労働政策審議会中間報告に見るホワイトカラーエグゼンプション制度の検討ポイントその2(効果と影響)

 本日は昨日に引き続き、労働政策審議会の「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」の中から、注目のホワイトカラーエグゼンプション制度(自律的労働にふさわしい制度の創設)に関する部分について、そのポイントをご紹介します。本日はホワイトカラーエグゼンプション制度導入時の効果とその労務管理への影響について取り上げてみましょう。
[効果]
労働基準法第35条(法定休日)及び第39条(年次有給休暇)は適用し、その他の労働時間、休憩及び休日の労働及び割増賃金に関する規定並びに深夜業の割増賃金に関する規定を適用しない
[適正な運用を確保するための措置等]
就業規則において、対象労働者に適用される賃金制度が他の労働者と明確に区分されており、賃金台帳にも個別に明示することとする。
適正な運用を確保するため、地祇のような措置等を講ずることを検討する。
1)苦情処理制度を設けることを義務付けること。
2)重大な違背があった場合は、労働者の年収に一定の割合を乗じた補償金を対象労働者に支払うものとすること。
3)要件違背の場合、行政官庁は、改善命令を発することができること。改善命令に違背した場合は、当該対象労働者を通常の労働時間管理に戻す命令や制度(全体)の廃止命令を発出することができるものとすること。
要件違背の場合に、労働基準法第32条違反等と整理するとともに、別途この制度の手続き違反著して厳正な履行の確保を図る。


 このように当該制度を導入した効果としては、現行の管理監督者同様に労働時間・休憩・休日の規定を適用しないということになります。また従来の管理監督者の場合は、深夜業の関係規定は適用が排除されておりませんでしたが、今回の法改正で管理監督者・ホワイトカラーエグゼンプションの双方について、深夜業の適用除外がなされる方向とされています。


 この制度が導入されることによる影響ですが、この中間報告にも項目名が記載されているとおり、「管理監督者の範囲等の見直し」、「現行裁量労働制の見直し」など、労働時間制度に関し、これまで曖昧さが残っていた項目の適用が厳格化されることが予想されます。特に管理監督者の範囲については、「課長以上は全員管理職」とまでは言わないにしても、これまで本来の法の趣旨から見れば、かなりの拡大解釈がされており、この解釈の厳格化は労働時間管理実務に対して、相当大きなインパクトを与えることになるでしょう。管理監督者の範囲の見直しと適正な労働時間制度の採用、管理監督者の役割や職責の明確化、時間ではなく(プロセスも含めた)成果を中心とした人事処遇制度の確立など、法改正に伴って見直さなければならない点は非常に多く出てくることでしょう。



参照条文
労働基準法第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1.別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3.監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
参考リンク
労働政策審議会「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/dl/s0613-5a2.pdf
関連blog記事
2006年06月16日:労働政策審議会「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」公表
https://roumu.com
/archives/50604513.html

2006年04月24日「労働政策審議会労働条件分科会におけるホワイトカラーエグゼンプション制度検討の視点」
https://roumu.com
/archives/50521098.html


(大津章敬)


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