新型コロナの影響で自転車通勤を希望する社員が増えています

 徐々に暖かい日が増え、春の訪れを感じている大熊であった。


大熊社労士
 おはようございます!
服部社長服部社長
 大熊さん、おはようございます。早いものでもう3月ですね。首都圏を除いて、新型コロナの緊急事態宣言も解除されましたし、このままいい春になってくれるといいですね。
大熊社労士
 本当にそうですね。感染者数の減少とこの陽気でまた国民の緊張感がなくなって、再拡大とならないように願いたいものです。宮田部長も、今年こそは花見で宴会!とか企画したらダメですよ。
宮田部長
 …。どうして分かるんですか?(笑) さてさて、今日はコロナも少し関係したご相談がありまして。
大熊社労士
 はい、どのようなことでしょうか?
宮田部長宮田部長
 以前から通勤電車での感染などを懸念して、自転車通勤を希望する社員が増えていたのですが、これまであまりルールを明確にしてこなかったので、いろいろと問題が出ていまして。今後、陽気がよくなると、更に希望者が増えるような予感もしているので、そろそろ最低限のルールを決めたいと思っています。
大熊社労士
 なるほど。このご相談は最近増えていますよ。それでどのような問題が起きているのですか?
福島照美福島さん
 例えばなんですが、ほぼ毎日、自転車通勤をしている社員が、公共交通機関の定期代相当の通勤手当を受給しているのはおかしいといった意見が出たり、毎日、30kmくらい自転車通勤をする社員がいて、事故のリスクが心配といったことが起こっています。
大熊社労士
 そうですか。いずれもありそうな話ですね。まず通勤手当の件は、結構悩ましいです。というのも、完全に自転車通勤であればよいのですが、多くの場合、雨の日や雪の日は公共交通機関を利用し、天気の良いときだけ自転車という方が多いので、事前に読めないんですよね。
福島さん
 そ~なんですっ!!かといって通常の交通費実費×公共交通機関利用日数で計算すると、定期代よりも高くなってしまう場合があり、不合理なんですよね。本当に困っています。
大熊社労士大熊社労士
 例えば、いまのお話しのように計算することを原則とする一方で、定期券代を上限とするといったルールは考えられますよね。ただ、管理が結構煩雑になります。あと最近は駅の駐輪スペースも有料のことが増えているので、その利用料をどうするかなど、論点はいろいろあります。もっとも、通勤にかかる実費を全額会社が負担しなければならないということでもありませんので、ここは労使でしっかり議論をして、ルールを決めていくのがよいでしょう。
福島さん
 そうですね。ありがとうございます。あと、長距離の自転車通勤についてはどうすればよいですか?
大熊社労士
 こちらですが、結論としては規制をした方がよいと思います。理由は2点あって、まずはいうまでもありませんが事故のリスクが高いことです。それも自転車通勤は重大な事故に繋がることが多いので、必要最小限にしておきたいところです。そしてもう一つの理由が、事故発生時の労災保険の問題です。福島さん、ここで質問です。通勤途上の事故が通勤災害として認められるためのポイントはどのようなことだったでしょうか?
福島さん
 はい、え~っと、「合理的な経路及び方法」による通勤であることではなかったでしょうか?
大熊社労士
 さすがですね。そのとおりです。通達(平成18年3月31日 基発0331042号)によれば、この「合理的な経路及び方法」とは「住居と就業の場所との間を往復する場合に、一般に労働者が用いると認められる経路及び手段等」のことを指しています。
福島さん
 あ~、分かりましたっ!長距離の自転車通勤は、この合理的な経路及び方法という点で疑義が出やすいということですね?
大熊社労士
 そのとおりです。別の企業で先日あった事例ですが、その方は自宅から会社まで電車の線路に沿って、毎日15kmを1時間近くかけて自転車通勤していたのです。これが合理的な通勤の方法と言えるかは怪しいですよね。普通に考えれば電車に乗るべきであって、自転車通勤は運動不足解消による健康増進が主目的であると言われても仕方ないでしょう。となると、いざ事故が起こった際に、通勤災害と認められない可能性が残るということになります。
宮田部長
 なるほど、確かにそうですね。それにそもそも朝からそんなに運動したら、仕事する前に疲れちゃいますよね。
大熊社労士
 確かに(笑)。もっとも自転車通勤が悪いということではありませんので、様々な課題を踏まえてルール化していっていただくのがよいということになります。
福島さん
 わかりました!また社内で案を作りますので、チェックをお願いします!

>>>to be continued

大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 こんにちは、大熊です。今回は最近増加している自転車通勤の問題について取り上げてみました。自転車通勤の労災適用における「合理的な経路」についても問題が起きがちです。というのも、自転車通勤は経路選択の自由度が高いため、通勤途上で寄り道をし、合理的な経路を外れる頻度が高いためです。帰りにスポーツジムに寄って帰ろうといったものが典型ですが、そうした場合には経路の逸脱・中断の問題が発生します。よって自転車通勤者には、通勤災害に関する基本的なルールを説明し、合理的な経路を外れた場合のリスクについて理解させておくことが重要です。


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(大津章敬)