労働政策審議会中間報告に見るホワイトカラーエグゼンプション制度の検討ポイントその1(対象労働者)
本日は昨日に引き続き、労働政策審議会の「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」の中から、注目のホワイトカラーエグゼンプション制度(自律的労働にふさわしい制度の創設)に関する部分について、今日と明日の2日に亘って、そのポイントをご紹介します。まず本日は対象労働者の範囲について取り上げてみましょう。
(基本的な考え方)
産業構造が変化し就業形態・就業意識の多様化が進む中、高付加価値の仕事を通じたより一層の自己実現や能力発揮を望み、緩やかな管理の下で自律的な働き方をすることがふさわしい仕事に就く者について、一層の能力発揮をできるようにする観点から、現行の労働時間制度の見直しを行う。
[対象労働者の要件等]
自律的な働き方をすることがふさわしい仕事に就く者は、次のような者とする。
1)使用者から具体的な労働時間の配分の指示を受けることがない者であること、及び業務量の適正化の観点から、使用者から業務の追加の指示があった場合は既存の業務との調整ができる者であること(例えば、使用者からの追加の業務指示について一定範囲で拒絶できる者であること、労使で業務量を計画的に調整する仕組みの対象となる者であること)。
2)健康確保の観点から、1年間を通じ週休2日相当の休日があること、一定日数以上の連続する特別休暇があることなど、通常の労働者に比し相当程度の休日が確保されている者であること。また、健康をチェックし、問題があった場合には対処することができる仕組み(例えば、労働者の申出があればいつでも、又は定期的に医師による面接指導を行うこと)が適用される者であること。
3)業務量の適正化及び健康確保を確実なものとするため、出勤日又は休日が1年間を通じあらかじめ確定し、出勤日における出退勤の確認が確実に実施されている者であること。
4)1年間に支払われる賃金の額が、自立的に働き方を決定できると評価されるに足る一定水準以上の額である者であること。
上記の事項について、対象労働者と使用者が個別の労働契約で書面により合意していることとする。
この制度が自律的な働き方にふさわしい制度であることを担保する観点から、物の製造の業務に従事する者等をこの制度の対象とはならないものに指定することとする。
[導入要件等]
この制度を事業場に導入するかどうかについては、当該事業場の実情に応じ、当該事業場の労使の実質的な協議に基づく合意により決定することとする。
事業場における対象労働者の範囲については、法に定める対象労働者の要件を満たす範囲内において、当該事業場の労使の実質的な協議に基づく合意により定めることとする。この場合、事業場における対象労働者の範囲については、当該事業場の全労働者の一定割合以内とすることについては慎重に検討する。
この制度のより弾力的な運用を可能とする観点から、年収が特に高い労働者については、労使の実質的な協議を経ずに対象労働者の範囲に含めることができるようにすることについて検討する。
対象労働者は、いつでも通常労働時間管理に戻ることができることとする。
今回の労働政策審議会の議論の中でも、もっとも注目を浴びているホワイトカラーエグゼンプション制度ですが、この中間報告では、年収要件についてその具体的な金額例を示すには至りませんでした。一方で、物の製造の業務に従事するものの適用除外や、対象労働者数を全従業員の一定割合に制限するといった、より具体的な要件の示されており、今後の審議会での検討が待たれるところです。明日はこの制度を導入した際の効果やそれによる労務管理への影響についてお話したいと思います。
参考リンク
労働政策審議会「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/dl/s0613-5a2.pdf
関連blog記事
2006年06月16日:労働政策審議会「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」公表
https://roumu.com
/archives/50604513.html
2006年04月24日「労働政策審議会労働条件分科会におけるホワイトカラーエグゼンプション制度検討の視点」
https://roumu.com
/archives/50521098.html
(大津章敬)
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