[提出漏れの多い届出]子の養育のために標準報酬月額が下がった場合
先日「労働者が住所変更を行った場合の社会保険の届出」という記事を掲載したところ、他にも提出漏れが多い届出について教えてもらいたいとの問い合わせをいただきました。そこで本日は、同様に提出漏れが多く見られる「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」について取り上げてみましょう。この制度については、以前、当ブログでもその概要(3歳に満たない子を養育する社会保険被保険者への特例)について取り上げましたが、今回は具体的な届出について解説します。
□対象者
3歳未満の子を養育する期間の各月の標準報酬月額が、子の養育を開始した月の前月の標準報酬月額(以下「従前標準報酬月額」という)を下回る被保険者
□申出によるメリット
この申し出を行うことによって、厚生年金保険料については、実際の標準報酬月額に従い取り扱われますが、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金および障害手当金の額について、従前の標準報酬月額をもとに算定されることになります。これにより実際の標準報酬月額に基づいて計算した場合より、これらの給付額が高くなります。ただし、この取り扱いは厚生年金保険についてのみですので、傷病手当金等の健康保険に関する給付は、実際の標準報酬月額で算定されます。
□申出のタイミング
3歳未満の子を養育し始めたときとされています。原則として、子が生まれたときとなります。
この届出については被保険者の申し出に基づき事業主が手続を行うこととなっています。社会保険料の免除などとは異なり、手続を行うことで直接的に事業主がメリットを享受できるものではありません。しかし、被保険者の将来的なメリットを考えると周知・徹底をし、提出漏れを防ぐ必要があるでしょう。なお、一般的に育児関連の届出については、対象者が育児休業取得者というイメージがありますが、この届出については、育児休業を取得していない被保険者でも対象となっています。また、夫婦双方が対象者に該当すれば双方共に適用されるため、注意が必要です。
□参考リンク
育児休業中の社会保険料等に関するQ&A~山形社会保険事務局
http://www.sia.go.jp/~yamagata/kenpokounen/ikukyuhokenryouqa.html
(宮武貴美)
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