育児休業の制度について研修の実施や相談窓口の設置が必要になるのですか?

 今回の育児・介護休業法の改正の目的は、育児休業を取得しやすくすることが一つになっている。そのために、雇用環境整備や個別の周知・意向確認の措置が義務付けられることから、大熊は服部印刷でこの説明をすることにした。


福島照美福島さん
 大熊先生、今回の育児・介護休業法では男性が育児休業を取得できるようにすることが目的になっているかと思うのですが、それってとっても難しいことのように思うのですよね。
大熊社労士
 珍しいですね、福島さんがそのような発言をされるとは。
福島さん
 あ、唐突すぎましたよね。実務をやっていて感じるのは、男性の従業員は奥様が妊娠したことを前もって職場に伝えないことが多いように思うのです。私が知るのも、だいたい、健康保険証の発行手続きをするときか、配偶者の出産休暇を取るときなのです。

宮田部長宮田部長
 確かに福島さんから「〇〇さんの奥さんが赤ちゃん産みましたよ」と、報告を受けて「え~、そうだったんだ、おめでたいね」という反応をいつもしているように思うよ。
福島さん
 そうですよ~!もちろん、直属の上司には話しているのかもしれませんが、総務にまで話が回ってきていません。あ、そうだ!宮田部長がもっといろいろな情報をかき集めてきてくださいよ!(笑)
服部社長
 私なんて、出産祝い金の決裁確認が回ってきて、知るんだから、残念なものだよ(笑)。まぁ、それは半分冗談なのですが、大熊さん、いずれにしても男性の育児休業の取得を促進するのであれば、この状況ではダメで、もっと対策を打たないといけないですよね。
大熊社労士
 まさにその通りです。今回の改正育児・介護休業法では、その部分が義務化されました。具体的には、「育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置」が義務付けられました。
宮田部長
 漢字が多すぎて思考停止です。難しい。
大熊社労士
 いやいや、頑張りましょうね。まだ具体的になっていない部分もありますが、説明をしましょう。まずは雇用環境整備の部分ですが、研修をしたり、相談窓口を設置したりすることが義務付けられます。
福島さん
 「育児休業とはこういう制度で、こういう人が取れますよ」ということを説明する研修をしたり、「育児休業を取りたい人はこちらに相談してくださいね」と窓口を作ったりするということですね。
大熊社労士
 内容はまだ具体的にはなっていないのですが、そのような形になるのでしょう。また、育児休業を利用した事例を、従業員に提供することも検討されているようです。
宮田部長
 研修をして、相談窓口を設置して、事例の情報提供をして、やることがたくさんすぎますよぉ!
大熊社労士
 あ、すみません。説明不足ですね。もちろん、全部実施できるといいのですが、負担も大きいということで複数の選択肢の中から選択する形になります。今決まっているのは研修か、相談窓口の設置ですが、今後事例の情報提供も出てくると思われます。
服部社長服部社長
 まぁ、いずれにしても制度を周知して、男性も女性も早めに取得するかの意向を申し出てもらうことが重要ですね。長い職業生活、一時的に働けなくなることは育児だけじゃない。人が欠けたときにもカバーしあえる組織でなければならない。
大熊社労士
 そうですね。突発的な事象もいろいろあると思いますが、自分が妊娠した、妻が妊娠した、ということは、あらかじめわかることですから、なるべく早めに報告を受けて、会社として対応を進めたいですよね。
福島さん
 そう考えると、やはりうちの従業員も上司には早めに報告しているかもしれません。
大熊社労士
 なるほど。そこから総務への報告というルートも整備しておきたいものですね。ちょうど、今話題になっているところが、今回の改正で義務となる個別の周知・意向確認です。会社全体への制度の周知は、就業規則(育児・介護休業規程等)で行い、場合によっては研修を実施することで対応することになるのですが、従業員や従業員の配偶者が妊娠または出産したという申し出を受けたときには、従業員に育児休業の制度等を個別に周知したり、育児休業を取得する意向があるかを確認することになります。
服部社長
 なるほど。せっかくだから育児休業を取っみたらどうか?と働きかけるということで、取得する人を増やすということですね。
大熊社労士
 まさにその通りです。当然、「育児休業を取得する気はないよな?」という働きかけはNGですよ!
福島さん
 それにしても、この個別周知や意向確認もたいへんですね。現場の上司が制度を周知することはハードルが高いように感じます。意向確認も「仕事があっても、せめて生まれる日に駆け付けられるようにしないとな」と、育児休業は取らない前提に立ちそうです。
大熊社労士大熊社労士
 確かに上司がしっかりと制度や意義を学ぶ必要はありそうですね。ちなみに個別周知は、面談のほか、書面で制度の情報提供をすることも検討されていますので、今後、どのような方法で行うかは検討の余地がありそうです。
服部社長
 大熊さん、これはいつから始まる制度ですか?
大熊社労士
 はい、2022年4月1日からになります。
福島さん
 研修の実施となると講師の手配や会場、仕事の都合をつけてもらうということで、かなり負担が大きいですが、従業員のみなさんに制度を知ってもらうためには研修が有効に感じる・・・なかなか難しいですね。いずれにしてもそこに向けて少しずつ整備していく必要がありますね。頑張ります!

>>>to be continued
大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 こんにちは、大熊です。雇用環境の整備、個別周知・意向確認は運用面での検討整備、実施が必要なことになります。施行までに対応が整うように今から内容の法改正の内容を確認しておきましょう。


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2021年6月21日「契約社員も育児休業や介護休業が取りやすくなります」
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2021年6月14日「男性版産休(出生時育児休業)とはどういうものですか?」
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参考リンク
厚生労働省「育児・介護休業法について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
厚生労働省「第204回国会(令和3年常会)提出法律案」
https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/204.html
厚生労働省「第37回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16385.html
(宮武貴美)