わせが増えていて、どのように対応すればよいのか悩んでいます。
大熊社労士
確かにそうでしょうね。新型コロナの自粛生活やテレワークの影響で、副業に関する関心が非常に高まっていますからね。
宮田部長
先行的な取り組みを行っている企業ではどのような基準で副業を認めているのでしょうか?私のイメージだと、会社に来る前に新聞配達をしたり、夕方からコンビニでバイトしたりといった感じかなと思うのですが。
大熊社労士
確かにそんなイメージがありますよね。でも、以下の内容だと副業先と労働契約を締結することになるのでしょう。となると、労働基準法38条の労働時間の通算ルールの問題が出てきます。
福島さん
「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」というものでしたね。
大熊社労士
さすがですね。その通りです。企業の労務管理を考えるとこの通算ルールは大きなネックとなっています、よって、先行企業の多くが取っている対策としては、労働契約での副業は認めず、個人事業主としての副業に限り、許可するというものです。
服部社長
なるほど、コンビニのバイトのようなものは認めないということですね。となると、企業のコンサルタント的な仕事だとか、高度な専門性を必要とするようなものか、逆にUber Eatsのようなものになるのでしょうか?
大熊社労士
そうですね。企業としては、まだ試行錯誤段階ですが、単なる賃金の獲得ではなく、自身の成長や人脈の開拓など、本業への好影響が見込まれるようなものに限定して解禁しているようなケースも見られます。その他、以下のような条件を設け、許可制にすることが通常です。
- 本業の労務提供における支障がないこと
- 競業による企業の利益を毀損する可能性がないこと
- 秘密漏洩の恐れがないこと
- 企業の信用を毀損するような内容でないこと
福島さん
なるほど。当社の社員だと誰がそういった仕事ができるのかな?
大熊社労士
宮田部長が週休3日になって、週1日をどこかの中小企業の人事アドバイザーとして働くとか、どうですか?
服部社長
私はそれでもいいと思うけどな。ねぇ、福島さん(笑)
福島さん
はい、宮田部長ならばっちりですよね、社長(笑)
大熊社労士
それでは、最低限のルールを就業規則に定めて、合意書のひな型も作りましょうか。
宮田部長
ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいよ!
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回は副業兼業の流れと、先行企業の取り扱いについて簡単にまとめてみました。新聞紙上では、みずほ銀行のようなメガバンクからIHIのような重厚長大企業まで、副業を解禁というニュースがあふれています。労働基準法における労働時間通算ルールについては撤廃という方針も聞かれていましたが、結果的には従来通り存続し、管理モデルなどの部分修正にとどまることになりました。これにより、労働契約による副業の普及は少しスローダウンすることになると思われますが、従業員からの問い合わせは当面増える一方かと思いますので、会社としてのスタンスを検討しておくとよいでしょう。
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(大津章敬)