新型コロナワクチン接種の休暇等取扱の考え方を教えてください
今年の梅雨は本当に雨が少ないと感じている大熊であった。
大熊社労士
おはようございます!
服部社長
おはようございます。しかし、今日は暑いですな。梅雨時季だというのにあまり雨が降らず、水不足が心配になるレベルですよ。
大熊社労士
本当にそうですね。もう暑いですし、雨も降らないのでビアガーデンでも行きたい気分ですが、新型コロナのお陰でそれはもう少しお預けになりそうですね。
宮田部長
ビアガーデン!本当に行きたいですね。ジョッキの生ビールをかーっと飲んで、みんなで大騒ぎするなんて最高ですね。2年前はそれが当たり前だったんですよね。本当に時代が変わってしまいました。
大熊社労士
そうですね。新型コロナですが、ワクチンの接種がかなり進んできましたから、今後、また元の生活に戻ることが期待されますね。
服部社長
そうなんですよ。そのワクチンの件が今日、ご相談したい内容だったのです。それでは説明は福島さんからお願いしてもいいかな。
福島さん
はい。新型コロナのワクチンですが、6月21日にも職域での接種が始まるという話も出ていますが、当社の社員でも7月くらいには接種を行う社員が出て来るのではないかと予想しています。一方で副反応で仕事をお休みするような例も多くなりそうという話も聞いているので、少なくともその接種時の勤怠等のルールは早めに決めておきたいと思っています。この点、他社の状況はいかがですか?
大熊社労士
はい。やはり御社同様、検討を開始されたところが多いのではないかと思います。まずこのテーマに関する基本的な事項をお伝えしようと思いますが、やはり副反応による仕事への影響が現実的なポイントとなりそうです。厚生労働省の検討部会の中で示された「新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)「健康観察日誌集計の中間報告(4)」によると、接種後の37.5度以上の発熱については、1回目接種後は3.3%とインフルエンザワクチンと大きな差はありませんが、2回目接種後については38.0%と高い値を示しています。なお、発熱に関して年代別に見ると、20代がもっとも高い値となっており、年代が上がるにつれ減少する傾向が見られます。
宮田部長
やはり報道されているように結構な発熱になるのですね。
大熊社労士
そのようです。更に頭痛についても見てみると、1回目接種後は21.2%であるのに対し、2回目接種後は53.6%。倦怠感も1回目接種後が23.2%であるのに対し、2回目接種後は69.4%となるなど、いずれも2回目接種後に就業が難しい副反応が高確率で発生しています。このような状態ですので、少なくとも(1)翌日に重要な仕事があるような日の接種は避ける、(2)同じ部署の社員が同日に接種し、お休みが重複することによる業務の混乱を回避するため、事前に部門単位などで接種スケジュールの調整を行うといった対応が求められると考えています。
服部社長
確かに。お客様や同僚に迷惑をかけないためにも、このあたりのスケジューリングは重要になりそうですね。それで休む場合の対応はどのように考えればよいですか?特別休暇を付与する企業もあるとニュースでは見ましたが。
大熊社労士
そうですね。今回のワクチン接種は会社命令によって行うことはできず、あくまでも個人の判断による接種になります。よって、その接種のための時間や副反応によるお休みの日を労働時間(特別休暇)にする必要は原則的にはありません。しかし、感染拡大防止を考えれば、積極的に接種して欲しいと考える企業が多いでしょうから、接種しやすい環境を用意してあげることは必要かと思います。それでは接種日の対応と、副反応によるお休みの2つに分けて考えてみましょうか。
福島さん
接種日ですが、終日かかるというものではありませんよね?
大熊社労士
そうですね。地域の医療機関で接種する場合ですと、午前診と午後診の間に接種するようなことが多いでしょうし、大規模接種会場であれば、その時間帯を多くの選択肢の中から選択することができるようになると思います。このように考えると、終日のお休みにする必要ななく、例えば午後からの接種であれば、午後半休や場合によっては時間単位年休などでもよいのではないでしょうか。その際、従業員の接種をより促進したいということであれば、接種に必要な時間は勤務したとして取り扱うという対応も考えられると思います。
福島さん
そうですね。より影響が大きいのが副反応によるお休みの取り扱いですね。これは接種の翌日が特に副反応が強く出るのでしたよね?
大熊社労士
そのとおりです。特に2回目の接種で、若い人であればあるほど強い副反応が出るようですので、20代・30代では半分くらいの社員がお休みになるという可能性を考えておいた方がよいと思っています。ワクチン休暇の先行事例を見ていると、翌日1日に限り、特別休暇を設定しているというケースが見られますが、原則としては年次有給休暇の取得でよいとは思います。
服部社長
そうですね。全体で言えば、半数以上の社員は勤務できるという状態であるとすれば、そこに特別休暇を設定し、職場の稼働を必要以上に落とすのも少し躊躇してしまいますね。同時に接種する社員も不安だろうから、最初から翌日は特別休暇で休むように指示してやった方がいいような気もします。う~ん、これは迷うなぁ。
大熊社労士
確かに高熱が出るなどと聞くだけで接種を躊躇ってしまうと思うので、翌日はお休みにするので、できるだけ接種するようにとメッセージを出すこともあり得ますね。
福島さん
もし特別休暇を設定する場合には、接種したことを証明するような資料の提出も求める必要がありますね。
服部社長
ごまかすような社員はいないと思うが、手続としては必要だろうね。それではそのあたりも含め、宮田部長と福島さんで検討し、案を作成してください。
宮田部長
わかりました!
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回は新型コロナウイルス感染症にかかるワクチン接種の取り扱いについて取り上げました。当初の想定よりも接種スケジュールが前倒しになるように状況になっており、このあたりの環境整備も重要となります。世間の動向なども見ながら早めに準備を進めましょう。またワクチン接種が進むと、接種しない社員に対する差別的な言動などが行われる可能性があり得ます。そのあたりのハラスメント対策も同時に講じておきましょう。
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2021年5月21日「厚労省が示すワクチン接種に関する休暇や労働時間の取扱い」
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2021年4月27日「新型コロナワクチン接種後に高確率で発生する発熱・頭痛などの副反応への職場としての対応」
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参考リンク
厚生労働省「第56回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第2回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)資料(令和3年4月23日)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18196.html
(大津章敬)